海外で話題の革新的音楽管理・再生ソフトをレビュー

クラウド/ローカルをシームレスにつなぐ“総合音楽鑑賞プレーヤーソフト”「Roon」の魔法とは?

逆木一

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2015年12月25日

Roonの魔法の正体

音源には内的に様々な情報(タグ)を仕込むことができる。アルバムアートは言うに及ばず、曲名、アルバム名、アーティスト名、ジャンルといった基本的なものから、作曲者、指揮者、演奏者、オーケストラといった特にクラシック音源にとって重要な情報に至るまで、タグの種類は多岐にわたる。きちんとタグを用いて音源管理を行えば、ライブラリを自分にとって理想のものに仕上げることは十分に可能である。

一方でRoonのメリットは、音源に付加されたタグだけでなく、Roon自体で持っている巨大なデータベースを活用することにある。それらのデータは、音源をRoonにインポートする時点で自動的に付加される。つまり、「Roonが独自のデータベースに基づいてユーザーのライブラリの隅々まで情報を行き渡らせる」ということだ。なおこの時、音源そのもののタグには一切手は加えられない。Roonにおけるデータというのは、あくまでRoonの中でのみ使われるデータとなる。Roonは彼らのホームページにおいて、その機能を「魔法」と称している。元から音源に付加されたタグに加え、Roon自体のデータベースの膨大な情報を有機的に繋ぎ合わせ、めくるめく「音楽の海」としてユーザーに提示すること。これこそ、Roonの言う「魔法」の正体である。

Roonのデータベースの威力がどれほどのものか、一例を見てみよう。HDtracksからダウンロードしたこの音源をRoonにインポートすると、ここまで情報が増える。ライナーノーツもスタッフクレジットも完璧である。


Roonにインポートした時点でのタグ


同一曲をRoonにインポートして表示させたところ


タグにはまず含まれない詳細なスタッフクレジットが表示できた


歌詞も表示。こちらももちろんタグには付加されていなかった情報だ
「Album Editor」からアルバムの中身を見てみると、音源のタグと、Roonが持ってきた情報がそれぞれ表示されている。ジャンルについては音源のタグとRoonが持ってきた情報がどちらも使われているのがわかる。その他、アルバムタイトルや曲名といった情報は基本的にRoonが持ってきた情報が優先されるが、音源のタグを使ったり、まったく新たに設定したりもできる。いずれにせよ、音源に辿り着くルートの最大化という方向で情報が活用される。


赤枠で囲った部分がタグで、Roonロゴの脇に表示されている複数のタグがRoonが付加したものだ
さて、ここまでくると、「もう面倒なタグ付けはいっさいやめて、全部Roonに丸投げしよう」と思われるかもしれない。というわけで、次のような音源を用意した。

・タグを付加したFLAC (Bon Iver / Bon Iver)
・タグを付加したWAV (Jennifer Warnes / The Well [Gold CD])
・タグを付加しないFLAC (Bon Iver / For Emma, Forever Ago)
・タグを付加しないWAV (Jennifer Warnes / The Hunter [Gold CD])


タグありのFLACをWindowsからみたところ。アートワークや楽曲情報が付加されているのがわかる

タグを付加していないFLACをWindowsからみたところ。まったく情報がない
フォルダ名(アルバムタイトル)とファイル名はそれぞれ正確に入力してある。では、これらの音源をRoonにインポートするとどうなるか。下の画像のようになる。


左から「タグを付加しないFLAC」「タグを付加したFLAC」「タグを付加しないWAV」「タグを付加したWAV」


「タグを付加しないFLAC」もROONにインポートすればしっかりと情報が付加された


「タグを付加しないWAV」も同様。フォルダ名が「Unknown」でも楽曲情報が付加されるのは驚きである
これは凄い。元からタグが付加されている音源は言うに及ばず、タグが空っぽの状態でも、Roonはきちんとデータを持ってきた。それどころか、フォルダ名を「Unknown」、ファイル名を単に「01, 02, 03…」とした場合でさえ、Roonの魔法がかかった。タグやファイル名・フォルダ名ではなく、ファイルのデータそのものを分析してRoonのデータベースと照合しているのだろう。これには素直に脱帽だ。

ただし繰り返しになるが、ここで表示されている諸々のデータはあくまで「Roonの中でだけ」使われる情報であって、元のファイル自体は正体不明のままであることに注意が必要だ。Roonを使えば、タグからファイル名から一切合財が破綻したライブラリでも美しく生まれ変わることができる。しかし、それはあくまで「Roonの中でだけ」なのである。他のソフトを使おうと思った瞬間、魔法は解けてしまう。

ライブラリをRoon色に美しく染め上げ、ユーザーに膨大な情報量から成る「単に聴くだけではない」音楽体験を提供すること。これこそ他の再生ソフトと一線を画すRoonの強みである。Roonの「年間課金」という料金形態は、「Roonのデータベースの利用料」と考えればいい。

RoonとTIDALが生み出す未曾有の音楽体験

自前のライブラリをRoonにインポートすれば、自分でも知らなかった音源同士の有機的な繋がりに驚くに違いない。

そこでさらにRoonとTIDALを連携させれば、ローカルの音源とTIDALの音源がRoonの中でシームレスに繋がり、ユーザーがアクセスできる「音楽の海」は途方もない規模にまで拡大する。さらにTIDALのアルバムをRoonのライブラリに加えることで、ローカルの音源と同様、Roonで表示させる情報を取捨選択・編集できるようになる。本来であれば手出しのしようがないクラウド音源にもユーザーの意思を反映させることが可能になり、ローカルのライブラリとTIDALが真の意味で統合可能になる。実に素晴らしいアイデアである。

RoonでTIDALを使うには、初回起動時にログインするか、「Setting」からログインする。これだけで、TIDALがRoonと統合されて使用可能になる。TIDAL上で「My Music」に追加している楽曲は、ローカルライブラリの楽曲と共に「COLLECTION」上にも追加される。

「TIDAL」メニューを開いたところ

あとは直接アーティストやアルバムを検索してもいいし、Roonが提示する繋がりからTIDAL巡りをしてもいい。操作は、ローカルライブラリーに収められた楽曲と完全にシームレスであり、いつの間にか4千万曲にまで増えたTIDALの恩恵を存分に受けられる。

純粋な再生ソフトとしての完成度も高い

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