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4名の評論家が週替わりでオーディオを語る

岩井喬のオーディオスクランブル【第1回】ソニー「PCM-D100」と真空管アンプでDSDの魅力を引き出す

公開日 2014/07/28 10:15 岩井 喬
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■PCM-D100に組み合わせたのは自作の真空管アンプ

ここまでの流れから行くとヘッドホン再生によるサウンドレポートとなりそうな勢いであるが、今回は少し趣向を変え、DSDの持つ伸び良く空間性豊かなサウンドを直熱3極管シングルアンプと小型スピーカーで楽しんでみたいと思う。

10年ほど前に自作した45シングルパワーアンプは、ウェスタン・エレクトリック「WE91B」をベースに設計している

用意したアンプは、10年ほど前に自作した45シングルパワーアンプだ。これはウェスタン・エレクトリック「WE91B」をベースとした設計で、初段は77、整流管は80、AC点火という古典的な構成だ。パーツもA&Bソリッド抵抗、スプラグ・ビタQオイルコンデンサー、ウェスタン・エレクトリック内部配線材などのヴィンテージものを用いている。スピーカーシステムは、リーズナブルな価格ながら充実した仕様を持つコンパクト・ブックシェルフ、パイオニア「S-CN301-LR」である。

PCM-D100のライン出力からステレオミニ-RCAケーブル、SUPRA「BiLine MP」を使いアンプに接続。パワーアンプといっても入力部にボリュームを入れた構成になるので、ラインレベルを直接入力できる。ただ問題なのはS-CN301-LRの81dBという能率の低さだ。

■出力の低い真空管アンプにあえて低能率スピーカーを組み合わせた理由

45という出力管は2A3や300Bの祖先ともいえる直熱3極管で、アンプ作りの巨匠をして“管球アンプは45に始まり45に終わる”と言わしめた銘球でもある。しかしシングルアンプの場合、絞り出せても2Wがやっとという小出力な点がネックなのだ。とはいえ45の素晴らしさは、2A3や300Bよりも質感表現が豊かで、非常に鮮明かつ素直な音色を持っていることであり、プッシュプル方式で大出力化して使うとそのメリットが薄まってしまうと考え、出力には目をつむっていたのである。

出力の低さにはあえて目をつむり、銘球“45”を出力管に用いている

さらに加えるなら、このアンプはゲインが低いため、なおさら出力は低く感じられてしまう。しかしこれにも理由があり、オリジナルのWE91Bは5極管の310A/Bが2本使われているのだが、サウンドバランスの点でさらりとした爽快な直熱3極管である45のテイストに対し、こってりとした濃密な5極管のテイストを2本構成としてしまうと、その方向にトータルのサウンドも引きずられてしまうため、初段は77を1本だけにしたのだ。さらにカソードのバイパスコンデンサーもできる限り容量を低く抑え、コンデンサーそのものの音色が影響しないようなつくりとなっているため、感度も上げられない。つまり、どういうことかを端的にまとめると、この自作した45アンプは低能率なスピーカーには不釣り合いな構成なのだ。

次ページスピーカーにはパイオニアの隠れた銘機を組み合わせた

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