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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第94回】俺はいま…4Kを超える! 5K=5,000円前後イヤホン7機種一気聴き!

公開日 2014/08/08 15:07 高橋敦
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■Shure「SE112」(実売目安:5,370円)


シュアーの魅力を凝縮したニューエントリー

ユニバーサル型イヤーモニターの分野のトップブランドのひとつであるシュアー。そのラインナップに新たに追加されたのがこの5K価格帯のダイナミック型モデルだ。同社の既存上位モデルと比べると、「ケーブルが着脱式でない」「フォームイヤーパッド(いわゆる弾丸)が付属しない」といったところには、コスト削減が見て取れる。

しかし「ケーブルが着脱式でない」点については、イヤホン本体側のケーブル接合部に断線防止アッセンブリーを組み込み、反対側のプラグ部分は見たところハイエンドモデルと共通の頑丈そうなものを採用。またそもそも5,000円なので「リケーブルするよりも買い替えた方が安い」のだ。SEシリーズ用の同社純正交換ケーブルは8,020円する。

「フォームイヤーパッド(いわゆる弾丸)が付属しない」のは残念だが、しかし付属する一般的なシリコン製のソフトフレックスイヤーパッドを使っても、このイヤホンの遮音性は十分に優秀。ハウジングの形状、ハウジング内部のアコースティックシール等、イヤホン全体で遮音性を向上させているからだろう。

音質は、同社のひとつ上の価格帯の「SE215」がダイナミック型の厚みや迫力を特に生かした方向性なのに対して、こちらはすっきりとした抜けやバランスといった要素を生かす方向性。例えばリズムのバランスで言えば、SE215はベースのどっしりとしたグルーブが強めなのに対して、SE112はギターのカッティングの軽やかさが際立つ。といってもそれは「SE215と比べれば」という話であって、SE112単体で聴けば低音が特に弱いというわけではない。バランス良好だ。後発最新モデルだけあってさすがの魅力を放つ。


■JVC「HA-FXT90」(実売目安:5,520円)


00ファン感涙のツインシステムユニット

2011年春の発売なので、流れの速いこの分野においては「古っ!」という感じかもしれないが、当時1万円だったものがいまや5,000円で買えるのもそのおかげだ。

2008年発売「HP-FXC」シリーズ用に開発された5.8mm径「マイクロHDユニット」を受け、「この小ささならイヤホンに2基搭載できるんじゃね?」的な発想で開発されたと思われる「ツインシステムユニット」が最大の特長。中高音再生用と低音再生用のドライバーを並列配置してある。両ドライバーに送り出す信号はネットワーク回路で高域と低域に「分離をしておらず」、両ドライバーには同じ信号が送り込まれている。ドライバーの特性の違いで高域と低域を鳴らし分けつつ、重なる帯域はそれはそれとして生かして音の厚みを稼ぐ狙いだ。

なおドライバーごとの特性の違いは、中高音域ドライバーの振動板はカーボンナノチューブをウェットコーティングしたPET素材、低音域用ドライバーの振動板はカーボン素材といった根本的なところから始まり、入念なチューニングによって調整されている。

実際の音の印象としては、ATH-CKN70のところでも述べた「小口径ダイナミック型ならではの迫力のある切れ味の鋭さ」を生かしつつ、さらに「ツイン構成ならではの中低域の厚み」が加わるといったところ。シャープ&ソリッド傾向でびしっとがっしりしているところに、ベースやドラムスの厚みや骨太さも備える。中低音のポイントとしては特に、小口径らしいタイトさは保ったままに充実しているということを挙げておきたい。大口径ドライバーでの低音の充実とは傾向が異なり、これはなかなか見事。独特な技術やそれを見て取れるルックスもあり、いまだ古くないような、いやちょっと古くさい感じが逆によいような、面白いモデルだ。

次ページ次はTDK「TH-PVEC600WH」とAKG「K323XS」

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