「Air Film Damping System」

<ヘッドホン祭>final、平面磁界型ヘッドホン新技術を発表。製品版は9月発売、30万円台を目指す

編集部:小澤貴信
2017年04月30日
本日まで開催の「春のヘッドホン祭 2017」にて、S'NEXTは、同社が手がけるfinalブランドの平面磁界型ヘッドホンの新技術説明会を開催した。

平面磁界型ヘッドホンの試作機

この平面磁界型ヘッドホンは、finalがこれまでも現在開発中であることをアナウンスしており、各種イベントでその試作機が公開されていた。今回の発表会では、この平面磁界型ヘッドホンのために開発された新技術「Air Film Damping System」について詳細な説明が行われた。

説明会と共に、試作機の試聴会も開催。70mmドライバーを搭載した平面磁界型ヘッドホンの試作機を実際に試聴することができた。このヘッドホンの製品版が2017年9月に発売することも発表。価格は未定だが、「30万円台を目指している」とのことだった。

説明会では、S'NEXTの代表取締役社長である細尾満氏がプレゼンテーションを実施。また、新技術のアイデアを提供してその実現もバックアップしたNHラボの中島平太郎氏もゲストとして登場した。

細尾満氏

中島平太郎氏

今回の平面磁界型ヘッドホンの開発には、ソニーでCD開発などに携わった中島平太郎氏が設立したNHラボ、さらに「現時点で名前は明かせない」という「大手X社」が参加。根幹技術となる「Air Film Damping System」(AFDM)については、平面磁界型ヘッドホンで問題となる振動板のダンピングに、中島平太郎氏が「薄流体層」の原理を応用することを提案したことをきっかけに、それを実現したものとなる。

これまでの平面磁界型ヘッドホンの多くはその特性上、振動板がマグネットに接触するのを避けるため、f0(最低共振周波数。低域の再生限界とほぼ同意)を高く設定せざるを得なかったという。結果として、低音を引き出すためにイヤーパッドを密閉構造にして弾性制御する必要があった。このため、平面磁界型ヘッドホンでは低域が出しにくいだけでなく、低域再現において開放感を得ることが難しかった。

また、この問題を回避するためにダンピング材や吸音材を用いたために、平面磁界型ヘッドホン本来の開放的なサウンドが失われてしまったり、原理的には軽量化できるはずが本体が重くなってしまうといった問題もあったという。

そこでfinalは中島平太郎氏のアイデアを得て、「薄流体層」の原理を用いた「Air Film Damping System」を開発。これは振動板とマグネットの間に薄流体層による抵抗成分を配置することで、振動板の動きを損なうことなく磁石に触れないようにダンピングを行い、結果としてf0を低く(より自然に低い低音が出るように)できるのだという。

試作機に用いられた70mm振動板

こちらは70mm平面磁界型ドライバーユニット

具体的には、渦巻きコイル+コルゲーション(振動板)とドーナツ型マグネットの間にパンチングメタルを配置。パンチングメタルの穴のサイズを調整することで、薄流体層による抵抗成分を最適に調整する。

ちなみに薄流体層とは聴き慣れない言葉だが、空気の流れによってできる抵抗と考えていいだろう。この抵抗で振動板の動きにダンピングをかける。ちなみに、下敷きを机などの上に落としたときに、着地した後にいくらか滑るのも薄流体層によるものなのだという。

なお、この薄流体層によって抵抗成分をつくるというアイデアは、中島氏がソニー時代にコンデンサーマイクの開発において実際に行ったものだという。しかし、ヘッドホンに比べて振動板が小さいコンデンサーマイクでも実用は非常に難しかったため、中島氏は「アイデアは出したものの、ヘッドホンで実現するのは困難なのでは」と思ったとのこと。

実際開発は困難を極めたが、NHラボの開発バックアップに加えて、「大手X社」の協力も実現。有限要素解析法によるシミュレーションやレーザードップラーによる測定なども導入された。さらには従来の製造器具では開発が困難なため、振動板ソーティング治具なども独自開発。これらを経て、「Air Film Damping System」実現に至ったという。

今回試聴ができた試作機は、70mm振動板を搭載(これまでイベントに出展されていたものは50mm振動板を搭載したモデルだった)。振動板を試験運用するためのもので、外観や詳細な仕様についてはこれから詰めていくとのこと。

なお、50mm振動板を搭載した下位モデルや、さらに上位のモデル、密閉型モデルなどラインナップを拡充していくことも目指しているという。

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