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銘機が6年ぶりに第2世代へ

【レビュー】beyerdynamic「T1 2nd Generation」を聴く。初代機からどう進化した?

公開日 2015/11/27 11:00 岩井喬
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■バランス接続ではより切れ味良く音像が鮮明になる

ここで別売りオプションの4ピンXLRケーブルと、オヤイデ製の4ピンXLR→TRS×2変換ケーブルを用いた、バランス駆動のサウンドも確認してみよう。

別売りオプションの4ピンXLRケーブル

オヤイデ製の4ピンXLR→TRS×2変換ケーブル

アバレの少ない、より安定感の増した、低歪で落ち着きの深いサウンド傾向となり、質感は滑らかで音像の輪郭は引き締まっている。オーケストラの階調性もより細やかとなって、ナチュラルかつスムーズな旋律を楽しめた。S/Nも高く見通しの深い音場が展開し、音像の分離度も向上。楽器の艶やかさも付帯感なく清涼に表現してくれる。ローエンドはどっしりとしているが密度が高く凝縮され、にじみのない、切れ味のよい響きだ。

DSD音源においては躍動感や質感の流麗さが増し、有機的で生々しい描写となる。声の艶やかさ、楽器のふくよかなボディの響きも自然に浮き上がり、重心の下がったサウンドを聴くことができた。11.2MHz音源では音離れ良く、個々のパートが立体的に感じられ、余韻の爽やかさと、どっしりと深く響く音像の存在感の高さがより際立つ。いかにも目前にいるかのような生々しさだ。

T1ユーザーにも買い増しを進めたい逸品

さらにUD-503ならではのアクティブ・グラウンド駆動も試してみたが、こちらは一層ダイナミックさが増す印象で、肉付き良い滑らかなボーカルや重厚で伸びやかなピアノの豊かな響きが濃密に表現される。ウッドベースの弾力感も活き活きと響き、躍動的で潤いに満ちた音場が展開する。ストレートで制動力の高いリアルなサウンドだが、硬さのない朗らかで自然な音色も持っており、ずっと聴いていたくなる耳当たりの良さも実感できた。

このT1 2nd Generationは、T1が持っていた高域にかけてのクールな倍音の美しさをそのまま自然に引き延ばすとともに、低域の密度や弾力感を増やし音像の芯を強化することで、より有機的な音楽表現を獲得している。

長足の進歩を遂げたT1 2nd Generation(左)。右は初代T1

T1ユーザーからすると、変更箇所だけ交換してほしいというのが正直なところだが、開発陣にそのことを伝えたところ「ドライバーを交換するだけではこのサウンド改善を実感できない。バッフルやハウジングを含めての工作精度の高まりによって左右偏差も極力抑え、バランス駆動でも効果を発揮できるようになった」という回答をもらった。

つまりは買い替えるしか手段がないのだが、この進化点は、フラッグシップたるT1の新たな個性として考えることができる。初めての方はもちろん、T1ユーザーも、ぜひともそのサウンドに耳を傾けてほしい。きっと「もう一台買うか…」と決断してしまうであろう。



T1 2nd Generationは単なるマイナーチェンジや“Mk2”という枠に収まらない、メジャーモデルチェンジといっても過言ではないほどのインパクトを放つ進化を遂げた、新時代のフラッグシップ機だ。

■試聴音源
【クラシック】
・レヴァイン指揮/シカゴ交響楽団『惑星』〜木星(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)
・飛騨高山ヴィルトーゾオーケストラ コンサート2013『プロコフィエフ:古典交響曲』〜第一楽章(e-onkyo:96kHz/24bit)

【ジャズ】
・オスカー・ピーターソン・トリオ『プリーズ・リクエスト』〜ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)

【ロック】
・デイヴ・メニケッティ『メニケッティ』〜メッシン・ウィズ・ミスター・ビッグ(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)

【DSD音源】
・長谷川友二『音展2009・ライブレコーディング』〜レディ・マドンナ(筆者自身によるDSD録音:2.8MHz)
・『Pure2-Ultimate Cool Japan Jazz-』〜届かない恋(2.8MHz)
・Suara「キミガタメ」11.2MHzレコーディング音源(DA-06試聴では5.6MHzに変換)

(岩井喬)

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