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岩井喬が徹底レビュー

【連続企画第1回】ティアック「HA-P90SD」 “プレーヤーとしての実力” を検証する

公開日 2015/01/30 11:49 岩井喬
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HA-P90SDの“プレーヤー”としての実力を検証する

ここからは実際にその音質を確認してみよう。ヘッドホンにソニーMDR-1Aを用意し、内蔵プレーヤーからの直接駆動におけるサウンドを確認してみたい。

基本的なサウンドとしては付帯感のない、きめ細やかな音源トレース能力を持っており、澄み切った空間性とハイレゾ再生に必須な微小レベルでの繊細なタッチの再現性の高さが際立つ。

音像表現については適度な肉付きを持たせており、ナチュラルな存在感を引き出してくれる。ヘッドホンの持つ音色傾向をストレートに引き出すため、MDR-1Aの特徴でもある中低域の厚みと高域にかけてのヌケ良い解像感を下敷きにした、リアルさを感じさせつつも耳当たり良いサウンドを聴かせてくれた。

ディスプレイはモノクロで、サイズは2.7インチ。有機ELを採用している

DSD再生品位は上位レベル、コストパフォーマンスは非常に高い

特に印象的だったのがボーカルなどにかけられたリヴァーブ処理の階調性とメイン音像との程良い分離感である。リヴァーブは元々空間の広さや他の楽器の残響音と融和させる役割も果たすので、“分離が良い”というと、そもそもの演出にそぐわない、過剰な誇張表現にも繋がりかねない。しかし本機で聴いた印象はそうした不自然さと距離を置くもので、各楽器との距離感やミックスされた音色の前後感をも正確に描き出してくれるのだ。

音像の定位や位相感など、空間情報の正確な描写性を持つMDR-1Aとの組み合わせで味わうDSD音源の臨場感溢れるサウンドは、DSDネイティブ再生を可能としたハイレゾ対応ポータブルプレーヤーの中でも上位レベルのクオリティである。

イ・ソリスティ・ディ・ペルージャ『ヴィヴァルディ:四季』〜“春”(192kHz/24bit)では、多くのハイレゾプレーヤーとは一線を画すS/Nの高さ、静寂性の高い音場再現力を持つ。演奏の始まる瞬間の空気の動きまでも感じられる自然な描写力に加え、終始落ち着きのある音像表現は、10万円以下という価格を考えると、非常にコストパフォーマンスの高いサウンドといえるだろう。

飛騨高山ヴィルトーゾオーケストラ コンサート2013『プロコフィエフ:古典交響曲』〜“第一楽章”(96kHz/24bit)においては、管弦楽器の艶良く滑らかでハリのある旋律とふくよかで温かみのある豊かなホールの響きが心地良い。余韻の階調の細やかさや低域の弾力感のバランスも良く、楽器の定位も鮮明だ。残響の自然さはハイレゾらしい微細レベルでの再現性の高さが反映されているようである。

オスカー・ピーターソン・トリオ『プリーズ・リクエスト』〜“ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー”(CDリッピング:44.1kHz/16bit・WAV)ではピアノのまろやかで軽快なアタック感とウッドベースのむっちりとした胴鳴りの豊かさ、誇張のないリアルな皮の感触を感じさせるドラムセットの自然な佇まいを感じることができた。各々の音色はにじみなく伸びやかに放たれ、抑揚良く空間で融合する。

デイヴ・メニケッティ『メニケッティ』〜“メッシン・ウィズ・ミスター・ビッグ”(CDリッピング:44.1kHz/16bit)は、ベースの力強い旋律とドラムセットの有機的で伸び良いアタックの質感を丁寧にトレース。シンバルの響きもナチュラルで厚みがある。主軸となるエレキのディストーションサウンドも密度と厚みがあり、ピッキングのキレも良い。ボーカルは骨太で口元のエッジ感もすっきりと表現。アナログライクで大人びたサウンドだ。

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