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DAC刷新など音質も強化

“エントリー” に収まらないサウンド 。HEOSにも対応したデノンAVアンプ「AVR-X1400H」をチェック

公開日 2017/06/14 11:28 鴻池賢三
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■ステレオ再生では“中級プリメインアンプ並”のS/Nを発揮

まずは小手調べに、USBメモリーのハイレゾ音源を再生。先述の能書きが頭の片隅に残っているとは言え、昨年モデルAVR-X1300Wを遙かに凌駕する、いや、一般的なエントリークラスのAVアンプとも次元の異なる高音質に驚かされた。

基本性能として、S/Nが中級プリメインアンプと張り合えるくらいにハイレベル。特に小音量でも低歪みなのは特筆に値し、シルキーで耳障りの良い美音が心地良い。このあたりは、DACやプリアンプ/ボリューム回路の刷新による効果だろう。低域はDENONアンプの伝統を感じさせる駆動力に精密な制動力が加わり、クリーンでキレの良さが印象的だ。以前は量感の豊かさで温かみを重視した音調に感じたが、適度な筋肉質に生まれ変わっているのだ。甲乙というよりは、音源のハイレゾ化に伴い、全帯域における解像度を求めた結果だろう。

音元出版の試聴室に設置したAVR-X1400H

優秀な録音のハイレゾ音源では、爽快な空気感を満喫できる。終始、低域を支配下において質感をキープし、音楽が持つニュアンスを崩さない様に、プリメインアンプとしても通用する実力を感じるのだ。

具体的には、高中正義「Blue Lagoon」(96kHz/24bit/FLAC)に刮目。一般的にエントリーレベルのAVアンプで聴くと、ハーモニクスがうるさく感じるのだが、本機では実に滑らかで耳触りが良く、心に沁みてくる。弦の質感やうねりの変化までも的確に掴め、表情の繊細な変化を聴き分けられるのも楽しい。

Billy Joelの「Travelin’ Prayer」(96kHz/24bit/FLAC)、は、曲の進行に従って楽器が増え、音が詰まってくる。これもエントリーモデルでは鳴らし切るのは難しい楽曲だ。本機では、左右のセパレーションが非常に明瞭。ワイドに展開する音場に各楽器が分離して定位し、音色の混濁も感じない。混ざって崩れるような気配がなく、本機の基本性能、足腰の強さを感じずにはいらない。

AVR-X1400Hの背面端子部

女性ボーカルは宇多田ヒカルの「time will tell」(96kHz/24bit/FLAC)で確認。冒頭、かすれるような弱いブレスが透明感を湛えて空間にすっと現れ、憂うようなニュアンスが雰囲気たっぷり。数小節進んでドラムが入ってくると、立ち上がりの鋭さで高いコントラストを生む。このS/N感は、音作りの巧みさによる「感」ではなく、Hi-Fiオーディオの領域に達した「実力」を感じさせるものだ。

映画BDにおける空間再現でもS/Nが際立つ。立ち上がりの早さも秀逸

続いてマルチチャンネルの音質をチェック。試聴環境は、モニターオーディオのスピーカー「Silverシリーズ」で7.1chシステムを構成。BDプレーヤーは、パナソニックのUHD-BDプレーヤー「DMR-UBZ1」を使用した。

映画『オブリビオン』のチャプター16の激しい戦闘シーンでは、銃撃の金属音が耳障りにならず、音量を上げれば上げるほど迫力を増し、野太い響きを伴って力強くなる。サブウーファーも組み合わせているとは言え、爆裂音の凄まじさはエントリーレベルの枠を超えるもの。パワーアンプへの電流供給が潤沢で、立ち上がりがさらに素早くなったことはこういったシーンでも如実に感じられた。また、マルチチャンネル駆動でもS/Nの良さなど基本性能が高く、チャンネル間の音色も整っているためか、スピーカー間の音の繋がりが良く、空間の広がりが自然なのも好ましい。Audysseyの音場補正も活きるというものだ。

また、弾丸が後方から前方に抜けるような表現では、移動の軌跡が鮮明で、頭上をかすめるようなリアルさに思わず首をすくめてしましった。目を閉じればエントリークラスのAVアンプであることを忘れてしまうほど。仕上がりの良さに感服だ。

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