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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第27回】ソニーの定番モニター「MDR-CD900ST」の音はイマも通用するか?

2012/12/12 高橋敦
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■いま改めて定番モニターヘッドホン「MDR-CD900ST」の実力を確認する

ヘッドホンの中でも人気のジャンルというか括りのひとつが、スタジオモニターヘッドホンだ。本来はミュージシャンやエンジニアが録音スタジオで使用するためのアイテムだが、その正確でフラットな再現性を好むオーディオファンの方も少なからずいる。できるだけガチで音源そのものの音を聴きたいというなら、モニターヘッドホンは確かに適切な選択と言えるだろう。

さてそのモニターヘッドホン。現在でこそ国内でも実に様々な製品が手に入るが、一昔前まではあるひとつの製品が突出した存在感を持っていた。それが今回紹介するソニー「MDR-CD900ST」だ。

「MDR-CD900ST」。さすが実用機、作為的なものが一切感じられない無駄のない外観

1989年の登場から現在に至るまでプロのスタジオにおいてまさに業界標準であり続けている、モニターヘッドホンの名機。少し遅れて一般向けにも販売開始されている。現在の実売価格は1万7,000円程度だ。

さてしかし「業界標準モニターヘッドホンなら間違いない!」と即買いしてよいものか。何しろ登場はもう四半世紀ほど前だし、型番に「CD」が入っているあたり、もう時代遅れ感が…。

そこで、今回は改めてMDR-CD900STの実力を再確認してみることにした。果たしてその音は現在に通用するのか?

年季の入ったヘッドホンファンの方々においてはそれぞれ自分なりの答えはとっくに出ていることと思うが、懐かしさ込みでお付き合いいただければと思う。逆にそんな古い機種は眼中に入っていなかったという若い方には、新鮮さがあるかも…と願っている。

■10年使い続けた僕が「さすがプロ機!」と唸る耐久性

では例によってまずは外観からチェックしていこう。写真の個体がちょっと痛んでいるのは、僕が10年以上使っているからだ。

ヘッドバンドに輝く「STUDIO MONITOR」の文字

現在まで全ての個体がそうなのかは確認できないが、この個体は「MADE IN JAPAN」と刻まれている

ルックスは見ての通り飾り気はなく、それがプロ機っぽさを漂わせる。いや「っぽさ」も何も、本当にプロ機なのだから当然なのだが。

ハウジングの円筒形の部分はこの季節に触った感触の冷たさからおそらく金属製。軽さからするとたぶんアルミだろう

装着感は独特だ。イヤーパッドはそれなりに厚みもあるのだが、なぜかぺたりと耳に張り付くような感触。しかしそれにしてはさほど不快ではない。全体の軽量さと重量バランスの良さが理由かと思われる。長時間の連続装着も必要なプロ機として十分な装着感は確保している。

ただしパッド内が浅いため、ドライバー前面のバッフルが耳が当たる感触がある。気になる人には気になるかもしれない。

イヤーパッド内側のスペースの浅さが少し気になる。バッフルが耳に当たるのが苦手な方にはおすすめしない

「さすがプロ機!」と感嘆符付きで言えるのは耐久性。僕はヘッドホンの扱いが乱暴な方だが、この個体は前述のように十年以上使っているにも関わらず、どこも壊れていない。ケーブルを踏んづけたまま立ち上がってヘッドホンが頭から吹っ飛んだこともちょいちょいあったが、断線の気配もない。

ヘッドバンドのクッションは薄めだが、幅が広く確保されているためか、頭頂部への当たり具合は不快ではなく負担を感じない

ヘッドバンド調整機構はクリック感のあるタイプで、フィッティングを固定しやすい。強度感もバッチリ

しかしネットで情報を検索すると断線報告も少なからずあり、その際の修理はちょっと面倒な模様。そこはケーブル直出しなので仕方ないところではあるが…。

現在のモニター機では着脱式ケーブル採用機が多いが、本機は当然のごとく非着脱式。プラグは6.35mm標準プラグ

ただし業務用であるおかげか、専門ショップを通せばイヤーパッドに止まらず内部外部の主要パーツを個別に購入することができる。超定番であるが故に補修パーツの長期安定供給も期待できるだろう。そういった意味ではやはり、長く使える製品だ。

さて、次頁ではさっそく音質をチェックする。はたして、定番モニターヘッドホン「MDR-CD900ST」の“音”はイマも通用するのか?

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