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【特別企画】シリーズごとの最適プレーヤーを探る

オーディオテクニカ新VMカートリッジ & 人気アナログプレーヤー6機種スクランブルテスト!

公開日 2016/12/27 10:25 岩井 喬
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700×アナログプレーヤー スクランブルテスト
ティアック「TN-570」 ¥OPEN(予想実売価格120,000円前後)

ここからは700シリーズ「VM760SLC」との組み合わせである。中級機らしいこだわりと仕上げの美しさを両立したティアック「TN-570」は、人工大理石と高密度MDFを制振性の高いラバー素材を挟み込んで重ね合わせたキャビネットを採用。ボトムシャーシはハニカム構造を取り入れ、剛性を高めている。

ティアック「TN-570」

プラッターはアクリル樹脂製で、軸受け部に設けた非接触式センサーにより回転数やブレを測定しハイトルクDCモーターを制御するPRS3を用い、ベルトドライブ方式ながらダイレクトドライブ方式に匹敵するワウフラッターを実現。高さ調整が可能となったシェル交換対応のユニバーサル方式S字アームの内部配線にはPC-Triple C導体を採用した。フォノイコライザーにはTI製「OPA1602」を用い、USB出力のほか、192kHz/24bit対応光デジタル出力を加えたA/Dコンバーターも装備する。


「VM760SLC」は、オーディオテクニカ「AT-LH15/OCC」に取り付けた。サウンドはS/Nが良くスムーズで、落ち着きを持った大人びたもの。低域も素直で階調良く弾力豊かに表現する。ボーカルは厚み良く、ふわっと浮き上がるさまもナチュラルに描き出す。全体的にほぐれ良く、ストリングスも個々の音を粒立ち良く描写。弦楽器は艶良い質感でまとめられ、ピアノはブライトな響きを持ち、爽やかに余韻を聴かせる。空間性も自然であり、VM760SLCの持つ抑揚良く丁寧な傾向を感じることができた。


デノン「DP-1300MK II」 ¥200,000(税抜)

続いて組み合わせたのはミドルクラスのロングセラーモデル、デノン「DP-1300MK II」だ。下位モデルDP-500Mにも継承されている。同社製スピーカーSC-CXシリーズと共通の、天然木突き板仕上げの高級感溢れるMDFベースのキャビネットを採用。振動吸収ラバーでデッドニングした直径331mmの大型アルミダイキャスト製プラッターは、ハイトルクモーターによるダイレクトドライブ方式で回転させる。

デノン「DP-1300MK II」

スピード検出にはモーター内部に設けたスリットを通過する光パルスの間隔で制御するクォーツロックサーボを用いたエンコーダー方式を取り入れた。ユニバーサル方式のS字アームは高さ調節が可能で、堅牢なアルミダイキャストベースに収められている。

ちなみに今回組み合わせるVM760SLCとAT-LH15/OCCの重量を合計すると23gとなり、同梱カウンターウェイトの対応範囲を超えてしまう。この場合は別売オプションの重量級カートリッジ用ウェイト「ACD-45-N」を使う必要がある。


穏やかかつ豊かに伸びる低域の安定感と、華やかで艶良い高域の煌めき感によってゴージャスなサウンドが展開。ボーカルは肉付きもしっかりしており、落ち着きあるウェットな描写となる。音の運びもスムーズでいかにも“アナログを聴いている”というリッチな音色だ。ピアノのハーモニクスやストリングスの旋律は広がり良くクリアで、プレイニュアンスを明晰かつ細やかにトレース。ロックサウンドの押し出し感も良く、リズム隊も密度が濃く厚みも十分だ。


テクニクス「SL-1200G」 ¥330,000(税抜)

最後は復活したテクニクスの最新プレーヤー「SL-1200G」である。ダイレクトドライブ方式の開拓者らしいこだわりにあふれた仕様で、コギングをなくすためのコアレス・ツインローター・ダイレクトドライブ・モーターを搭載。その制御もBDドライブなどで培った技術を応用し、基準クロックのほか、回転数検出を行うハイブリッドエンコーダーも高精度化を果たした。

テクニクス「SL-1200G」

真鍮とアルミダイキャスト、裏面のデッドニングラバー加工という3層構造の重量級プラッターや10mm厚アルミトップパネルをはじめとする4層構造のキャビネット、高減衰シリコン採用インシュレーターなど、徹底した不要共振の排除と振動対策・高剛性を追求した構成を誇る。伝統のジンバルサスペンション構造のユニバーサル方式S字アームはマグネシウムパイプを採用。

VM760SLC+AT-LH15/OCCの構成では付属サブウェイト・小を取り付けることで最適なセッティングが可能となる。


サウンドは全帯域で制動の効いた解像度指向のサウンドだ。DP-1300MK IIと対照的なニュートラルかつストレートな音色傾向で、低域はキレ良く引き締まり、高域は伸び良くナチュラルな階調性を見せる。音場は極めてS/Nが高く、ストリングスも一本一本がほぐれ良く展開。音像の輪郭を的確に描き出し、繊細なタッチも克明に拾い上げる。ハーモニーの抑揚もリアルでリヴァーブ感の分離度も高い。にじみなくクリアな空間へ切り抜いたようにスッと浮き上がるボーカルの落ち着き良く存在感溢れる描写に驚かされた。余韻のグラデーションも細やかで、ふっと現れる吐息の表現も生々しい。

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