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銘機が進化

HDR対応+レーザー光源のフラグシップ画質を堪能。エプソン「EH-LS10500」レビュー

公開日 2017/06/23 10:00 大橋伸太郎
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プロジェクターで観るHDRコンテンツとは

初めに確認しておきたいことは、直視型テレビのHDRとプロジェクターのHDRは同列に語れないことだ。直下型バックライト液晶テレビは、最大輝度がHDR10の基準値1000nits、有機ELでも800nitsに達する製品が少なくない。プロジェクターの場合、一説によると100インチマットスクリーン上に最大1000nitsの映像を出すには最大輝度10,000ルーメンのパワーが必要とされる。レーザーダイオードの個数を増強しても現時点の家庭用プロジェクターでは不可能だ。

第一、両方式は視聴環境が違う。完全暗室にスクリーンを設置し最大1000nitsの映像が長時間視野を覆えば、視覚への負担が大き過ぎる。プロジェクターのHDRでは暗部、明部の階調のきめ細やかさ、鮮明さが問われる。

EH-LS10500は光学系自体EH-LS10000からの変化はなく、最大輝度は1,500ルーメン。放電灯を光源に使う同価格帯ライバルは1,800〜1,900ルーメンの範囲にあり、本機が特に明るいわけでない。元来が黒表現を重視したプロジェクターだ。巧妙なガンマ設定でエネルギーのリソースを活用しているのが本機だ。

EH-LS10500の分かりやすい変更点は主に2つで、1つがカラーモードの変更でシネマ系モードが3種に分化した。ざっと紹介すると、「ブライトシネマ」は照明が少し点いた環境で映画を見る時に使う、「デジタルシネマ」は色域が一番広く色表現を優先したい時に使う、「シネマ」は暗室環境で映画を見る時に使うというもの。

「カラーモード」のメニュー

もう1つ新たに加わった機能が、詳細設定の中の「ダイナミックレンジ」。デフォルトはAUTOだがマニュアルで1〜4が選べる。HDR1〜4はコンテンツピーク輝度による設定で、HDR1が500nits、HDR2が1000nits、HDR3が4000nits、HDR4が10000nits。

「ダイナミックレンジ」から選べるSDR/HDRモード

この他にAUTOとSDRがある。メーカーによれば、例えばHDR1で見た場合、500nits以上の信号はフラットな表現になるが、現状のUHD BDのコンテンツ輝度信号は4000nitsを超えるものが稀なので、HDR3、4を使う機会は少なく、HDR1、2を推奨している。AUTOはソフトのメタデータを読み出して適宜選択するのでなく、HDR信号入力でHDR2を自動選択、SDR信号が入力されるとSDRが自動選択される。

この日、視聴室に持参した4K UHD BDのHDRソフト中、最もコンテンツピーク輝度、平均輝度の数値の高い(つまり明るい)映像が『マッドマックス 怒りのデス・ロード』だ。1000nitsクラスの画面テレビだとフラッシングが連続するシーンで、子供が視覚障害を起こすのではないかと心配になるほど。

HDRソフト中異例に高輝度なシーンの続く本作ゆえ、HDR3(4000nits)、HDR4(10000nits)をマニュアルで選んだが、現実には全体にガンマが寝てしまうのか暗過ぎるように感じる。HDR1、2は迷うところ。砂漠化した地球の無慈悲な光線の描写という点では映像がより明るいHDR1だが、HDR2のパセティックな終末色も捨て難い。

ちなみに静止画で比較すると本作の映像に頻出する炎が、HDR1だと細部が潰れてフラットになってしまう、ということでHDR2を採用した。カラーモード「ブライトシネマ」はハイライトがよく出るが、輪郭が強調されるきらいがあり大画面を前提に「シネマ」でウェルバランス。

最大輝度1500ルーメンの本機は特に明るいといえないが、ガンマの設定は非常に巧みで、本作のエキセントリックな映像が最大に発揮されるCH03、砂嵐への突入の光の激しい明滅と明暗の切り替わりも表現し切った。赤い光と白光が交互に明滅するシーンで光のエネルギーに手を加えず、砂漠の荒涼とした死滅の色のアンバーと空のパーンと明るい青の対比も鮮やかだ。CH03からCH04で暗転するが、その時のパーフェクトブラックは非常に効果的だったことも報告しておこう。

左上がHDR1、右上がHDR2、左下がHDR3、右下がHDR4モード。映像に大きな差が出ることが分かる

次ページ2K SDRでも発揮されるほかでは味わえない魅力

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