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【特別企画】フルCHORDシステムで試聴

CHORD「SPM1400MkII」を聴く ー 音楽の躍動を余さず再現する最高峰パワーアンプ

公開日 2018/03/20 08:00 角田郁雄
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CHORDのスイッチング電源を考察する

ここでスイッチング電源のそもそもの基本動作を説明しておこう。まず、家庭に分配される商用電源の交流(AC)100Vは、ダイオードとコンデンサーを使って直流(DC)化される。この直流を、高速でオン/オフを繰り返すスイッチング素子を使用して増幅する。その後、高域ノイズを排除するためにコイルとコンデンサー(ローパスフィルターのようなもの)を経由して、直流出力される仕組みである。

CHORDでは、このように動作するスイッチング電源をオーディオグレードへと進化させたものを、パワーアンプのみならず、プリアンプやDACを含めたすべてのモデルに搭載している。

SPM1400MkIIのトップパネルを外して内部を見ると、フロント部に大規模のスイッチング電源が確認できる。回路構成はまったくの非公開であるが、出力段のみならず入力段、ドライバー段、LED、保護回路など5系統以上の電源をこのスイッチング電源で一括して制御していると推察される。これは以前にジョン・フランクス氏から聞いた話であるが、電源のスイッチング素子にはかなり高い周波数を使用して、超高速スイッチングさせているそうだ。

SPM1400MkIIの筐体内部。写真向かって上側の黒いパネルの下に、26個もの大容量コンデンサーが配置されている

出力段をドライブする電源出力には2700μF/160Vの高音質コンデンサーを26個も搭載し、ハイスピードな電源を構成する(上写真の筐体内部、黒色カバーの下にコンデンサーが配置されている)。マッシブかつ高品位な電源部が筐体内の一角を占めているのだ。

このオーディオグレードのスイッチング電源は、出力素子(MOS-FET)の要求する電力を高効率で瞬時に供給でき、レンジの広い大振幅の楽曲をも余裕を持って再現できる。重いトランスも必要としない。ひと昔のスイッチング電源とはまったく異なるものであり、もはやアナログ電源を超えているのではないかと思うほどである。この電源部の後部(やはり黒色のカバー下)には、入力段とドライバー段があると推察される。

CHORDのロゴが施された金属ケースに収められているのが、スイッチング電源となる

リアに配置された出力段には、CHORDのカスタムメイドによる金属モールドされたメタルキャン・タイプのMOS-FET(その昔、日立も製作していた)が、4パラレル・プッシュプル構成で使用されている。温度特性に優れ音がいいので、CHORDはメタルキャン・タイプを使い続けている。こだわりのMOS-FETなのである。アンプ構成はAB級で増幅ルートも短めにしているのだが、このサイズながら480W/8Ωを叩き出すというからまさに驚愕である。

なお、出力インピーダンス特性の公表値は0.04Ωなので、8Ω負荷ではダンピングファクターが200ということになる(8÷0.04という計算だ)。十分な特性であり現代の能率の低いスピーカーをも余裕をもってドライブできることだろう。

フルCHORDシステムでSPM1400MkIIを聴く

SPM1400MKIIに「BluMk2」と「DAVE」を組み合わせ、まずはイザベル・ファウストの最新アルバム、『J.S. バッハ:無伴奏ソナタ&パルティータ集』(HMM902256/57)のCDを再生した。なお、今回はプリアンプは使わずに、DAVEの音量調整機能を使った。

スピーカーシステムは、角田氏のリスニングルームのVivid Audio「GIYA G3」を組み合わせた

Blue Mk2はCDの44.1kHz/16bitを705.6kHz/24bitにアップスケールして再生するが、その音は実に高密度である。そしてSPM1400MkIIは、その高密度な音をさらに引き立て、ヴァイオリンから色濃い倍音を引き出し、弓使いをクローズアップする。繊細かつ柔らかみのあるチェンバロの響きも再現する。CHORDサウンドならではの広く、深い空間も現れた。

また、特に弱音から強音(またはその逆)へと移りゆく旋律では、自然音の階調をまのあたりにするような美しい響きを湛えている。音色はやや暖色寄りでナチュラリティが高く、室内楽であっても中低域に厚みがあり、音楽のボトムラインを引き立てている。楽器や声の倍音成分も豊富で、「A級アンプなのではないか」と一瞬思ったほどだ。A級領域の広い、A/B級アンプというイメージである。

次に、私のリファレンスでもあるヘルゲ・リエン・トリオの『スパイラル・サークル』(DIW627)から「Take Five」を再生した。

次ページ圧倒的な駆動力と音楽再現力を兼ね備えたパワーアンプ

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