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【特別企画】

パイオニア「BDP-LX88」1万字レビュー − 最高峰モデルの画質・音質を貝山知弘が徹底分析

公開日 2014/12/22 12:12 貝山知弘
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試聴レポート

試聴は自宅の試視聴部屋《ボワ・ノワール》で行った。外光を遮断した16畳の部屋だ。使用した機器は次の通りだ。

〔映像系機器〕
4Kプロジェクター:ソニー VPL-VW1100ES
スクリーン:OS ピュアマット III
HDMIケーブル:MONSTER ULTIMATE HighSpeed HDMI

〔5.1ch用再生機器〕
AVプリアンプ:ヤマハ CX-A5000
パワーアンプ:(フロント)アキュフェーズ A-200×2
       (センター)P-6000、サラウンド(P-4100)
スピーカー:フォステクス G2000A×5
サブウーファー:エクリプス TD725SW

〔2ch再生〕
SACD/CDプレーヤー:アキュフェーズ DP-900+DA901
プリアンプ:アキュフェーズ C-3800
パワーアンプ:アキュフェーズ A-200×2
スピーカー:フォステクス G2000A×2

SACD/CDの試聴結果:ピュアオーディオ機器と拮抗するサウンド

BDP-LX88は、BDだけでなくSACD、CDなどの再生が可能なユニバーサル・プレーヤーだ。このクラスのプレーヤーを選ぶ人の多くはすでに本格的なステレオ再生システムを所持していると想像できるが、CDやSACDの再生において、もし本機の音質が現用のプレーヤーを上回ることがあれば、これに越したことはないはずだ。普通に考えれば、高級なBDプレーヤーで再生する音質は同価格帯のSACD/CD専用機を超えることはないと考えがちだが、最新の製品ではその常識が覆ることもありうる。BDP-LX88のように、最高レベルの高性能DACを搭載し、剛体構造に徹したプレーヤーならば、同価格帯のピュアオーディオのプレーヤーを超える音質が得られることがあるのは十分考えられるからだ。音声はBDP-LX88の2ch出力端子からXLRケーブルでC-3800に入力している。

私の試聴では定番となっているショスタコーヴィチ/交響曲第5番全曲を聴く。アレクセーエフ盤、スクロヴァチェフスキ盤、テミルカーノフ盤などを愛聴しているが、まずニコライ・アレクセーエフ指揮、アーネム・フィルハーモニー管弦楽団の演奏を収録したSACDシングルレイヤー盤を聴いた(EXTON OVGL-00017)。

ショスタコーヴィチ:交響曲第5番、室内交響曲/ニコライ・アレクセーエフ(指揮) アーネム・フィルハーモニー管弦楽団

第1楽章ではテンションの高い弦楽器群の演奏が聴ける。特に1分31秒からの高弦の響きが難関だ。オーバーレベルな録音ではないかと思われるほどの張りつめた高弦の響きが聴けるのだが、たいていの再生システムでは、ここで音が僅かに濁る現象が起きるのだ。しかし、驚いたことにこの日の再生ではその濁りが耳につかなかった。張りつめた音であることは変わらないが、違和感は感じられない。

第2楽章の冒頭では充実した低音域の響きが聴ける。力感と量感のバランスがよく、どちらにも偏っていない。ローエンド方向の伸びは、わたしのリファレンス機(アキュフェーズDP-900+DC-901)と比べるとやや沈み込みが浅いが、価格差を考えれば納得できる範囲で違和感は全くない。高・低音のバランスは整っており、低音の不足感はない。第4楽章でのティンパニーの強打の連発でも、同じ結果が得られている。

