発表会で熱い思いを担当者が語る

富士フィルム、新旗艦ミラーレス「X-Pro3」。「すべて同じものは2台と無い」チタンボディ

編集部:平山洸太
2019年10月23日
富士フイルムは、同社ミラーレス一眼カメラ「Xシリーズ」のフラグシップモデルとして、「X-Pro3」を発表。ブラックを11月28日、DRブラックとDRシルバーを12月中旬に発売する。また価格はいずれもオープンだが、ブラックは214,500円前後、DRブラック/シルバーは239,500円前後での実売が予想される。

「X-Pro3」

左から、ブラック/DRシルバー/DRブラック

同社初として、ボディ外装にチタンを採用。あわせてフレームなどにはマグネシウム合金を組み合わせることで、高い堅牢性や剛性、機動性や耐久性などを追求する。カラーはブラックに加え、擦り傷への耐性を高める「デュラテクト」加工を施したDRシルバーとDRブラックが用意される。

またボディは70箇所にシーリングが施されており、防滴・防滴仕様を実現。-10度の耐低温性能を備えるなど、過酷な撮影環境での仕様も想定している。

底面には「TITANIUM」「MADE IN JAPAN」の文字や、シリアルナンバーなどがレーザー刻印される

ファインダーは従来モデルから引き続き、「アドバンスドハイブリッドビューファインダー」を踏襲し、ファインダーを覗いて撮るというスタイルを追求。光学ファインダーと電子ビューファインダーをレバーで切り替えながら撮影が行える。

電子ビューファインダーには新たに有機ELを採用し、解像度は約369万ドットとなる。最高1,500カンデラの輝度や高いコントラストなどを備えるほか、忠実な色再現も備えるとする。また約200フレーム/秒相当の表示が可能な「漸増低減」モードにも対応。OVF上に小型EVFを同時表示できる「エレクトロニックレンジファインダー」機能も用意する。

上部イメージ

撮像素子は有効約2,610万画素の裏面照射型CMOS「X-Trans CMOS 4」を搭載し、画像処理エンジンには「X-Prosessor 4」を搭載する。いずれも同社「X-T3」「X-T30」に搭載されているものだが、さらにアルゴリズムを進化させることで、-6EVの低照度下でも位相差AFに対応したという。

ハイダイナミックレンジ機能にも対応し、多重露出機能は最大9枚の重ね合わせに対応。また同社の特徴とするフィルムシミュレーションには、クラシックネガモードを新搭載する。さらにカラークローム・エフェクトでは、青空などブルー系の被写体に対して効果のあるカラークロムブルーを新搭載する。

モノクロ調整はモノクロームカラーとして刷新し、従来の暖色系・寒色系だけでなく、マゼンタ系・グリーン系を加えたカラーグラデーションから選ぶことが可能。また粒状感を再現する「グレイン・エフェクト」は強/弱だけではなく粒度も選べるようになった。

液晶モニターは約162万ドットのチルト式タッチパネルで、ボディ背面の内側に格納されている。普段は背面に1.28インチの液晶モニターが搭載されており、ここに設定の数値(標準モード)やフィルムシミュレーションのモード(クラシックモード)を表示する仕様。メモリ型液晶のため、電源がオフになっている場合でも表示が維持される。

開くとモニターが現れる

背面部

そのほかクイックメニュー「Qメニュー」ではアイコン表示数を4/6/12/16から選択可能。USB端子はType-C(USB3.1 Gen1)を採用し、USBからの充電にも対応する。外形寸法は約140.5W×82.8H×46.1Dmmで、質量は447g。

端子部

カードスロットはSD×2のデュアルスロット

チタンで作った「すべて同じものは2台と無い」カメラ

本日、都内でメディア向けに説明会が開催。商品企画を担当した、同社光学・電子映像事業部 映像グループ 統括マネージャーの上野隆氏より、X-Pro3に対する熱い思いが語られた。

富士フイルム 光学・電子映像事業部 映像グループ 統括マネージャー 上野隆氏

まず今回の製品のテーマとして掲げられているのが、「PURE PHOTOGRAPHY」というもの。近年のレンズ交換式カメラでは静止画/動画の両方の性能に対してフォーカスされる製品が多いが、「あくまでも写真を第一に考えようじゃないか」(上野氏)という考えで開発したという。

X-Pro3は従来モデルと比較して、見た目上は大きな違いはない。しかし、「持つ喜び」「撮る楽しみ」「撮影に必要なものだけをコンパクトに凝縮」というProシリーズのコンセプトをさらに “深化” させたとして、ボディ、ファインダー、背面モニター、表現のための機能といった多くの部分に変更が加えられている。

ボディの材質は先述のようにチタンを採用するが、「チタンで作るには大きなチャレンジが必要だった」と上野氏は説明する。チタンは硬く加工が困難なため、金型のとおりに変形せず、成形するだけでも苦労が伴うとのこと。それでいてディテールにもこだわったということで、ファインダーのエッジ部分の突起、トップカバーフロント部のウェーブライン、上部ダイヤル周囲のハの字形状をアピールしていた。

細かなディテールにもこだわったとのこと

上部と下部にチタン、それ以外にはマグネシウム合金を採用する

なお製造について機械はもちろんのこと、人間の手でもグラインダー成形が行われる。上野氏は「今どきのデジタルカメラとしては、こんなに手のかかっているカメラはありません」と強調しており、細かい部分のアールの違いなど、「すべて同じものは2台と無い」という。またチタンは外界の影響を受けやすいトップカバーとボトムに採用され、内部フレームなどはマグネシウム合金が用いられる。

