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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第74回】「人気声優×人気ヘッドホン」総当たりテスト! 帰ってきた好評(?)企画、今年はヘッドホン編

公開日 2014/01/31 11:03 高橋敦
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・小松未可子「虹の約束」


声質からマリンバまで現在の声優に求められる要素を完璧に満たす小松未可子さん。その完璧超人っぷりはスクリュー・キッドやケンダマンに匹敵するとさえ言える。そんなみかこしさんのこの歌では特に、序盤の語りかけるように歌う部分に注目。声色の選び方と実際にそのような声色を作る力が素晴らしく、その他の歌い方と合わせて、言葉が心にすっと入ってくる。その再現性を期待したい。

・相性評価一覧
MDRー10RC|★★★・・|
MOMENTUM|★★★★・|
K712PRO |★★★★★|
SRH1540 |★★★★★|

・小松未可子×MDR-10RC 相性評価:3

序盤のウィスパー成分を巧みに配合してそっと語りかけるような歌い方の、その雰囲気の表現も好感触。高域の再現性が荒かったり歪みが目立っていたりするとうまくいかないところだが、このモデルはそこも十分にクリアしている。

歌の伸びやかさもしっかりと生かされている。例えば「見たことない世界へと」の最後の「と」を伸ばしていく際の、音を抜いて消していくその手前にかけて滑らかに微妙に声を強くしていくダイナミクス表現といった部分も届いてきて、言葉に込められたものを感じさせる。

だがしかし低音、バスドラムがもそもそとしていて、それが声に対して目立ちがちなのがもったいない。声が埋もれてしまうことはないのだが、少し気が散ってしまう。

・小松未可子×MOMENTUM On-Ear 相性評価:4

ウィスパー成分を巧みに配合してそっと語りかけるような歌い方の部分はこちらも好感触。ニュアンスとしては穏やかにシュッとしているというか、より優しく繊細に、しかし強く語りかけられているような気がする。このヘッドホンの高域の落ち着き、聴きやすさがポジティブに発揮されているところだ。

特にサ行の子音は耳というか心にシュッと入ってきて訴えかけるものがある。例えば「繰り返せない瞬間、涙する意味を知りました」という一節だと「せ」「瞬」「す」「知」にそのサ行のアクセントあることで言葉がより強くなっている。その部分がこのヘッドホンだとより心地よく表現されている印象だ。

・小松未可子×K712 PRO 相性評価:5

優しく語りかけるように歌う部分での表現力やささやき感などが特に素晴らしい。弱音の中での細かな抑揚や声質の微妙な変化が耳に届いてくる。例えば「絵本みたいなストーリー」という短い節の中でも、声の強さの滑らかな抑揚、「絵本」の「ん」の抜き方、「な」の短い伸ばしの中でほんの一瞬声を明るくする様子など、表情豊かな歌い回しがよく伝わってきて嬉しい。

声質表現の基調として、十分なシャープさを確保しながらも柔らかなニュアンスがあるのは、やはりこのヘッドホンの美点だ。声の力みを強めないことも、この曲の序盤には特に合っている。そこでの「引き」があることで一気に広がるサビの炸裂感も際立つのだ。

・小松未可子×SRH1540 相性評価:5

ウィスパー成分の描き出し方がシャープ。そのシャープさに不快さがないことが繰り返し述べてきたこのヘッドホンの持ち味だ。「繰り返せない瞬間、涙する意味を知りました」の「せ」「瞬」「す」「知」のサ行のアクセントも、実に自然にすっと、しかし深く心に入り込んでくる。

声質の表現傾向はやや硬質で、それがまた素晴らしい透明感を生んでいる。それもあってだが、歌の要所に控えめにうっすらと重ねられているハーモニーも実に綺麗で効果的。例えば「涙する意味を知りました。この痛みが誰かを救えるのなら」の「ました」と「誰かを救えるのなら」の部分などだ。表現がぼんやりとしているヘッドホンだとこの重なりの美しさが損なわれてしまうが、このモデルは完璧。そのハーモニー側の声は息を抜いてさらにウィスパーっぽくしているが、そのさわさわとした雰囲気もよく再現されている。

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