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【特別企画】鴻池賢三が製品の魅力をチェック

革新的バックライト技術を搭載した4Kブラビアの高画質モデル − ソニー「X9300D」の実力にVGP審査員が迫る

2016/06/03 鴻池賢三
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しかし、その画は「エッジ型」と聞いて想像するであろう品位を良い意味で覆す、画期的なレベルに仕上がっている。直下型LEDバックライトのX9400Cと比較視聴しても、エッジ型のX9300Dは明部のピーク感や暗部の締まり、映像全体から受ける総合的なコントラスト感で負けていない。X9400Cと同様、余剰電力を利用してピークを突き上げる高コントラスト化機能「エクステンディッドダイナミックレンジ プロ」(XDR PRO)の採用も効果を発揮しているものと思われる。

新薄型バックライト技術「Slim Backlight Drive」は、複数枚の導光板を組み合わせた特殊なパネルと独自のLED制御技術により、エッジ型でありながら、直下型LED部分駆動に迫る高コントラスト表現を可能にした

例えば、真っ暗な夜空の真ん中に月が光るような画柄。通常のエッジ型では、画面中央の月を光らせようとすると、画面の端から光の帯が短冊状に伸びてくるのが見えてしまう。ところが「Slim Backlight Drive」では、直下型部分駆動のように、月の部分だけが明るく輝いて見えるから不思議だ。

ソニーは「複数枚の導光板を利用した」とするだけで、詳細は明かさない。LED配置の原理上、X9400Cに適わない図柄も確かにある。しかし直下型か? エッジ型か? というスペックだけで画質を決めつけるのは早計であり、注目すべきはバックライトの使いこなしとその精度なのだ。

■最上位機譲りの基礎体力の高さ。暗部階調の表現力は有機を凌ぐ

X9300Dの基本性能をもう少し見てみよう。ご存じの通り、透過型と呼ばれる液晶ディスプレイは、いくつかの宿命を背負っている。具体的には、低輝度時の色純度低下やユニフォーミティ、動画特性、そして視野角特性などである。

ソニーはこうした液晶の基本特性と向き合い、使いこなしに心血を注いできた結果、様々なノウハウと技術を身に着けてきた。それはブラビアの基礎体力の高さを証明するものだ。

例えば画面の画柄が暗い時は、LEDの光量をPWM(明滅)制御と電流制御を駆使して充分に絞ることで、色純度低下の原因となる光漏れを抑制する。また、光源光量を充分に絞ることで、液晶シャッターによる階調制御に余力が生まれ、0%〜5%程度の難しいグレースケールもきちんと階調を表現することができる。

これは一般的な液晶テレビが最も不得意とする部分であり、さらに言えば、漆黒表現に優れる有機ELデバイスであっても、発光を安定させるのが難しいが故に滑らかな暗部階調が不得意なのだ。

事実、業務用4K有機ELマスターモニター「BVM−X300」と横並びで比較しても、グレースケールを用いた最暗部の階調表現はX9300Dが一枚上手だった。階調だけで無く、暗部の色乗りやコントラストの面でもX9300Dは非常に高いレベルにある。

この他、バックライト制御による輝度コントロールで視野角特性の改善やバックライトスキャニングを用いた動画ボヤケ低減にも取り組んでいる。液晶パネルの性能が成熟した今、液晶テレビの画質を左右するのは「バックライト制御」がキモといえよう。

■X9300Dで見るHDR映像は光の描写がよりリアリティを増す

テストパターンで確認することができた暗部階調の再現能力は、もちろん、BDコンテンツなどの実映像でもいかんなく発揮される。例えば夜間の屋外を捉えたシーン。一般的な液晶テレビの場合、背景が平面的になりがちだが、X9300Dはコンテンツに含まれている図柄や色情報がきちんと表現され、立体感がキープできている。

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