手作業による加工も行われる

またカラーについては、従来の「ブラック(ブラックペイント)」に加え、DLC(Diamond Like Carbon)によって強化コーティングが施されたガンメタリックのような「DRブラック」、素材自体の強度を挙げるシチズンの特許技術 “MRK” を用いてハードな環境下でも傷がつきにくい「DRシルバー」が用意。

各カラーにおける処理や塗装/コーティングの厚さなどはそれぞれ異なる

これらの選び方について、ブラックはぶつけると傷が付き塗装が剥がれるなどエージングが可能、クラシックな佇まいを求めるユーザーに。デュラテクトの2モデルは、いつまでも新品のようにきれいでいて欲しいユーザーにおすすめとのこと。カッターによるスクラッチテストにおいても、ほどんど傷がつかないという(表面硬度はステンレスや水晶よりも硬いHv1300-1500としている)。

デュラテクト(左)/ブラック(右)にそれぞれカッターでスクラッチテストした結果

歴代モデルとの比較。寸法や大きさは、ほとんど変わっていない

ファインダーの見え方を追求し、背面液晶は隠すことで撮影に集中できるように

Proシリーズの特徴であるファインダー「アドバンスドハイブリッドビューファインダー」は、新規設計を採用。従来は約0.36倍/約0.60倍の変倍式だったが、EVF時の見え方のクリアさなどを追求するため、換算50mm相当を想定した単倍に。

EVFには有機ELを採用。各種スペックも向上した

OVFとEVFが切り替えられることが同ファインダーの強みだが、プロのユーザーにヒアリングしたところ、全体の8-9割がEVFのみで使用していたとのこと。またスナップにおいて必要なスピードなども、タイムラグが気にならないレベルにまで進歩しているため、先述のようにEVF性能の向上にフォーカスが当てられている。

ファインダーの仕様としては、369万ドットの有機ELで、コントラスト比は5000:1(Pro2は300:1)。また色域はsRGB 97%をカバーする。従来は液晶を採用していたが、これはOVF時にブライトフレーム(写る範囲を示す枠)を晴天下でも視認できるような輝度が必要だったため。従来同様の1,500カンデラという高輝度に対応したもの搭載することで、ようやく有機ELの搭載が可能になったというわけだ。

またフレームレートは前モデルの86fpsから向上し、X-T3と同等の100fpsに。さらにフレーム間にブラックブレームを挿入することで、見え方上は200fpsに近い残像を実現したという。

100fpsのフレームレートにブラックフレームを挿入し、さらなる残像低減をはかる

「ユーザーのことだけを考えて、いらないものを引き算して作った」

背面液晶「Hidden LCD」は、先述のように通常のデジタルカメラでは背面に位置する液晶画面が、通常は隠れているというものだ。「液晶画面を見てしまうことで、安心してしまう。フィルム時代は確認ができないので、露出や構図などを追い込んでいたため、感動するような写真が撮れた」と上野氏。

「Hidden LCD」。通常時は小型のモニターに撮影情報などが表示される

背面モニターはウエストレベルなどでの撮影を想定する

また「液晶を外してしまうという選択肢もあるが、スナップにウエストレベルファインダーが有効なことも知っている。そこで両方同時に実現するための仕組みがHidden LCDだ」と、採用に至った理由を説明した。

基本性能については、人間の眼で見たら暗闇という状況でも位相差AFが可能な-6EVへの対応や、X-T3で採用する最新の撮像素子/画像処理エンジンの搭載。そして従来2枚だった多重露出が9枚まで可能になったり、画面全体にピントが合う深度合成のためのフォーカスブラケットなど、多くの部分で改善が行われている。

歴代モデルとの基本スペック比較

そしてハードウェア面での “深化” は大きいが、「Proシリーズは世界中を渡り歩いて作品を撮る作家を意識しているカメラ。そのため、表現力が大切」(上野氏)ということで、様々な表現ができるように、機能面でも各種設定が追加。

1つは同社が特徴とアピールしている「フィルムシミュレーション」。標準となる “プロビア” や鮮やかな “ベルビア” など従来からの設定はもちろん、今回は “SUPERIA” をもとにした「Classic Neg.(クラシックネガ)」が追加された。彩度は低めだが、階調は硬めとのことで、「古い建物をしっとり落ち着いて写したい場合、色も過度に乗らないため曇りの雰囲気を出したい場合」などに最適だという。

フィルムシミュレーションにおける各種フィルムの立ち位置

クラシックネガを用いた作例

またカラークローム・エフェクトでは、新たにブルーに対して作用するカラークロムブルーを搭載。従来はブルー以外に作用する設定しかなかった。新設される機能のため、従来の設定と重ねがけすることもできる。粒状感を出すグレイン・エフェクトは粒度とサイズ調整により、よりフィルムのようなリアルな粒状を出せるようにもなった。

フィルムシミュレーションにおけるモデルごとの対応状況

カラークロムブルーの効果。右が適用時

今回のモデルは全体的なスペックの向上や、様々な部分での改良が施されたが、これらは「数字でわかるというよりは、使えば使うほど役に立つという進化」とのこと。また「ユーザーのことだけを考えて、他のカメラに必要でもいらないと思えるものを引き算して作ったカメラがX-Pro3だ」と上野氏は語る。

「万人に受け入れられるカメラではないが、純粋に写真とカメラを愛する人に向けた特別なカメラ」と説明する

そして、「万人に受け入れられるカメラはTシリーズで作っている。専用の道具に叶う万能の道具はない。(Proシリーズは)機動力を上げて小型軽量で作っていて、研ぎ澄まされたカメラが好きなユーザーに向けて作った。素晴らしいカメラが沢山出ているが、だからこそ同じものを作っても仕方ない。X-Pro3は、そういうものが許されるカメラだ」と締めくくった。

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