HOME > レビュー > RGB-LED光源採用のオプトマ旗艦DLPプロジェクター「HD90」を鴻池賢三がチェック

LED光源によるカラーホイールレス構造のクオリティは?

RGB-LED光源採用のオプトマ旗艦DLPプロジェクター「HD90」を鴻池賢三がチェック

2014/12/24 鴻池賢三
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

■視聴インプレッション

電源を投入すると、流石にLEDだけあって輝度面での立ち上がりは俊敏。システムの起動を待つ数秒の間に、映像は安定する。

真っ先にカラーブレーキングの具合をチェック。ゼロではないが、かなり目立ちにくいのは事実だ。BD映画「オブリビオン」のチャプター14で、湖畔のロッジが暗闇に包まれるシーン。一般的なカラーホイールを持つDLPプロジェクターは、暗闇に点在する明かりに強いカラーブレーキングを感じるが、本機の場合は皆無だった。一方、白線が画面左右一杯に広がるような図柄では、RGBの原色が明滅するような、カラーホイールタイプとまた異なったカラーブレーキングを感じた。いずれにせよ、カラーホイールタイプのように、虹のような模様が見えてしまう場面は見つからなかった。

映像モードは、シネマ、映画、参照(リファレンス)、ほか、豊富に用意されている。

シネマは非常に色鮮やかで、業務用の色彩輝度計「コニカミノルタ CS-200」と測定ソフトウェア「CalMAN5 Ultimate」を用いて測定してみると、ちょうど映画館の色域規格であるDCI基準に沿っていることが確認できた。LED光源ならではの広色域を引き出しつつ、きちんとコントロールされていることが判る。作品によっては、本機のシネマモードを利用すれば、映画館さながらのビビッドな色彩美を楽しむことができるだろう。

業務用の色彩輝度計「コニカミノルタ CS-200」と測定ソフトウェア「CalMAN5 Ultimate」を用いて測定

「シネマ」モードの色域測定結果。白い四角の枠がDCIの基準点を、各色の丸い点が測定結果を示している。RGBの3点がほぼピッタリとDCI基準に沿っていることから、きちんとコントロールされていることが判る。シアンとマゼンタがB(青)に寄っているのは、色温度と関係しているためで、問題はない。

筆者的には、「参照」モードの映像が気に入った。色彩がナチュラルで透明感も良好。LEDの特性を、ピュアな発色と中間色の豊かな表現に繋げている点で好感が持てる。BD映画「オブリビオン」は、多くの場面で淡いブルーのトーンが印象的だが、オリジナルの繊細なニュアンスを保ちつつ、すっきりと見通しが効く。因みに測定結果を見ると、色域はブルーレイ(HDTV)の制作基準であるRec.709に沿い、色温度は少し高めだが、グレースケールは暗部から明部まで安定しているのが判る。

「参照」モードの色域測定結果。白い四角の枠がRec.709の基準点を、各色の丸い点が測定結果を示している。RGBの3点がRec.709基準に沿っていることから、Rec.709をターゲットにしているものと判る。

「参照」モードのグレースケール(上段)とガンマ(下段)の測定結果。 グレースケールを見ると、色温度が基準の6500Kよりも少し高めの7000K程度だが、±500K程度は許容誤差範囲内なので心配不要。また、この測定値には、スクリーンの色味も含まれているので、目安程度に考えて欲しい。ポイントは、暗部から明部まで色温度が一定な点で、非常に高精度に整えられている。この特性は、明暗のグラデーションによる立体表現に長けていることを示す。 ガンマは黄色の曲線が2.2で、グレーが実測値。概ね2.2をターゲットに、精度良く整えられている事が分かる。

なお、画質については、調整項目が非常に豊富なのも興味深い。ユーザーがアクセスし易いプリセットでも、ガンマは、「映画」、「ビデオ」、「グラフィック」と、1.8〜2.6まで0.1刻みで選択可能と、合計12種類から選べる。

オプトマ独自の映像エンジンは、本機のLED化に伴って「ピュアエンジン IV」に刷新され、「ウルトラディテール」「スーパーピュアモーション」「ピュアカラー」の映像処理技術が進化したという。「ウルトラディテール」は、設定「UltraDetail HD+」を適用すると、登場人物の瞳の輝き感がアップし、小さく映る人間の表情も高精細に表示するなど、超解像的な効果が確認できた。

画質調整メニュー

UltraDetailメニュー

■さいごに

LED自体の進化も背景にあるが、本機は一般家庭に導入できる映像の明るさと価格を実現した点で画期的だ。LED光源によるDLPプロジェクターが、既存の透過型液晶、反射型液晶(LCoS)、カラーホイールを有するDLPプロジェクターと並ぶ選択肢になる時代に突入したと言える。今回、実際に製品に触れてみて、コンパクトさ、発熱の少なさにも、プロジェクターの新時代を感じた。

また、筆者が推進する映像キャリブレーションにおいて、本機は、調整操作に対して画面の反映が素直で、作業がし易かった。これもLED光原の恩恵だろう。掲載の測定値には若干、基準から外れている部分も見受けられたが、スクリーンの色味も含めてしっかりキャリブレーションを行えば、精度良く整えられる。原画忠実派のホームシアターファンおよび、制作スタジオなどの業務用途でも注目の1台だ。

(鴻池賢三)

前へ 1 2

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE