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連載<第四回>

藤岡誠のオーディオワンショット - MCカートリッジのバランス伝送・昇圧方式への誘い<その1>

2014/10/31 藤岡誠
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「MCカートリッジ出力のバランス伝送・昇圧(増幅)方式」を提案する

とにかく、昔から現在に至るまで、MCカートリッジに襲いかかっているこの種の大敵影響に真正面から取り組もうというのが、「MCカートリッジ出力のバランス伝送・昇圧(増幅)方式」の提案である。これから数回にわたってここでも提案し、他誌においても様々なかたちでアプローチしていくことになる。

「カートリッジを自由に交換できる」という特徴が、MC型カートリッジの可能性を狭めていたという側面は否定できない

本来なら同方式はCD方式の登場(1982年)以前、個人的にはアナログオーディオの全盛期ともいうべき1970年〜1975年頃には広く普及させるべき技法だったと深く後悔しているが、今となっては仕方がない。遅きに失した感はあるが、私は反省の意味を込めながら、これまでほとんどアプローチされなかった同方式を強力にサポートしていく。幸いにかつてよりもそのための環境が少しずつ整い始めたし、今後さらに様々な部材が展開される予定だから特にMCカートリッジを愛好されている方たちは楽しみにしてほしい。

実は、9月に開催された「2014東京インターナショナルオーディオショウ」で、私が担当した幾つかのブースで必要な機器や部材を自宅から持ち込んで、同方式を簡単な解説を交えながら従来からのアンバランス伝送と比較試聴を行った。行ったブースは高級機器専門のメーカー、ブランド、輸入商社ばかりだから来場者もオーディオファイル? が多いように見えたが、ほとんどの方が同方式に接するのは初体験だった。

デモ終了後、従来方式とのあまりの相違に驚いたようだった。具体的には、圧倒的な高SN比とステージイメージ(空間再現性と定位)ゆえに、「凄い!」「感動した!」「すぐ挑戦したい」といった反応があった。“すぐ挑戦したい”と感想を述べた方は定年退職されており、長年愛用していた某社のプレーヤーが昨年に修理不能となり、先頃ラックスマンのPD-171ALを購入。大切に保管していたSAECのトーンアームを取りつけて現用中とのことで、カートリッジはMC型専門でオルトフォン×2、デノン×2、オーディオテクニカなど使って楽しんでいるという。

様々なトーンアームやカートリッジを交換して楽しんでいるオーディオファイルは多い。次回以降は、MCカートリッジ出力のバランス伝送・昇圧(増幅)方式について具体的に紹介していく。

「トーンアームは何をお使いですか?」と問うと、即座に「SAECのWE-308です」と返ってきた。お手持ちのカートリッジ、SAECのアームとくればかなりのベテランであることは明白。私は、「すぐに実行するのもいいけれど年内は様子を見て、来年度のテーマにしておいた方がグレードアップの環境としていいかも知れない」とも告げておいた。

というわけで、これから何回かにわたって、MCカートリッジ出力のバランス伝送・昇圧(増幅)方式へのお誘いをするが、あまりディープ方向には向かわず、誰もが同方式に挑戦できるよう解り易く提案していこうと思っている。



【筆者プロフィール】
<藤岡 誠>
大学在学中からオーディオ専門誌への執筆をはじめ、50年を越える執筆歴を持つ大ベテラン。低周波から高周波まで、管球アンプからデジタルまで、まさに博覧強記。海外のオーディオショーに毎年足を運び、最新情報をいち早く集めるオーディオ界の「百科事典」的存在である。歯に衣を着せず、見識あふれる評論に多くの支持者を得ている。各種の蘭の他、山野草の栽培も長年に亘る。

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