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液晶タッチパネル技術の説明会を開催

シャープ、タッチパネル液晶を進化させる新コンセプト「フリードローイング技術」

公開日 2015/03/10 20:25 編集部:小野佳希
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また、各技術の詳細説明を担当したディスプレイ開発本部本部長の伴 厚志氏は、紙と同様の書き心地を持つ電子ノート、オーバル型のスマートフォンなど、フリードローイング技術の将来像にも言及。「センシングデバイスとの融合をより深めることで、より便利に、より気の利くUIに進化させる」としたほか、「本日はカードリーダーの融合を紹介したが、まだまだ様々な機能を統合可能。ディスプレイを単なるアウトプットの装置でなく、様々な機能を有する“機能プレート”に進化させていきたい」と述べた。

シャープ 伴氏

なお、方志氏は同社液晶事業の現状と今後の課題についても言及。中型(タブレット等)市場の需要拡大が遅れていること、中国スマートフォン市場における流通在庫過多になっていること、モデルミックスが悪化していることなどを振り返る。

こうした問題に対し、中型パネルの新規顧客開拓と拡販によって亀山第2工場の中高型生産比率を50%にまで上げることや、中国・華南地区での営業体制強化を図るなどの対応をとっていくことを改めて紹介。

そして中期的には、ボラティリティリスクの高いBtoBtoCの依存度を軽減し、車載やIA、医療などのBtoBtoBの比重拡大を目指すことも紹介。2014年度には約15%であるところを、2017年度に25%、2021年度には約40%にまで高めていくとした。

BtoBtoC、BtoBtoBそれぞれの特徴

BtoBtoB事業の比率を高めていく

■技術力と収益性の関係などメディアから様々な質問

以下、質疑応答の模様をお届けする。

Q.本日紹介されたような素晴らしい技術がありながら、なぜ収益面で苦戦していると考えるか。シャープ全体にとっての液晶事業の役割とはどんな位置づけなのか。

A.2012年度は液晶事業だけで1,389億円の赤字だった。2013年に中期経営計画を作って活動した結果、2013年度は営業利益415億円、2014年度は400億円の営業利益の見込みだ。シャープ全体の経営という視点では、液晶だけで550億円をやると宣言した点に対しては大きなマイナスになってしまったが、競合を含めて同じ目線で比較すれば、液晶事業自体の収益という面ではそれほど苦戦というほどの落ち方でもない。液晶事業はシャープ全体の事業規模の半分を占めているので、本日紹介したような付加価値技術で全社を支えていかねばならないと思っている。

Q.第3四半期の決算では中国市場で非常に厳しい状況だった。中国市場で日本のライバルメーカーとのパイの取り合いになったと見ているが、一部の意見としては、日本の企業が中国市場で戦っていく上でJDI(ジャパンディスプレイ)と一緒になったほうがいいのではという声もある。この点についてどう捉えているか。

A.我々の液晶は小型だけではない。スマホは大きな投資が必要な高精細での勝負になっていた。ただ、ここは先ほど述べたようにかなりのレベルに達した。これからは中型大型というIGZOの優位性を活かせる部分が主戦場になってくる。中型大型まで含めた事業全体として我々は単独でやっていくということだ。

Q.タッチパネルの高感度技術について聞きたい。タッチパネルそのものというより、コントローラーICの技術が効いているのだと理解している。このICのみを販売をしていくのか、それともタッチパネルまで作りこんで販売していくのか。

A.アルゴリズムを作るだけではダメで、液晶の中に発生する様々なノイズをクリアしていかねばらなく、どうしてもソリューション提案ということになっていく。作り込みということでソリューション提案をしていく。

Q.以前にMEMSディスプレイのロードマップについて発表があったが、そこではタブレットや民生向けも視野になっていた。その部分と今回の発表のロードマップとのズレがあるように感じるがどうか。

A.ズレてはいない。MEMSの後ろに今回の技術が来るものなので、MEMSのほうが最初に出るとは思うが、将来的には「MEMS UI」として融合していくことになるだろう。

Q.液晶事業全般について。今のシャープに、ボラティリティに耐えられるだけの資本がないと思う。液晶事業では技術力よりもむしろ、変動に耐えられる資本をいかに整えるかが課題だと思うのだが、この点についてはどう考えているか。

A.資本力が必要ということは認識しているし、今の我々に資本力がないのも事実。ただし我々はIGZO技術を持っている。IGZOはLTPSと同等の性能を、古い既存のアモルファスシリコンの工場に少額の投資で実現できる。LTPSで数千億円規模になるところを、IGZO化は数分の一の投資で行える。自分たちの投資余力に見合った技術を持っているし、生産効率面でも追求をしてきた。そこで我々はまだ事業を続けていけると考えている。

高精細が進むというのは大変なお金が必要。ただしスマホの高精細化は人間の視覚神経の限界を超えつつある。そこで競争軸は移っていくと考えている。IGZOは中型大型を高精細化できるという技術。安定した事業ポートフォリオを創っていく上で、いいポジションを持っていると思っている。

Q.電子デバイス事業に関わる福山工場と三原工場について、両工場は構造改革の対象として取り沙汰されているが、ここをどう考えているのか。また、さらに抜本的な構造改革を求める声もあると聞いているが、その必要性をどう考えているか。

A.三原工場はLEDレーザーを作っている。すでにスマホやテレビに多数搭載され始めている。こうした展開がまだ可能性を残しているので、現時点では事業構造の変革を図っていきたい。福山工場もこれから継続性がある事業だと判断している。構造改革については、今後に向けてさらなる構造改革の検討はするが、その一環として、今日話した技術を展開することで収益の安定化、構造の変革を進めていきたい。

Q.MEMSディスプレイの量産化におけるクアルコムとの協業と同じように、タッチパネルの技術でも他企業とのアライアンス、協業の可能性はあるのか。

A.資本協力には具体的な話はない。フリードローイングに関連する液晶タッチパネルの技術はそれほど大きな投資にはならないためだ。将来的に規模の大きい話があれば可能性がないわけではないが現時点で具体的なものはない。

Q.中国市場の厳しい状況は一過性だと見ているのか、それとも構造的な変化だと見ているのか。

A.中国は価格市場が厳しいことは周知の通り。相当たくさんのプレーヤーが参入して、市場全体での1億3,000万台ほどの在庫のダブつきが出ている。4Gクラスがほぼなくなったのが旧正月時点の状態。残りは分析しないとハッキリ言えないが、旧正月明けから少し動き始めた感じはしている。今のところ構造的なものだとは考えていない。

Q.中型パネルのインセル化の時期はどれくらいになるのか。以前に2017年度くらいかという話があったかと思うが、それでは2015年、2016年度はシャープの液晶デバイスとしてどのような戦略を取っていくのか。

A.2016年度に入ったくらいで開発できるという段階だ。2015年と2016年は中型市場の開拓が急務。本日紹介した技術でそこを拡大していく。フリードローイングについては2015年度中に全体の3〜4割、2016年度で6割くらいを目標にしている。

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