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「イエスタデイ」を聴くだけでも価値がある

『ザ・ビートルズ 1』2015年版は何が変わったのか? 新リミックスされた全27曲を徹底解説

公開日 2015/11/06 14:18 大橋 伸太郎
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ビートルズをこれまであまり聴かなかったビギナーに聴いて欲しい

『ザ・ビートルズ 1』CD ¥2,600(税抜・品番:UICY-15437)

曲によってはケチも付けたが、この2015年盤『ザ・ビートルズ 1』は、丁寧なリミックスでザ・ビートルズの音楽の不朽の価値をさらに高めたことは認めよう。

過去(従来)のミックスで隠れがちだったバンドとしての演奏の上手さ。ロックベースの革新者ポールの躍動的でよく歌うベース(ジョンやジョージの曲でベース奏者としての真価を発揮)、手堅いリズムを揺るぎなく刻むリンゴのドラムはもちろん、ロカビリーがバックボーンの、ディストーションを過度に使わず艶やかなサウンドを聴かせるジョージのギター、さり気ないオブリガートにセンスと才気の光るジョンのカッティングがこの2015年版で初めて前面に現れた感がある。

定評ある赤盤・青盤に増して簡潔かつ音質面で優れるので、ザ・ビートルズをこれまであまり聴かなかったビギナーに聴いてほしい。

一方、年季の入ったザ・ビートルズファンにとって、彼らの音楽は人生に迷った時、疲れた時に癒しをくれる永遠のオアシス。クリアになった音質から新たな発見と驚きがあるはずだ。

最後に筆者からユニバーサルにリクエストしたい。リミックス、リマスターもいいが、何にも増してリリースして欲しいのが、映画『レット・イット・ビー』のブルーレイディスク。日本ではVHSセルソフトのみ、アメリカ版レーザーディスクがパッケージとして最後である。

版権関係が複雑なのは重々承知しているが、やってできないことはないだろう。元来が16mmフィルムの撮影なので、4K/UHD-BDは必要ない。代わりに映画のサウンドトラックCDをセットにして頂きたい。この映画はアルバム製作過程から作られた映画なので、サウンドトラックがないのである。今では考えられないが、40年前は皆が映画館にデンスケ(ポータブルカセット録音機)を持ち込んで映画の音声を録音したものだ。

リクエストの二つ目は、「レット・イット・ビー」録音時にザ・ビートルズがセッションしたロックンロールのスタンダード集。一部は『ザ・ビートルズ アンソロジー3』に収録されたが、その数は一枚のアルバムを作るに足る十分な曲数と言う。

こうした夢を掻き立ててやまない唯一無比のバンド、ザ・ビートルズはやはり偉大である。『ザ・ビートルズ 1』はそれを改めて教えてくれた。

(大橋 伸太郎)

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