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【特別企画】

パイオニア「BDP-LX88」1万字レビュー − 最高峰モデルの画質・音質を貝山知弘が徹底分析

公開日 2014/12/22 12:12 貝山知弘
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BDで聴くオーケストラのサウンド

音楽ソフトのBDで真っ先に選んだのは、小澤征爾指揮のベルリン・フィルハーモニー管弦楽団が演奏したチャイコフスキー/交響曲第6番ロ短調「悲愴」だ。これは2008年に発売されたBDだが、現在でもこれを超える音質のディスクはない。ベルリンにあるフィルハーモニー大ホールでの収録である(NHKエンタープライズ NSBS-12133)。

チャイコフスキー:交響曲第6番「悲愴」/小澤征爾 指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

これは2008年に発売されたBDだが、現在でもこれを超える音質のディスクはないのでリファレンスにしている。ステレオ・トラック、5.0chマルチチャンネル・トラックともにリニアPCM 96kHz24bitでの収録。CDをはるかに超えるハイスペックでの収録で、小澤が得意とする曲だけに演奏も素晴らしい。映像はハイビジョン(2K)の収録だが、解像度、鮮明度が高く、指揮者の身振りと演奏のあやを的確に画面に配した映像だ。

まずステレオ2chの音声を聴いてみた。BDP-LX88には2ch再生専用の音声出力端子があることは前述したが、これを使えばBDのステレオ音声の再生もできるので、これを使用した。従ってプリアンプ以降の再生機器もCD再生と変わりない。

冒頭から透明感に満ちたクリアなサウンドが流れだす。第1楽章はアダージョの序奏から始まるが、コントラバスがpp(ピアニッシモ)で重音を弾きだしそこにファゴットの低音がうめくようなメロディーを奏で他の楽器がそれに続いて暗く重い音が続いていく。人間のダークサイド寄りのさまざまな感情 − 苦悩や恐怖、そして不安やあせりを感じさせる導入部だが、細部までクリアな音でさまざまな楽器の個性がはっきりと掴める。映像があることが邪魔にならず、むしろ、曲の構成がはっきりと判る爽快さがある。指揮者とオーケストラの関わり合いがよく判る画面編集も見事である。

楽器の音色が弱音でもクリアに聞こえる解像度の高さも抜群だ。96kHz/24bitの音声の心地よさは、一連の音の流れを聴いているとよく判る。CDより勝るのは個々の緻密な音表現でもあるが、切れ目なく流れる音の佇まいだ。これはアナログディスクの自然さにも通じるところだが、サンプリンク周波数が高いほど自然な音に近づくことはハイレゾの世界にも通じる特徴である。曲がアンダンテに変わり、弦が哀切を感じさせる美しいメロディを奏し、そこに断片的に舞踏のリズムや木管の軽妙な響きが現れる回想的な表現では、クラリネットやファゴットの美しい弱音にハッとなる。

第3楽章と切れ目なく演奏される終楽章は、繰り返し聴いた。最初は分析的に聴き、次には感性を全開して聴いたのだ。最終楽章へのダイレクトなつながりを聴いた時には涙があふれた。アダージョ、ラメントーソという表記に相応しい哀切の響きだ。悲しみが自然と襲ったのには2つの理由が考えられる。一つは再生システムの音質の向上であり、もう一つは映像の画質の向上だ。音だけで聴いても、小澤渾身の指揮に応じた楽員たちの緊張が導き出した演奏であることは想像できるが。スクリーンに映し出された映像からは、小澤征爾がこの曲に対する深い洞察とその表現を余すところなく表出し、演奏者がそれをどのように受け取ったかがまるで眼前のリアルな出来事のように見えたのだ。ここで体感できたのは小澤の指揮と演奏者の以心伝心の情景である。

5.0chのマルチチャンネル再生では、前記のように再生システムを変えている。BDP-LX88にはアナログ音声出力はなくアンプとの接続はHDMIケーブルで行なうことになる。そして接続するアンプも変わるので、ステレオ再生と同じ音質にはならない。マルチチャンネル再生の重要なポイントは音場の立体的再現だから、音質の評価もステレオ再生とは異なったものとなる。現在《ボワ・ノワール》のマルチチャンネルシステムは5.1chを基準としている。私のマルチチャンネルに対する基本的な考えでは、同一スピーカーを使用するということを第一に考えている。スピーカーの数をいたずらに増やすより、同じスピーカーで音色を整えることが重要だと思っているのだ。

5.0chシステムで再生した小澤/ベルリンフィルの演奏は、各チャンネルの音色が整ったサラウンド再生の魅力が満喫できる。編成の大きなオーケストラの再生では、この方法がいかに正しいかが判る。もともとスピーカーの数を増やしたマルチチャンネル再生は、映画の場合には独自の効果が表出できるが、生を基準としたクラシック音楽の再生では音色の一貫性の方が重要なのだ。解像度に関してはステレオ再生が上だが、音場のリアリティではこちらが優れている。BDP-LX88で聴くベルリンフィルの演奏は解像度という視点でもステレオ再生と比較しても大きな差は出ていない。リニアPCM、96kHz/24bitの優位性はそのまま音に現れていると言い切っていい。

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