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画質に対する真摯な姿勢を実感

【測定】「iPhone X」の有機ELディスプレイを検証。テレビ調整の基準に使える驚異のクオリティ

2018/01/17 鴻池賢三
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有機ELは、映像の表示面積が広くなるほど、全体的に輝度が低下する傾向にあることから、画面全体の面積に対して測定用パターンの面積を、100%、25%、18%の3種類で測定した。結果は以下の通りとなった。

1:100%(Full Fileld) 680.8cd/m2
2:25%(Window) 785.5cd/m2
3:18%(Window) 804.7cd/m2


100%(Full Fileld)は画面全体が白く発光する状態で、680.8cd/m2をマーク。iPhone 7の570.5cd/m2に対して約20%も明るく、基本性能として高輝度化していることが分かった。

さらに想定通りだったのは、測定用パターンの面積を小さくするほど、高輝度表示すること。スマホは画面が数インチと小さく、測定センサーの測定画角の都合もあり、今回は最小面積が18%で限界だったが、もっと小さくすればさらに高輝度が得られるかもしれない。

総じてピーク輝度は非常に高く、HDR収録映像で黒い背景に小さな点が光るような、例えば星空や夜景のような画柄では、超高コントラストが得られそうだ。ちなみに黒の輝度は、0.00cd/m2(測定限界以下)。実質ゼロで、コントラスト比は算出不能(無限大)だ。

【グレースケールトラッキング/ガンマ/色域】

測定に際し、輝度設定は、100%(Full Fileld)で100cd/m2を目標に整えて行った。

100%(Full Fileld)で100cd/m2を表示するには、スライドバーがキャプチャ画像で示す位置周辺だった(実測107.4cd/m2)

色温度はおおむね6,850K。HDTV基準のD65(6,508K)に比べるとやや高く、色としては青味を帯びていることになるが、iPhone7の約7,000Kに比べると基準のD65に近い。

キャリブレーションソフトウェア「CalMAN」で、クレースケールトラッキング(左上)、ガンマ(左下)、色域(中央上)を測定した結果

特筆すべきは、グレースケールが暗部から明部まで非常に安定していること。iPhone 7も高精度だったが、本機はさらにワンランク上の精度だ。

周辺の照明環境に応じて、画面の色温度を自動調整する「True Tone」機能が追加されたため、標準状態の色温度をD65に近づけたのかもしれない。ちなみに「True Tone」の振る舞いは完璧に分析できていないが、比較的青味の強いLEDデスクライト照明下で試したところ、色温度は7,000K付近まで上昇した。

ガンマは2.2の曲線(グラフ中、左下の黄色)を完璧にトレース。制作者の意図に忠実な明暗の表現が期待できる。色域はRec.709に準拠。RGBCMYの各ポイントは概ね基準に対し、人間の目では差が識別できないとされるΔ2以下に収まるなど、iPhone 7よりも好成績だった。厳密には、R(赤)とC(シアン)がΔ3だが、視聴用ディスプレイとして許容できる範囲だ。

【色再現性】

図中「CIE 1931 xy」の大きな三角形は人間が見る事のできる色の範囲で、内側の三角がRec.709の範囲を示している。その中で白い枠が測定のターゲット、色のついた丸印が実際の測定値をプロットしたものだ。

CalMANで中間色を含む約100ポイントを測定した結果

評価は中央のグラフ「DeltaE 2000」が指標になる。Δ1(緑色のライン)以下だと、人間の視覚で基準に対する色のズレが識別できない。Δ3(黄色のライン)は、違いが分かるものの許容範囲、Δ10(赤色)のラインを超えるとNGとされる。

色温度が6,850K程度と高めながら、白100%のΔ値は2.7と低い。iPhone 7の同7.55に比べると、「基準に収まった」と言っても過言ではないだろう。中間色はさらにΔ1〜Δ2程度に収まる好成績で、測定した約100点の平均「Ave deltaE」も1.3と低い。民生用テレビの精度を超え、マスターモニターに近い精度であることが確認できた。

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