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【特別企画】小さなハイエンド“ハイレゾ7”の実力を山之内正が検証 

クリプトン「KS-7HQM」レビュー:最新デジタル技術搭載の最上位・ハイレゾ対応アクティブスピーカー

2014/12/02 山之内正
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FPGAによるDSPを採用した独自開発のデジタルアンプを搭載

さて、KS-7HQMを推薦する3番目にして最大の理由はハイレゾ音源に照準を合わせたこだわりの数々である。特に、フルデジタルにこだわって信号伝送と増幅回路の純度を高めたことは見逃せないポイントだ。デジタルアンプの音質改善には適切なノイズ対策が不可欠だが、本機はFPGA上でDSPを構成し、最適なノイズシェービングのアルゴリズムを導入。サンプリング周波数の高いハイレゾ音源でも折り返し歪みの影響を最小限に抑えることができる。

USB入力からアンプ部への回路イメージ。FPGAによるDSP、デジタルクロスオーバーネットワークを含む総合160Wのフルデジタルバイアンプを搭載する

このDSPはチャンネルデバイダー機能も担っており、デジタルならではの優れたフィルター特性を実現している。入力からデジタルアンプの出力に至るプロセスをフルデジタル化し、ここまで音質にこだわる手法は、デスクトップ仕様のアンプ内蔵スピーカーでは異例のことと言える。

ハイレゾ再生を追求したユニット構成

ハイレゾ音源にふさわしい再生帯域を実現するために、2ウェイ構成を選んでいることも特筆に値する。特に高域はリングダイアフラム・トゥイーターを採用することで60KHzまで再生レンジを広げており、ハイレゾ再生機器が満たすべき条件とされる40kHzを大きく上回っているのだ。

KS-7MQMの内部構成。コンパクトな筐体の中でバスレフダクトの長さを確保するために、屈曲させたダクト(フォールデッドダクト)が採用されている

デジタルアンプは各ユニットを独立して駆動するためにチャンネルあたり2回路搭載しており、左右合わせて4基のデジタルアンプを積む。ちなみにアンプ回路はすべて右側のスピーカー下部に内蔵するが、基板が小さいので左右の重量にはそれほど大きな違いはない。キャビネットが小さいので内容積は最小限だが、そのスペースを有効に利用するために屈曲させたバスレフダクト(フォールデッドダクト)を採用するなど、凝った手法も採り入れた。カット写真を見れば、ユニットや回路基板との位置関係など工夫の様子がよくわかる。

実際に採用されたフォールデッドダクト。このダクトをはじめ、多くのパーツが本機のために新規におこされた

精度の高い定位と音楽の躍動感をストレートに伝える低域再現

KS-7HQMのUSB入力にパソコンをつなぎ、音を聴いてみよう。奥行き80cmの机の上にパソコンと並べると、椅子に座った状態で耳からスピーカーの距離が1m強になる。左右の間隔をそれよりやや狭い程度に調整すると、中央に明瞭なステレオイメージが浮かび上がった。特にボーカルの音像は期待以上の精度の高さで定位し、輪郭のにじみやブレがないことに感心する。ベースがボーカルを上回る音圧で鳴っているのに声が澄んでいるのは、低音の制動が効いているためだろう。もしもアルミを使っていなかったら、キャビネットがブルブルと共振して低音がふくらみ、声の帯域にかぶってしまうはずだ。

音元出版の試聴室にてKS-7HQMを試聴。クリプトンのスピーカースタンド「SD-1」に設置した

低音を適切に制動すると量感が不足するのではと思いがちだが、実際はその考えは間違っている。制動が効かない低音は立ち上がりも立ち下がりも曖昧になってしまい、アタックもなまる。一方、素早く立ち上がる低音は楽器本来の音色を再現し、音の到達力も優れている。消えるときも余分な音を残さないので、リズムの特徴がしっかり伝わるのだ。KS-7HQMの低音は明らかに後者の性質を示し、音楽の躍動感をストレートに伝える素直さがある。パット・メセニーの『KIN』(96kHz/24bit FLAC)を聴くと、ベースとパーカッションのリズムがタイトでアグレッシブなことに気付くはずだ。優れたハイレゾ音源は音の立ち上がりなど過渡特性がCDよりも正確なので、再生機の条件さえ整えば、反応の良い低音を引き出しやすいメリットがある。

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