300B真空管を今こそ採用した意図とは?

ラックスマン「MQ-300」を聴く − 300B管の魅力と駆動力を両立させた真空管アンプ

井上千岳

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2015年11月13日
あえて今、「300B」真空管をシングルで採用した意義とは?

「MQ-300B」は、ラックスマン創立90周年を飾る記念モデルである。3極管300Bによる管球式パワーアンプだ。

周知のように300Bは直熱3極管で、最も原理に近いシンプルな構造と言っていい。このためか純粋できめ細かいとか、真空管の特徴をよく表した柔らかな音といった定評があり、特にアマチュアの自作ファンに人気が高い。ただし出力の小さいのが泣き所だ。

LUXMAN「MQ-300」 ¥1,600,000(税抜) ※ボンネットを外したところ

その自作ファンならいざ知らず、ラックスマンのような専業メーカーが作るとすれば、音が出たというだけで満足するわけにはいかない。通常のスピーカーなら無理なく鳴らせるだけの駆動力を備えていなければならないし、それなら300BでなくてもKT88やEL34で済む。わざわざ出力の取れない300Bをそれもシングルで使ったからには、それなりの理由あるいは意図がなければならない。いったいその意図、いわばアンプメーカーとしての主張とは何だったのか。

音を聴けばそれは明らかなのだが、そのことは最後に触れることにしてまずは概要を述べることにしたい。

300Bとしては異例の8Wという高出力を実現

ラックスマンでは31年前の1984年に、300Bアンプを一度発売している。MB-300というモノラル・アンプで、やはり300Bのシングル構成であった。

試聴室に設置したMQ-300

本機はそのMB-300Bを糸口として、新たに設計されたと考えるべきだろう。もっとも外観デザインはこれをベースとしているようだ。トップパネルは12mm厚のアルミ押し出し材。シャーシは鋼鉄製で厚さ1.6mm。さらに2mm厚の底板という構成である。トランスケースも往年のそれに似ているが、中身は全く別だ。またウォールナットの木枠には、ピアノ塗装が施されている。

300Bという真空管は、普通の使い方では精々3W程度の出力しか得られない。しかし本機ではチャンネル当たり8Wの出力を確保している。当然回路構成にも一工夫されているはずである。

まず前段の電圧増幅部は、双3極管6SN7GTBをチャンネル当たり2本使用し、パラレルの2段増幅としている。1本の両側を使ってパラレルとし、これを2本接続したものである。これによってインピーダンスは半分程度に減少するということで、信号を十分に低インピーダンス化して出力管に送り込むという設計になっている。300Bでこういう回路構成は、あまりないということだ。

背面端子部

出力管の300Bには、特に高槻電器工業製のTA-300Bを採用している。TA-300Bは京都府に本拠を持つ同社が国産としては35年ぶりとなる2010年に開発した真空管で、高額ではあるが音質の高さで大きな話題を呼んだ製品である。本機ではこの真空管を自己バイアスとしてシングルで使用。NFBをかけない無帰還構成として、300Bとしては異例の8Wという高出力を実現している。また各段間のカップリング・コンデンサーには、いまでは珍しいオイルコンデンサーを独自に開発して採用した。耐圧の高さと音質がポイントである。なお点火は直流式としている。

当たりのよさ、手触りの柔らかさが生きた300Bだからこそ可能な音

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