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Auro-3Dをはじめ各イマーシブオーディオも聴き比べ

デノン「AVR-X4400H」レビュー。上位機譲りの音質を備えた、イマーシブオーディオに最適なAVアンプ

2017/12/21 岩井 喬
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各イマーシブオーディオを描き分けるアンプ性能の高さにも注目

次に『エクスペンダブルズ2』を選び、チャプター9の市街地での戦闘シーンにて確認を行った。通常のDTS-HD Master Sound 7.1ch音声ではセリフのハリ良く肉付きもナチュラルな描写だ。音像はどっしりとした安定傾向で、銃声もキレ良くまとめ、ジュークボックスから流れるBGMは程よく空間へ浮かぶ。基本的な密度重視傾向は『スカイ・クロラ』と同じだが、上方向への表現についてはやや狭く、実際のスピーカーの位置を感じさせる印象だ。

ここで再びAuro-3Dアップミックスに切り替えてみると、気になっていた音場の広さや音像の浮き上がり感が一気に解消される。ジュークボックスからのBGMも上方向へスムーズに展開し、銃声の切れ味や方向性もより鮮明だ。ショーウインドウのガラスが飛び散り手前に降ってくるカットでは粒の細かさに加え、立体的に物体が降ってくる様を的確に描き出してくれた。


AVR-X4400Hのリモコンから、サラウンドソースおよびアップミックスを切り替えているところ
ちなみに、ドルビーアトモス収録作品である『エクスペンダブルズ3』でも冒頭シーンを確認してみたが、SEやBGMの力強い押し出し感をクリアにまとめ、太く鮮度の高い音像として描き出す。上方向の情報が増えている分、ヘリの移動音や銃声の方向など、位置情報は明確だが、やや天井が低い印象である。こちらもAuro-3Dアップミックスを試してみると高さ方向が整理され、立体的で音離れの良い空間が出現。SEの細やかな表現やセリフと細やかなニュアンス、BGMのキレ味など、情報量の豊かさ、クリアさが際立っている。

最後にAuro-3D収録作品として、ウィーン・フィル『ニューイヤー・コンサート2017』を確認してみたが、弦楽器のほぐれの良さ、空間への浮き上がり感は非常に生々しい。解像度の高さを保ちつつ、その音像との距離感も自然に表現。旋律の朗らかさ、抑揚も伸び良く誇張のないナチュラルな傾向だ。空間の広さ、静寂感の表現も巧みで、後方から聞こえてくる咳払いの位置感や立体感にも驚かされた。

さらに「ラデツキー行進曲」の拍手の聴こえ方は圧巻で、全天シームレスに音が繋がり、粒立ち良く響くさまはリアルさに溢れている。まだまだAuro-3D収録作品は少ないものの、正確な位置感を掴める、立体的で極めて音離れの良いサラウンドは非常にクオリティが高く、一回体験すると病みつきになるだろう。



AVR-X4400Hは、Auro-3D採用機として最も廉価なモデルであるが、その土台となるプラットフォームは、デノンが長年築いてきたテクノロジーが結集した安定度の高いディスクリートアンプが支える、価格以上の満足度が得られるシステムとなっている。上位機譲りの機能性と実力をバランス良くまとめたハイC/P機として、Auro-3Dを含めたイマーシブオーディオの今を体感するには最適な1台といえるだろう。

また、Auro-3Dアップミックスを使った様々なソフトの再生では、見慣れた作品でもあっと驚く体験ができる点でもぜひともお薦めしたい楽しみ方である。Auro-3D収録作品の数が充実するまで、まだ少し時間はかかるだろうが、その間も十分保てるほど、Auro Maticアルゴリズムの完成度が高いことが実感できた視聴であった。

(岩井 喬)

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