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圧倒的なコストパフォーマンス

【レビュー】全4モデルを一斉試聴! ソニー初のBAイヤホン「XBAシリーズ」を聴く

2011/10/19 ファイル・ウェブ編集部
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■4ユニット「XBA-4SL」¥30,975(税込)

XBA-4SL/IP

XBA-4の装着例

■編集部:山本のレビュー

最後にダブルウーファー+フルレンジ+トゥイーターという“全部乗せ”を実現した「XBA-4」を試聴した。

全体的な印象は、XBA-3の音に元気さが加わったような感じ。Gil Scottのボーカルは、XBA-3で再生されていた音に、もう一本線を描き足して太くしたような力強さがある。ただし、力強くはなるものの、XBA-3の方がクリアな表現に長けているような印象も受けた。

とは言え、ボーカルの声の“色気”はXBA-4が随一の表現力。ローズ・ピアノの音色にも華やかさがある。

Ann Sallyは、アコースティックギターの音色はハコ鳴り、弦の響きともに芳醇。ボーカルもXBA-3の音に柔らかみと温もりが加わり、4機種の中では最も女性の声に艶めかしさがあって心地良かった。

本機でも先ほどの安藤裕子の曲を聴いてみたが、曲からイメージされる情景はXBA-3より暖色傾向が強まり、ふくよかな声の表現になる。若干高域の声が固いように感じたが、この辺りは聴いていくうちにこなれてくる範囲だろう。

XBA-4は本機ならではの音を持っていて、色々なタイプの楽曲を元気に、ドラマティックに聴かせる、まるでハリウッド映画のようなエンターテイナー性を感じる。

演奏全体の解像感や、クールな音色を求めるのであればXBA-3を選んだ方が良いかもしれない。イヤホンとしての完成度はXBA-3でも相当なレベルなので、XBA-4とどちらを選ぶかは、機会があれば実機を試聴し、音色の好みで決めるのが良いだろう。

最後にシリーズ全体の使い勝手にも触れておきたい。ケーブルは全機種が本体からのケーブル長が0.6mとやや短めだ。私はiPhoneやiPod touchなどポータブルプレーヤー単体で音楽を聴くことが多いので、バッグやジーンズのポケットに入れて引き回せる、延長なしの1.2mが良かった。またケーブルのタイプもY型でなく、ネックチェーン型なのが残念だ。これが良いという方も多いというのはわかるのだが。

ハンドリングでもう一点気になったことは、iPhoneに“バンパー”を付けていると、XBA-2以降でプラグが根元まで挿さらなくなってしまうこと。ただし延長ケーブルを用いたらL型プラグになるので、問題なく挿せる。これはもちろん他社製品にも言えることだが、スマートフォンケース選びにも気を配る必要がある。

■編集部:風間のレビュー

XBA-3との価格差は約6,000円。XBA-2と3のあいだも6,000円の価格差なので、1ドライバー増えるたびに6,000円アップと覚えておけば良くわかりやすい。それにしても4ドライバー機が3万円台前半とは、にわかに信じがたい。

また低音から書き始めると、ザ・ラカンターズでは、バスドラムの音がしっかりと聴こえてくる。これはXBA-3より下のモデルでは、まったく聞こえなかったものだ。絶対的な低音の沈み込みは「凄まじい」と形容したくなるレベルで、さすがに4ドライバーという印象だ。

「MR.BOJANGLE」の低音を聴いても、BA機でよくぞここまで、と思えるほど下に伸びる。ただし、制動はそこそこ取れているのだが、逆に少し低音の輪郭が緩めだな、と思える場面もある。

実は、XBA-4を初めて聴いたときは低域があまりに出過ぎるため、少しトゥーマッチかなと感じる場面も多かった。だが聴き込んでいくうちに、ほかのBA機では出せない低音が出る本機の価値は大きいと思い直した。欲を言えばもう少し制動力があれば、なお良かった。

さてXBA-4では高域の解像感も大きく高まる。ハイハットなど、やや音に団子になっていた高域がしっかりと見渡せるようになる。ただし「You Look Good To Me」の、冒頭のトライアングルの音などは輝き感がいま一つで、トップエンドモデルであれば高域はもう少し伸びても良いかな、とも感じた。

中域では、ピアノの音がいっそうリアルになり、潤い豊かな表現になる。音の強弱によりメリハリがつき、これにより音場全体の広がり感が増す。中低域、ギターの音の広がり、開放感も非常にハイレベルなものだ。XBA-1/2/3ではやや抑え気味だった中域の押し出しが良くなり、ボーカルに力強さも加わる。これにより音楽全体のグルーブ感が大きく高まる。

■SE535とXBA-4SLの比較

ふだん使っているSE535とXBA-4との比較も行ってみた。

とは言えXBA-4は約3万円、SE535は約5万円ということで、かなり価格差がある。また、SE535は1年以上鳴らしこんでいるのに対し、XBA-4は開封間もない状態で試聴した。このためエージングという面でもXBA-4は大きなハンデを背負っている。あくまで参考程度にお考え頂きたい。

ハードなロック、ザ・ラカンターズでは、全体のグルーブ感、スピード感、メリハリの全てで、SE535に軍配が上がると言わざるを得ない。SE535には中域から高域にかけての解像感、押し出しの強さがあり、ロックとのマッチングが非常に良い。

低域については、SE535がタイトに引き締まっているのに対し、XBA-4は圧倒的な量感で聴かせる。絶対的な低域の伸びを比べると、SE535では聴こえない音がXBA-4では聴こえるのだ。これに大きな価値があると感じるユーザーも多いことだろう。

ただしSE535の低域のチューニングは巧みで、絶対的な量感ではXBA-4にかなわないが、低音の陰影をしっかりと描出することで、音楽の楽しさそのものはしっかりと伝えてくる。それに比べ、前述の通りXBA-4では、やや低音を制御しきれず、膨れ気味になる場合もある。

ピアノの表現力の描き方にも顕著な違いが表れた。XBA-4では若干歪みっぽく感じられる部分も、SE535ではころころと丸まった音になり、耳なじみが良い。ボーカルについても、XBA-4は柔らかな印象で透明度が高いが、やや平板かなと感じる場面もあった。SE535はよりメリハリが強く、彫りが深い印象だった。



少しシビアな書き方をした部分もあるが、XBAシリーズが同程度の仕様の他社製品に比べ、圧倒的に高いコストパフォーマンスを実現していることは紛れもない事実だ。

XBA-3や4の上位機については、他社製の5〜6万円クラスの高級機と比べるとチューニングなどに改善の余地を残すが、本シリーズがソニーとして初めてのBA機であることを忘れてはならない。むしろ、初めてのBA機でこれだけのコストパフォーマンスを実現したことを称えるべきだろう。

高い音質と安価な価格を同時に実現したXBAシリーズが、この冬、熱い注目を集めることは間違いない。

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