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音楽CD/BDビデオ再生クオリティを単体機と聴き比べる

<検証!PS3 “現在”の実力>第5回:PS3の音質はこの2年でどれだけ進化したか

2008/12/12 折原一也
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●単体SACD/CDプレーヤーで音楽CDを試聴

まずは、最初にレファレンスとして用意したSACD/CDプレーヤー「SCD-XA1200ES」を聴く。ダイアナ・クラール『The girl in the other room』の音楽CDトラックを再生してみた。1曲目の「Stop This World」、2曲目の「The Girl In The Other Room」、3曲目の「3. Temptation」と続けて聴いてみたところ、彼女の渋みあるハスキーボイスを骨太な音で再生し、濃厚な空気感で鳴らす。押し出しが強く、特にボーカルに力点を置いた音という印象だ。

もう1枚のリファレンスとして用意したサラ・ブライトマンの『アヴェ・マリア』のタイトルナンバーでも、透き通るような歌声を柔らかく鳴らす。このディスクは様々な機器でリファレンスとして使用しているものだ。

●PS3のビットマッピング4設定を聴き比べる

この結果を踏まえて、PS3の音質を聴いていこう。PS3の再生設定は、出力を88.2kHz/176.4kHzのアップサンプリングにした上で、「ビットマッピング」の設定「切」と、ディザリング処理で歪みやノイズを低減する「タイプ1」、ノイズシェーパー処理で可聴領域のノイズを減らす「タイプ2」、PS3向けに独自開発された「タイプ3」と、全4通りで比較視聴を行った。

ビットマッピングのタイプは「切/1/2/3」の4通りから選択できる

まずは「切」設定だ。ダイアナ・クラールを試聴すると、音の情報量自体は多く感じるが、全体に音が渾然とし、音場の広がりはそれほど出ない。ピアノの音色も硬い。低音は量的に豊かという印象だ。SCD-XA1200ESと比べると、特にボーカルで差が歴然としており、艶が今一歩出ず、前に出てくるようなイメージもない。サラ・ブライトマンも高音は伸びているものの、やはり遠くのホールで鳴っているようだ。

ビットマッピングを「タイプ1」にすると、これが一変する。一気に音の厚みを増して”味”のある音になり、ダイアナ・クラールのハスキーボイスが艶めき、ジャズでも空気感が感じられるようになる。ピアノはタッチの柔らかさが感じ取れ、ボーカルの音像も明瞭になった。サラ・ブライトマンでも、精緻な音の中に厚みを持つようになり、音像が前に迫り出してくる。

「タイプ2」の設定は、「タイプ1」の設定にひと味加えたような印象だ。空間のなかに点在する微細な音の再現力を向上させており、個々の楽器をよりキレ味良く主張させる。シンバルの音がやや強いのが気になったが、ジャズでは許容範囲だろう。サラ・ブライトマンは、声の厚みと同時に響きの美しさも持たせる。

「タイプ3」はこれまでと音質の方向は若干異なる。ダイアナ・クラールを聴くと、さらに音の精密描写とでも言うべき微細な表現力を持つようになる。例えばボーカルは声の震えまで聞き分けられ、ピアノはタイプ1/2に比べて若干硬さが加わる。低音は余韻を抑えた、あっさりした方向と感じられる。楽器個々の分離は明瞭で、情報量は随一だ。サラ・ブライトマンも歌声を細部まで鳴らし、限界まで高域を伸ばす。

SCD-XA1200ESとPS3の各設定の音を聞き比べてみると、まず前提として、各ビットマッピング設定の音はどれもSCD-XA1200ESに通じるオーディオ機器的な鳴り方をする。傾向としては素直にオーディオ的な「タイプ1」、空間のキレ味を増す「タイプ2」、精細さに振った「タイプ3」という印象だ。

筆者なりの結論を出してみると、ビットマッピング「切」の設定で聴くくらいならば、SCD-XA1200ESを選びたいところ。ビットマッピングを好みに合わせて選べば、PS3とSCD-XA1200ESの実力差は思ったほど大きくない。なお、SCD-XA1200ESもオーディオ的な味付けがバランス良く盛り込まれた良質なプレーヤーであることは報告しておきたい。もう一つ、PS3はCDプレーヤーとして使うには、ファンノイズなどの動作音が大きいことにも留意したい。

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