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【特別企画】

シリーズ初のドライバー刷新。新時代のアートモニター ATH-A1000Z/A900Z/A500Zを聴く

2015/11/24 小原由夫
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2015年秋、オーディオテクニカ・ヘッドホン群のシンボリックなラインナップ「ART MONITOR」シリーズがフルモデルチェンジとなった。基本的な意匠は先代を継承しつつ、ドライバーの大幅刷新を断行。時代の要請にマッチするサウンドを実現した。ここでは、VGP2016でヘッドホン大賞を受賞した最上位機「ATH-A2000Z」を除く、兄弟モデル3機種について分析してみたい。

音楽の“ART”を表現するオーディオテクニカの象徴的シリーズが刷新

ART MONITORシリーズは、その名の通りモニター的なキャラクターを意図したサウンドチューニングをベースとしているが、頭の“ART"が肝と筆者は感じている。つまり、音を冷徹に分析し、演奏の粗も録音の善し悪しもあからさまにする『検聴』的なモニターではなく、普段聴いている音楽から新たな響きやニュアンスを発見し、音楽、ひいては演奏家の芸術的な資質を探索しながら、リスナーが求める愉悦や心地よさが感じ取れるようなヘッドホンリスニングを目指しているように思うのである。

さて、シリーズ全体からみて約4年ぶり(一部の機種は約7年ぶり)のフルモデルチェンジとなるART MONITORシリーズ。おりしもハイレゾが話題となっているが、20余年のシリーズモデルの実績をもとに音の嗜好の変化と時代のニーズにフィットさせることにトライした。具体的には、中高域の明瞭度アップと、よりディープな低域のレスポンスである。結果的にドライバーを新規に開発している。

A2000Zのほか、A1000Z/A900Zは“ハイレゾ”対応となっている

ART MONITORシリーズでは、伝統的に53mmという大口径ドライバーを採用している。振動板が大きければ、当然ながら低音再生には高い能力/性能が期待できるが、細かな分割振動によって音を出す高域では、大きな振動板は不利である。そこで今回、大量生産ではなく、技能の高い職人が1個1個丹念に作り上げる日本生産とし、なおかつ過渡応答を高めるべく超硬質カーボン材の特殊コーティングを新たに採用した(いずれもATH-A500Zを除いた3機種のみ)。

加えて、より効率よく磁気エネルギーを伝達する一体型純鉄ヨークの採用(ATH-A1000Z)や、ストレスのない空気の流れを作ることで歪みを激減させるトップマウントPCB方式等を導入。振動板の前後運動をいかにスムーズにするかに数々の最新要素技術とノウハウが注がれたのである。

二重構造ハウジングによって空気のダンピング効果を高め、低域を一層伸びやかに再現する特許構造「D.A.D.S.構造」を採用

全機種で共通している「D.A.D.S.構造(ダブル・エアー・ダンピング・システム)」は、二重構造ハウジングによって空気のダンピング効果を高め、低域を一層伸びやかに再現することができる、オーディオテクニカの特許構造である。イヤパッドは低反発タイプで耳に優しいフィット感を約束する。

ちなみに、53mm口径ドライバーを初めて搭載したのが、1994年発表のART MONITORシリーズの初代機「ATH-A10」であり、今回のトップエンド機「ATH-A2000Z」に採用されているチタンをハウジングに活用したのも、同じくATH-A10が最初であった。さらには、ハンガーレスの特許メカニズム「ウィングサポート」の原型もATH-A10に見ることができる。

こうして振り返ってみても、ART MONITORシリーズがオーディオテクニカにとっていかに重要な位置付けにあるモデルかがわかるのだ。

では、各モデル毎に特徴を見ていきながら、音質の違いについても触れていこう。

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