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旗艦機“Grandioso”直系のスタンダード機

エソテリック「C-03Xs/S-03」レビュー。音楽の“静と動”を描き切るセパレートアンプ

公開日 2016/02/24 10:43 大橋伸太郎
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プリアンプの音質の要となるボリュームには、ESOTERIC-QVCSを採用した。左右チャンネル、ホットとコールド独立の合計4回路のラダー抵抗切替え型ボリュームを一括連動し、チャンネルセパレーションと位相特性に優れる音質を狙った。オーディオ基板からボリュームデバイスへの配線をなくしてオーディオ信号経路を短縮し、音質の劣化を最小にしたことも見逃せない。

筐体内部

電源部は左右オーディオ回路、コントロール部それぞれに電源供給する3トランス構成とし、大容量ブロックコンデンサーを組み合わせる。シャーシ・コンストラクションは、従来の03シリーズのプリアンプよりも大型となる、02シリーズのシャーシを採用。内部を5分割した2階建て(ダブルデッカー)構造により各回路ブロックを専用室に収め、相互干渉を可能な限り追放。立体配置が信号経路の短縮にも貢献する。

モノラルアンプ並の電源構成を1筐体に納めたパワーアンプ「S-03」

パワーアンプ「S-03」は、290W+290W(8Ω)、145W+145W(8Ω)の大出力ステレオパワーアンプ。最大の特徴が“2×2 Dual Mono”パワーサプライ。これは前段とドライブ段の電源部を独立させデュアルモノ化した、4セクション独立構成の電源回路だ。微弱な信号を扱う前段(電圧増幅段)、電流変動の大きいドライブ段(電流増幅段)の電源部を独立させることで、大入力のフルドライブ時でも細部のフォーカス感が鈍らない。

S-03

さらにトランスの2次側巻線から整流回路まで左右独立のデュアルモノ構成を徹底、モノラル・パワーアンプのペア使用時に迫るチャンネルセパレーションを獲得した。電源部のメイントランスはEI型で、940VAの大容量トランスを5mm鋼板製のベース部に強固にマウントすることで振動を封じ、ドライブ能力と静粛性を両立。電源部コンデンサーは、4,700μF×3パラレルのデュアルモノ構成とした。

背面端子部

パワートランジスターのデバイスには、LAPT素子を使用。一般的なパワートランジスターの2倍近いサイズの大型デバイスで、連続動作17A、瞬間動作34Aの高い電流供給能力を持つ。パワーアンプモジュールは、上記バイポーラLAPT素子を5パラレル・プッシュプルとした3段ダーリントン構成。コスト度外視の贅沢な陣容だ。ドライブ段2段目から最終段へ出力インピーダンスを下げ、電流供給能力を高めるLIDSC回路も採用。前段の裸ゲインを小さくし、大出力アンプに欠かせないNFBの量を最小にしたシンプルな設計も「ミニマムアプローチ」の一環である。

筐体内部


圧倒的な“瞬発力”と“静寂”があらゆる音楽を躍動的に描く

SACDからハイレゾファイルまで聴いて強烈な印象を残したのは、スピーカー駆動能力の痛快なまでの高さだ。クルマに例えると、エンジンはもちろん足回りからコンピューター制御まで入れ替えたように、スピーカーが束縛から開放され猛然として目覚め歌い奏でる。主にS-03の電源供給能力の高さによるものなのだろうが、入力音楽信号へのレスポンスの高さ、リニアかつ無尽蔵に沸き出すハンドリングパワーが桁違いだ。同時にノイズフロアが極小で、音場のバックグラウンドの静寂感は特筆できる。これにより楽音のコントラスト感が際立ち、音楽を立体的かつダイナミックに表現する。取り澄ましたところはなく、常に躍動的だ。

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