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「SA-14S1SE」と「PM-14S1SE」を試聴

マランツの特別仕様モデル「14S1SE」で確認、“コストを度外視したチューニング”の成果

2016/07/14 山之内 正
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『ブルー・トレイン』ではリズム楽器とホーン楽器の対比がさらに明瞭になって、前後方向にも立体感のあるサウンドステージが展開する。余分な音がまとわりつかない感触はPM-14S1SEと共通し、そのメリットは特にリー・モーガンのトランペットではっきり聴き取ることができた。ドラムが刻むリズムがタイトに感じられるのも、高音域の付帯音が減っていることと関係がありそうだ。サックスは音色に高めの温度感があり、コルトレーン独特のフレージングから力強さが伝わってくる。

USB-DAC再生でも“Special Edition”ならではのサウンドを聴かせてくれる

最後に、SA-14S1SEのデジタル入力の音質をUSB接続で検証した。基本的な音の傾向はディスク再生と大きくは変わらず、オリジナル製品と同様、開放的なパースペクティブと自然なバランスを実現している。

両モデルの試聴では、時間とコストの制約を解いたサウンドチューニングの成果を確認することができた

厳密に聴き比べると、SA-14S1に比べて3次元の空間表現力が若干向上しており、室内楽の音像の位置関係やライヴ音源の会場の雰囲気や暗騒音など、微小信号の再現性がものを言う部分に違いが現れた。

今回のチューニングは回路自体には変更を加えていないはずなので、違いが生まれる要因としてはトップカバーやフットの違いなど、物理的な要素が考えられる。データ再生ではディスクと同等かそれ以上に微妙なチューニングの成果が音の違いとして聴き取れるケースが少なくないので、前述のような違いが生まれたとしても不思議ではない。

時間とコストの制約を解いたサウンドチューニングの成果

オリジナルモデルとの聴き比べでは、確実な音質改善を聴き取ることができ、音像の立体感とフォーカスの良さ、低域の解像感の高さなどにSEの優位が認められた。また、これはオリジナル製品にも当てはまることだが、アンプとプレーヤーの音が同じ方向を向いていて、響きや音のタッチが見事に統一されていることにも感心させられた。

もちろん、各コンポーネント単独で音を追い込むことが音決めの基本だが、優れた耳の持ち主が高い精度で追い込むと、バランスや音色が最終的にかなり近付いていくのは自然なことだ。特に今回のSEのように時間とコストの制約を解いてサウンドチューニングを徹底すると、期待以上に大きな成果が生まれることがある。台数限定という点が唯一残念だが、それが特別な価値を生んでいることにも注目しておきたい。

(山之内正)

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