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デザインシリーズの最新モデル

デノン「PMA-30」レビュー。BTL構成クラスDアンプで高い駆動力を誇る小型プリメイン

公開日 2017/10/03 11:19 鴻池賢三
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接続を同軸デジタルに切り替えると、音の表情が一変。埋もれていた音が溢れ出て空間を形成し、一音一音が活き活きと開放的に生まれ変わる。気になっていた低域の緩みも大きく改善した。本機はフルデジタルアンプを採用しており、デジタルドメインでの処理による音の整理、言い換えると曖昧さの排除に繋がり、出音の変化として現れやすいのかもしれない。

同じ状態で、ケイコ・リーのアルバム「Beautiful Love」から「Don’t Let Me Be Lonely Tonight」を再生。ボーカルとアコースティックギターのシンプルな構成でエネルギーも少ないが、その分、誤魔化しが効かない楽曲だ。残響音に注意すると、消え際までしっかり鳴らし切り、空間の表現力が秀逸。ほか、ボーカルのテクスチャを丁寧に拾い上げる肉厚な表現力も魅力的だ。総じて、エントリーモデルとは思えないS/Nの高さに驚かされた。

続いて、スピーカーをDALIの小型ブックシェルフ「SPEKTOR1」に交換。価格帯、システム全体のシルエット、パワーバランスなどの面から、釣り合いが取れた組み合わせに感じる。音質はどうだろうか?

「SPEKTOR1」(¥32,000/ペア・税抜)

スピーカーのサイズから、絶対的な低域の表現力には限界があるが、エンクロージャーの側面を利用して、量感を膨らませてくれる。振動による箱鳴りというよりは、楽器のように木の響きを巧く活用している感があり、素直でピュアさを失わないのは、流石DALIと思わせる妙味だ。

Tommy Flanaganのピアノは、タッチがクリアで繊細さをめでる余裕と楽しみがある。濁りとは無縁の透明感で、彼の玉が転がり弾むような軽快な音色が心地よい。早弾きでも音色に混濁がなく、ハーモニーを生演奏のように楽しめた。ミュートで音と空気が引き締まり、心動かされるクオリティーは本物。本機は、艶やかなDALIのサウンドを余す所なく引き出してくれる。

こちらもアナログ接続より、同軸デジタルは明らかにS/Nが高い。空気の存在感に耳を傾けるとその差は明らかで、好みと言うよりは、同軸デジタル接続の利用を前提とすべきだろう。アナログ接続の音質が劣るという訳ではなく、デジタル接続の音質が傑出しているのだ。

ケイコ・リーの同曲も、余韻による空間の広がりや、一音一音繊細な表現はそのままに、ギターの胴鳴りをエンクロージャーが上手く補って雰囲気たっぷりに聞かせてくれる。

本機のドライブ能力は「PL200」もそこそこ鳴らせるクラスを超えたパワーが魅力だが、小型スピーカーと言えども、相手を上手く選べば、本機らしさを味わえ、S/Nの高さ、ピュアな表現力を享受できる。



音質面ではサイズを超えたドライブ能力の高さと正確な表現力が確認できた。BTL駆動の良さが感じられるもので、低ジッターのデジタルオーディオインターフェイスとクアルコムDアンプを精密にドライブする「マスタークロックデザイン」が功を奏しているようだ。

リビングに映えるデザインと質感の高さも相まり、エントリーモデルとは思えない実力と品位。良質なダイヤモンドのように、小粒でもキラリと光る存在感が印象的な1台だ。

(鴻池賢三)

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