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【特別企画】

シリーズ初のドライバー刷新。新時代のアートモニター ATH-A1000Z/A900Z/A500Zを聴く

2015/11/24 小原由夫
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■解像感が高く堂々と力強いサウンドの「ATH-A1000Z」

ATH-A1000Z

純鉄ヨークを採用したドライバーは、本機とトップエンド機のATH-A2000Zの2機種のみ。上位モデルA2000Zと同じく、全て日本で一点一点作られている。

ATH-A1000Zのドライバー構造

イヤーカップは高純度アルミニウム製で、マグネシウム製バッフルの採用により不要振動を排除した設計。シリーズ共通のD.A.D.S.構造、新3Dウィングサポートも採用されており、イヤパッドは低反発素材の立体縫製、ケーブルが左右独立アース(4芯)構造となっている。

実機のイヤーカップは、鮮やかなメタリックレッド。決して派手ではなく、むしろ上品さすら感じる色味だ。

筐体は一見大きめに見えるが、手にしてみると想像以上に軽い。新3Dウィングサポートや立体縫製イヤパッドで、頭にふんわりとフィットし、長時間の装着でも疲れにくい

サウンドはさすがに情報量の多さと解像感の高さがある。ややシャープな音調で、くっきりとしたヴォーカル音像や、ギターやシンバルの質感の明瞭さが新鮮だ。

ダイアナ・クラールの最新作「ウォールフラワー」から「アローン・アゲイン」をハイレゾで聴いてみたが、ややハスキーな彼女の声質をよく捉えていて、子音のニュアンスも生々しく再現する。一方でデュエットのマイケル・ブーブレの声は、大らかでゆったりとした豊かさ。サビでのハーモニーの分離も素晴らしい。

ワーグナーの「歌劇:ローエングリン」から、幕間の間奏曲を96kHz/24bitで再生。一言でいえば重厚で緻密。コントラバスの響きも力強く、重心が安定しているので弦や管の重奏が微動だにしない。音に剛性感が感じられないとワーグナーは聴いていて楽しくないのだが、ATH-A1000Zはその点もまったく危なげなく、堂々とした再現力だ。


■響きがリッチでハーモニーを美しく描き出す「ATH-A900Z」

ATH-A900Z

ドライバーは一体型ヨークを採用した高解像度タイプ。ATH-A500Zと同様の高弾性エラストマーシース片出しケーブルで、D.A.D.S.構造、新3Dウィングサポート、低反発イヤパッド等のシリーズ共通の仕様となっている。

ATH-A900Zのドライバー構造

イヤーカップの外周エッジに施された装飾的なカッティングが、デザイン上のアクセントにもなっているATH-A900Z。その音は、中域から低域に比重が置かれた印象だ。ダイアナ・クラールの再生で、ATH-A1000Zと比べた時のベースの量感、太さが異なるニュアンスで聴こえる。ダイアナの声も、ハスキーさよりも豊満さが目立つ感じだ。それでも全体の柔らかさ、響きのまろやかさは、兄貴分にはない特質と感じる。

ハウジングの外周のみシルバーを配しており、落ち着いたなかにもエッジの効いたデザインとなっている

こちらも新3Dウィングサポートを採用。ほどよく密閉しつつ、装着感もキープしている

ワーグナーでも同様に、剛性感よりも響きのリッチな雰囲気が好ましい。ハーモニーがフワッと広がるように感じられるのだ。この性格の違いは実に興味深く、クラシック愛好家や、アコースティックな音楽を好んで聴く方には、ATH-A900Zはベストチョイスかもしれない。


■闊達で元気ハツラツな「ATH-A500Z」

ATH-A500Z。本機のみ、ハウジングが樹脂製でグロス仕上げとなっている

末っ子モデルで、高域再生限界は34kHzと、ハイレゾ対応ではないけれども、一般的には充分ワイドレンジな仕様だ。D.A.D.S.構造、新3Dウィングサポート、低反発イヤパッド等を採用。なお、本機とATH-A900Zの2機種のみ、ケーブルが片出しになっている。

ATH-A500Zのドライバー構造

闊達で元気ハツラツ。ATH-A500Zの音の第一印象はそんな感じで、音楽の躍動感や抑揚をとてもうまく再現してくれる。解像感やレンジ感にもとりたてて不満はなく、中域を軸とした濃密さが感じられる。ダイアナ・クラールの声は張り出しが気持ちよく、豊満さとハスキーさがほどよい按配。ドラムのブラシの質感にもう少し繊細さがほしい印象はあったが、それを望むならば上位モデルを選択すればよいのだ。

ワーグナーもやや大味なところはあるものの、ダイナミックで骨太な再生。なかなかパワフルな演奏である。タフにガンガン使いたいという人には、本機のコストパフォーマンスは大いに買いだろう。

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