【連載】山之内正のオーディオ・アナリシス

「衝撃的なほど生々しいサウンド」。DSDライブストリーミング公開実験の舞台裏

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山之内 正

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2015年05月08日
“ドリームチーム”によるDSDライブストリーミングはなぜ実現したのか

高音質音楽配信はダウンロード音源だけの恩恵かと思いきや、ストリーミングにも高音質化の動きが見え始めた。曲数を競うのではなく、音の良さで差異化を図る動きが現実になってきたのだ。ただし、そうはいっても今はまだ圧縮音源からロスレス音源へのステップアップが海外で始まった段階で、ストリーミングサービスで日常的にハイレゾ音源を聴くところまでは行っていない。

そんななか、高音質配信の最先端を切り開く画期的なイベントが行われた。4月初旬、インターネットイニシアティブ(IIJ)、ソニー、コルグ、サイデラ・パラディソ(代表:オノセイゲン氏)の4社が共同で「DSDライヴストリーミング」の公開実験を敢行したのだ。ライヴストリーミング自体はいまや珍しくはないが、超高音質のDSDでそのまま配信するというのはさすがにまだ例がない。伝送帯域や再生環境など、克服すべき課題がたくさんあることがその理由だが、今回の公開実験はその難題にあえて挑戦したことに意義がある。

Saidera Paradiso 代表取締役 オノセイゲン氏

(株)インターネットイニシアティブ サービスオペレーション本部サービス企画推進室長 冨米野孝徳氏


(株)コルグ 技術開発部 部長 大石耕史氏

ソニー(株) ビデオ&サウンド事業本部 V&S事業開発部 コンテンツソリューション&サービス開発課 統括課長 小室弘行氏

DSDによるライヴストリーミングの企画が生まれた背景には、鮮度を落とさずにコンサートの臨場感を家庭に届けたいという、音楽祭主催者の強い思いがあった。それを実現するため、『東京・春・音楽祭』に協賛してきたIIJがソニーを介してオノセイゲン氏に相談。それなら最高品質が狙えるDSDでやろうという同氏の提案を受け、コルグを含む前記4社共同のプロジェクトチームが誕生した。DSDに深くかかわるオノセイゲン氏を中心に、通信事業とソフトウェア&ハードウェアの各分野をリードするメンバーが揃い、「DSDのドリームチーム」(オノ氏はプロイジェクトをそう表現した)が始動したのだ。

今回のプロジェクトのために集った“DSDドリームチーム”の面々と山之内正氏

エンコーダーや再生ソフトは公開実験のために開発

プロジェクトが具体化するプロセスで、『東京・春・音楽祭』に加え、『デジタル・コンサートホール』でライヴストリーミングの豊富な経験を持つベルリンフィルハーモニー管弦楽団の参加も決まった。最終的には、4月5日の東京文化会館小ホール、4月11日のベルリン・フィルハーモニーという2会場からライヴ配信が行われ、コンサート終了後はそれぞれ期間限定でオンデマンド配信も実施。筆者はそのすべてを実際に体験し、DSDライヴストリーミングの大きな可能性を実感した。

DSDライブストリーミングの配信システム概要

配信の概略は上掲のダイアグラムに詳しい。ステージ上のマイクセッティングからバランス調整まで、収録はオノセイゲン氏を中心にした独自チームが担当。USBオーディオ・インターフェース、エンコーダー及び再生用アプリケーションを主にコルグが受け持ち、再生環境はソニー製品を中心にしたシステムがライブ会場の調整室に用意された。

収録が行われた東京文化会館 小ホール

ホール天井にはDSDライブストリーミング用の録音を行うマイクを設置


マイクで収録した演奏はリアルタイムで上写真の会場内別室に送られ、コルグのDSD対応オーディオインターフェース「MR-0808U」を使ってDSD化される

こちらはDSDをライブストリーミングするための機材。システムの規模自体は非常にコンパクトに収められていた

このなかでエンコーダーのLimeLightと再生ソフトPrimeSeatは今回の公開実験のために開発されたもので、リスナーはPrimeSeatを手持ちのパソコンにダウンロードし、コルグまたはソニー製のUSB-DACを組み合わせることでDSDストリーミングをライヴまたはオンデマンドで再生することができる。インターネット環境は実効速度で12Mbpsが推奨だが、筆者が複数の環境で試したケースでは、それを若干下回る程度でも音が途切れることはなく、2.8MHzはもちろんのこと、上位の5.6MHzでも安定して受信することができた。

DSDライブストリーミングの裏舞台に潜入

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