海上忍のラズパイ・オーディオ通信(26)

ラズパイオーディオ、ワンボードオーディオ・コンソーシアムは「ソフトウェア」をどう定義する?

海上 忍

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2017年03月22日

現状、Raspberry Pi用のオーディオに特化したLinux OSは、VolumioやMoode Audio、RuneAudioなど数種類が存在します。いずれも「MPD(Music Player Daemon)」(リンク)を利用した再生体系を採用しており、それなりに安定して動作します。当面は、これらをインストールした起動ディスク(microSDカード)で期待どおりに動作するかが、コンソーシアムで定義する基本的なソフトウェア要件となるでしょう。

言い換えれば、オーディオ再生システムのコアは当面MPDということになります。MPDを介して“公共財的存在”になりつつあるデコーダ(libflacやlibavcodecなど)を呼び出す形になるため、ソフトウェアの違いによる音質差は生じにくく、コンソーシアムとして仕様を推奨できると考えています。

MPDの概念図

MPDにはプラグイン機構があり機能を拡張できるほか、サーバ/クライアント型の通信仕様(プロトコル)が整備されているので、既存のネットワークサービスとの接続も比較的容易です。たとえば、「upmpdcli」というソフトウェア(詳細はこちら)、OpenHome(LINNが提唱し仕様をオープンにしたUPnPベースの再生システム)に準拠したNASなどのメディアサーバとMPDを仲介する役割を果たします。曲操作にはスマートフォンアプリを使えますから、ユーザはそのような構造を意識せず使えることもポイントです。

OpenHomeに対応したアプリを使うと、UPnP対応のNAS上の楽曲を快適に再生できます(画面はLUMIN App)

MPDを組み込んだ商用製品も登場しています。最近発売された製品でいえば、英CHORD ElectronicsのポータブルDAC「Mojo」に接続するタイプの拡張モジュール「Poly」は、microSDカード上の楽曲再生にMPDを使用します(関連ニュース)。採用されているMPDのバージョンは不明ですが、機能的には前述したVolumioやMoode Audioと変わらないと考えていいでしょう。

Mojoの拡張モジュール「Poly」には、MPDが採用されています

オープンソースなのだからLinux OS全体を自力で用意したいところですが、そう簡単な話ではありません。目的がオーディオ再生のみだとしても、相当な数のプログラムを組み入れて管理せねばならず、カーネル/ライブラリとの依存関係も把握しておかなければならないからです。だから前述のオーディオに特化したLinux OSは、いずれもARMアーキテクチャ向けの汎用品(VolumioとMoode Audioは「Raspbian」、RuneAudioは「ArchLinux」)をベースに、オーディオ再生関連機能を加える形でLinux OSとして成立させています。

Linux向けにもSpotifyなどストリーミング再生に対応するためのプラグインが存在します(画面はVolumio)

とはいえ、いずれは独自の方向性も出さねばなりません。そんな時、私の話を面白がって聞いてくれたのが、音楽配信サービスで知られるOTOTOYの竹中直純さんです。OTOTOYをはじめ数社の代表を務める実業家ですが、坂本龍一さんの武道館ライブをネット配信したり、村上龍さんの小説を有料でネット配信したりと、先進的なネットサービスを実現してきたパイオニアでもあります。そのOTOTOYがコンソーシアムに名を連ねているということは……すでにNASやビデオレコーダなどで実用化されているハイレゾ音源のダウンロードサービスがコンソーシアム仕様のソフトウェアで、という話も出ているということです。どうかご期待ください。

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