続けて、デノンから発売されたCDで、スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮の読売交響楽団の演奏を聴いた。これはアレクセーエフ盤とは異なる解釈の演奏であり、録音だ。この盤で目立つのは低音楽器の力感と量感に満ちたサウンド。第1楽章では、コントラバスの響きが浮き上がるフレーズがあるが、テミルカーノフ盤では、コントラバスの響きはあくまでも全奏の中で聴こえている。冒頭から力強い低音の響きが聴ける第2楽章では、低音域の量感の豊かさが目立つ。力感にも満ちているが、どちらかと言えば量的な豊かさ際立つ低音だ。第4楽章のティンパニー強音の連打は壮烈そのもの。第1楽章のコントラバスを聴いた時には、やり過ぎじゃないかと思ったが、このバランスに慣れてくると、スクロヴァチェフスキの意図が判る気がしてきた。曲全体を覆うのは暗い時代の影だが、低音域の凄まじさは単に暗い時代の表現ではなく、抑圧された時代の恐怖の表現ではないかと推測したりした。では「勝利の凱歌」とも呼ばれる第4楽章のティンパニーの連打は? との自問自答では、「これは諧謔の表現」ではないかという解釈も成り立つのではないか。

2枚のディスクを続けて聴いて音質的に判ったのは、低音の力感と量感のバランスと、低音の表情の差である。テミルカーノフ盤では、高・低音のバランスが整った力強く締まりのある低音が聴けたし、スクロヴァチェフスキ盤では力感と量感が両立した迫力ある低音の響きが聴けた。このように性格の違う低音を描き分けるには再生システムを構成する個々の機器の電源が充実し、しかも低音の解像度が高くないと得られぬものである。音の再生で最も影響が強いのは音の入り口とも言えるプレーヤーだが、BDP-LX88の低音再現能力は高度なシステムの冒頭を飾る機器に相応しい能力を備えていると言える。

最新のCDからはヴァイオリニスト戸田弥生とピアニスト、アブデル=ラーマン・エル=パシャの合奏を聴いた(EXTON OVCL-00555)。このディスクはフランクのヴァイオリン・ソナタとシューマンのソナタ第2番がカップリングされているが、今回聴いたのはシューマンの方だ。

フランク:ヴァイオリン・ソナタ、シューマン:ヴァイオリン・ソナタ 第2番/戸田弥生(ヴァイオリン)、アブデル=ラーマン・エル=バシャ(ピアノ)

これは再生機の能力がもろに表出される厳しいディスクである。少しでも歪みのあるプレーヤーで再生するとヴァイオリンの滑らかな響きが付帯音で汚れてしまうからだ。しかし、BDP-LX88で再生した今回の試聴では、そうした付帯音が皆無で、美しく力強いヴァイオリンと、それにも増して力強いピアノの二重奏が聴けた。適度な倍音が乗り、滑らかに上昇思考の主題を繰り返す戸田のヴァイオリンの響きは流麗そのものである。

この曲に対しては憂鬱だという批評もあったらしいが、この演奏を聴けば妻クララとともにシューマンの生に向かう力強い表現を端的に表出していることが判る。わたしが聴いている音量は、かなり大きい。ヴァイオリンとピアノがこれだけ強い音で合奏しても歪まないディスクは数少ないが、それは再生機器にも言えることだ。これはBDP-LX88の歪みの少なさを改めて実感した試聴であった。

CDとSACD再生で実証したBDP-LX88のサウンドは、同価格のピュアオーディオ機器と拮抗し、時にそれを上回るサウンドであることが明らかになった。その原因を推測してみれば、本機の頑強な構造と、電源の充実、そして高品位のDACとその使い方にあるのは明らかだ。本機が搭載しているDACはESS社の最高モデル SABRE 32 Reference(ES9018S)で、世界のハイエンド機器で採用されているものだ。8ch分のDACが内蔵されているが、ステレオ再生時には、左右チャンネルに4個ずつを並列使用する手段が採られている。これはデジタル信号からアナログ信号に変換する際の誤差を少なくできる賢い方法である。

DACはESS 9018を4chパラレルで使用。基板も音質検証の末、青色のものを採用したとのことだ。

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