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4名の評論家が週替わりでオーディオを語る

岩井喬のオーディオスクランブル【第1回】ソニー「PCM-D100」と真空管アンプでDSDの魅力を引き出す

公開日 2014/07/28 10:15 岩井 喬
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しかし、PCM-D100は電源投入から再生画面が立ち上がるまで5秒ほどで済む。ジャケット表示などの装飾性は全くないものの、聴きたいファイルを直接選んで(再生中も楽曲選択が可能)ダイレクトかつ直観的に操作できる点も良い。こうしたポイントは元来録音機であるので、一瞬の音を捉えるために必要なスペックであり、そのことが再生に対して有効に作用しているのに過ぎない。しかしながらFLAC再生や2倍、4倍のアップサンプリング再生といった機能性を見る限り、開発当初からプレーヤーとしても遜色のないものにしようと奮闘したであろう開発陣の意気込みがひしひしと伝わってくる。

ハンディレコーダーならではの操作性が、PCM-D100を音楽再生機として使うときにも生きてくる

またDSDネイティブ再生や192kHz/24bit音源などのハイレゾソースは再生機のCPUやDSPへの負担が大きく、動作が安定しなかったり、サウンドが細くなってしまうなどのウィークポイントもはらんでおり、ハイレゾプレーヤーの中にはこうした点が問題となって理想的な原音再生ができていないケースも見受けられた。しかし汎用OSへの依存もなくDSDを録再できる本機であれば、そうした動作の不安定要素を一切省くことができ、DSDを含むハイレゾ音源の理想的な再生が可能となるのだ。

■強力なヘッドホンアンプ用電源部にも注目したい

さらにもう一つ、ヘッドホン再生においてPCM-D100が優れているのが強力なヘッドホンアンプ用電源部だ。330,000μFという大容量かつ超低インピーダンスの平滑用電気2重層コンデンサーを用いており、瞬間的に大電流を流すこともできる上、安定度の高い電源供給を可能としている。アンプそのものも強力で、100Ω程度のインピーダンスを持つヘッドホンでも難なく鳴ってしまう。イヤホンであれば音量ボリュームの“2”くらいの位置で十分な音量を得られる。光デジタル入出力(192kHz/24bitまで・DSD非対応)を備えるので、外部DAC+ポータブルアンプを使っての再生も可能だ。

こうした仕様について、本機発売前から開発者であるソニー・橋本高明氏(前述したTCD-D7やPCM-D1などの開発も担当)から伺い、そのときからぜひとも手に入れたいと考えていたのだが、ようやく先日購入するに至った。録音機としてのクオリティの高さは『NetAudio』誌14号の付録ディスクに収められた筆者によるレコーディングのRyu Mihoさん生録DSD音源をお聴きいただきたい。本機の内蔵マイクだけでダイレクトDSD収録したとは思えないほど、音の純度や空間再現性が高く、いかに本機のマイクやマイクプリ、A/Dコンバーターが優れているかが理解いただけることかと思う。当然この録音機としての活用も視野に入れているが、普段はネイティブDSD再生が可能なハイレゾプレーヤーとして重宝している。

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