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3名の評論家がその実力へ徹底的に迫る

“ソニー史上最高の音再現力“のモニターヘッドホン/イヤホン「MDR-Z1000/EX1000」登場

公開日 2010/12/06 12:00
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文 / 山之内 正(プロフィール

■振動板開発に数年の歳月をかけ進化したフラグシップモニターヘッドホン

ソニーがこれまでに発売してきた膨大な数のオーディオ製品のなかで、音の一貫性とシリーズの継続性が保たれているという点で、ヘッドホンは飛び抜けた存在といえるだろう。特に、スタジオユースでスタンダードモデルとして認められているCD900シリーズは、型番を聴いただけでデザインが目に浮かび、音がイメージできるおなじみのヘッドホンだ。

MDR-CD900ST

もちろん、いくらスタンダードモデルといっても、同じポジションにとどまり続けているわけではなく、技術の進化や新しい素材の開発を受けて、進化を重ねていく。その顕著な例が、最近登場したスタジオモニターのフラグシップモデル「MDR-Z1000」である。

MDR-Z1000

「MDR-CD900ST」という超ロングセラー機は非常に大きな存在なので、それを凌駕するフラグシップを新たに開発するには、当然ながら妥協は一切許されない。実際、MDR-Z1000に採用された新しい振動板の開発には試聴の繰り返しを含めて試行錯誤を繰り返し、数年の歳月をかけたという。

ヘッドホンの振動板の開発にそこまで時間をかけるのかと驚く人がいるかもしれないが、もちろんすべてのメーカーがそれだけの時間をかけていたら、いつまで経っても製品は出てこないだろう。ソニーは部材レベルから研究する環境を持っているだけでなく、その基礎的な研究の成果を製品に生かすことができるからこそ、それだけ時間をかける意味があるのだ。

新開発したのは液晶ポリマーフィルム振動板である。様々な分野に応用例がある優れた樹脂素材を応用して、ソニーが開発したものは軽量で剛性が高く、振動板として理想的な性質を備えている。特に、ヘッドホンの振動板素材としては、剛性が高いにも関わらず内部損失が大きいという性質に注目すべきだろう。

液晶ポリマーフィルム振動板

ハウジング内部

内部損失が大きいということは固有の鳴きが少ないことを意味し、元信号にきわめて忠実な再生音を得ることができるのだ。実際にMDR-Z1000に採用されている成型後の振動板に触れ、軽く叩いてみたが、従来の素材のようなカサカサとした余分な音がなく、しかも十分すぎるほどの強度を実現していることがよくわかった。

共振を抑えるという点では、ハウジングの素材にマグネシウム合金を採用していることにも注目しておきたい。軽量で剛性が高く、しかも固有音がほとんどないので、ドライバーユニットの振動で筐体が不要共振を起こすことがなく、ピュアなサウンドを引き出すことができる。カメラやパソコンなどでも採用例が多いが、ヘッドホンの筐体への導入例は限られている。MDR-Z1000がサイズから想像する以上に軽いのは、マグネシウム合金を採用したことに大きな理由があるのだ。

ハウジング部はマグネシウムを採用

ドライバーユニットのボイスコイルにはOFC導体を使用し、コードには7NのOFCリッツ線を奢っている。強力なネオジウムマグネットを採用したMDR-Z1000の再生帯域は5Hzから80,000Hzに及び、最大入力は4000mwをクリアしているが、これがソニーのヘッドホンのなかで最大の数値である。

MDR-Z1000を実際に装着すると、耳を覆うイヤーパッドのフィット感が自然で、まったく違和感がないことに気付く。形状と素材を工夫した成果だと思うが、特に縦長の楕円形状にしたことが功を奏しているようだ。サイズが大きすぎず、しかも縦長なので髪を挟み込みにくく、音漏れが起こりにくいのだ。

製品を試聴する山之内氏

MDR-Z1000はプロフェッショナルのスタジオユースも想定しているので、作り込みの深さと素材へのこだわりの強さは突出したものがある。それらをすべてリスナー向けの姉妹モデルに投入するのは不可能だが、振動板や筐体の素材以外の要素を巧みに受け継ぎ、再生音のクオリティを可能な限りフラグシップに近付けることはできるはずだ。

「MDR-ZX700」など最上位機の思想を受け継いだ姉妹モデルも用意されている

その課題を実現したのがMDR-ZX700で、磁気回路の構成や新形状のイヤーパッドなど、MDR-Z1000で成果を上げたキーテクノロジーを生かし、高い基本性能を獲得することに成功している。

※ MDR-CD900STは株式会社 ソニー・ミュージック コミュニケーションズの商品です。
※ MDR-Z1000,ZX700,EX1000はソニーマーケティング株式会社の商品です。

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