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<山本敦のAV進化論 第33回>

オーディオテクニカの“フルデジタル”ヘッドホン「ATH-DN1000USB」開発者インタビュー&音質レポート

公開日 2014/11/26 12:09 山本 敦
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Dnoteの基幹システムは一つのICチップに統合されている。PCからUSB経由で受けたオーディオ信号がDnoteのチップを経て、そこからフルデジタルの信号をドライバーユニットに送り出す部分を築比地氏が担当している。

「PCMのデジタル信号を受けて、独自の変調方式によってデジタル信号に再変調する処理をDnoteのICチップが行います。ボイスコイルは片方のチャンネルに4つずつ搭載されていて、それぞれに+極とー極があります。1つのコイルに対して+1/0/-1の値があって、振動板を“押す力が+1”だとすれば“引く力が-1”、“何も動いていない状態が0”になります。これが4つのボイスコイルごとにあるので、合わせて+4から-4まで9つの値で変化します。例えば“0011は+2”、“1111が+4”、“-1-1-1-1が-4”という具合です。これを正弦波の波形に例えれば、+4が波形の上弦、-4が下弦になります」。

ヘッドホンの内部構造。左から5番目のレイヤー、小さめのサークル状のパーツが53mm口径のドライバーとマルチボイスコイルになる

Dnoteのチップ内ではマルチビットのデルタシグマ変調処理を行って、「0/1」の複数のデジタル信号が直接ドライバーユニットのマイルボイスコイルに伝わって振動を発生させる仕組みだ。築比地氏はさらに説明をつなぐ。

「データの粗密で信号を表している部分はDSDに近い概念なのですが、DSDの量子化ビット数は1ビットだけで、周波数の動作クロックを上げながら粗密の濃さを速い周波数で再現することで解像度を高める仕組みです。

一方、Dnoteの場合はクロックジッターの問題など、現実的なところに落とし込んでいくと周波数を上げていくのにも限界があるという考え方から、1ビットでなくマルチビットで“振幅の方向”にもビットを増やしていく考え方を採っています。周波数はある程度のスピードにとどめておいて、あとはマルチビット方向で解像度を再現するというアプローチです。DSDと一部が似てはいるものの、ビット方向と粗密の両面で変調を行う“マルチビットデルタシグマ”ならではの仕組みです」(築比地氏)。

では、マルチボイスコイルは片側チャンネルに4つという仕様がベストなのだろうか。「4つでなければダメということはありません。他社のものでは左右3つずつ、計6つという仕様もあるようです。本機で採用している片側4つという仕様が、Dnoteの性能をフルに活かせるものになっています。コイルの数が減ってくると、CDでいうところの量子化誤差につながり、そこをアコースティックの側で調整しながらカバーすることになります」(築比地氏)。

最終的にオーディオテクニカのヘッドホンに組み込んで量産化するために、技術的な完成度の高さを考慮した場合、ICチップのコスト面などの条件までクリアできた技術がDnoteだったことが、採用の決め手だったと高橋氏は経緯を明かしてくれた。


■オーディオテクニカが誇るアナログ部分の音づくり

デジタル信号の処理部分はDnoteのICに依存するところだが、ボイスコイル以降のアナログ段からの「ヘッドホンの音」をつくりこむノウハウには、ヘッドホンを発売してから今年で40周年を迎えたオーディオテクニカの叡智が詰まっている。

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