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20V型IPSα 4Kパネルは12年4Qに販売開始予定

【更新】パナソニック、3Q業績は3,338億円の損失 − 通期業績も7,800億円の赤字へ大幅下方修正

公開日 2012/02/03 16:32 ファイル・ウェブ編集部
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テレビ事業の構造改革は予定通り実施 ー IPSα 4Kパネルは12年4Qに販売開始


パナソニック(株)大坪文雄氏
同社ではグループ全体の事業構造をビジネスモデル別に、コンシューマー/デバイス/ソリューションの3事業分野に分けた新体制を本年1月1日からスタートさせた。大坪氏はこの「環境革新企業」に向けた過去最大のTransformationを実現し、持続的成長への礎を築くための新たな事業モデルを構築した上で、収益構造の変革を進めながら「V字回復」を達成することの重要性を強調した。

2012年度に向けた取組みとしては、課題事業の再編と成長戦略を加速させていく。大坪氏は「全社を挙げて、何としても経営体質を徹底強化していく」との考えを述べた。

2012年度でのV字回復を宣言

現状の収益構造については、数多くの強い事業を持ちながら、テレビと半導体関連の赤字が高収益事業群の黒字を相殺してしまっていることの問題を指摘。これを受けて大坪氏は「テレビ・半導体事業関連を黒字化する。これによって、黒字事業の成長をさらに押し上げる」との収益構造変革のための方向性を示す。海外の白物家電、環境・エナジーなど好調分野については増益を追求。強い事業をベースにしながら、「単品購入」「そろえる・つなげる」「メンテナンス・サービス」の3段階における総合的なビジネス強化を図り、「まるごとソリューションで“3度稼ぐ”構造」をつくりあげるという。


収益構造変革のプランを示した
赤字の続くテレビ事業については「10月に発表した事業構造改革の内容を予定通り推進している」と大坪氏は語る。液晶・プラズマともに、パネル事業は製造拠点を適正規模にスリム化。IPSα独自の強みを活かしながら、タブレットや医療、車載など「非テレビ」への用途展開を積極的に推し進める。12年度には非テレビ用の比率を「5割超」まで高めていく。また液晶テレビのセット事業については50型以上の大型展開も図りつつ、OEM/ODMも積極活用していく。プラズマについては収益力の高い大画面に集中していく。

また本年初に技術発表が行われた20V型のIPS方式を採用した4K2K液晶パネルについて(関連ニュース)、大坪氏は「12年4Qから販売を開始する」計画を明らかにした。

テレビ事業の構造改革は「順調に推移」しているという

20V型の4K対応IPSαパネルは12年4Qに販売をスタート

半導体事業についてはアライアンスを含め、様々な施策を検討している段階にあるという。

白物家電事業に関しては「全社の安定的な収益基盤であり強化するべきポイント」として、成長事業に位置づけられている。海外の白物家電については「2ケタ成長の継続」が課題になる。グローバル規模での増販を推し進めながら、新興国のボリュームゾーン攻略を図る。同社では各地域のニーズにフィットしたアプライアンス製品供給のため、既に世界10箇所に研究拠点を設けている。OEMの活用により市場導入と展開も加速させる。また「エコナビ」の世界展開加速や、美健商品の全地域増販も強化する。

同社にとって、同じく成長事業となるソーラー事業は「国内No.1」を目指す。また車載電池事業についても実績・信頼性を強みに取組を加速させていく。

製品群で強みを発揮するだけでなく、保守やメンテナンス、モニタリング、改善コンサルティングなどをトータルで提供する「まるごと事業」については、100の強みとなる事業をつくるための「100本の矢」戦略を推進する。大坪氏は「現時点では30本が具現化しており、12年度中には50本にこれを伸ばしていきたい」とし、同社のエコソリューションズ社に組織した「まるごとソリューションズ本部」が、現在130人体制で取組みを加速させていることを強調した。また、まるごと事業の一翼を担う「家まるごと」へのアプローチは、木造住宅向け躯体事業の進化と、中国の住宅内装事業の進化をテーマに挙げた。

大坪氏は今後も全社を挙げて経営体質をさらに強化していくことを宣言し、「構造改革を完遂して、徹底した効果を刈り取る」とした。またあらゆる費目でのコストを削減しながら、在庫・設備投資を絞り込んでいくことも課題となる。


それぞれの改善効果は2,500億円を試算
成長戦略などによる増収効果については、構造改革による1,250億円、3社統合シナジーによる合理化効果の200億円、タイ洪水被害の挽回による600億円などを合わせて、2,500億円の改善効果を見込んでいる。大坪氏は「2012年度には、何としてもV字回復を実現する」と強い意気込みを示した。


質疑応答

Q これまで成長を牽引してきたテレビ事業はその役割を終えたと考えているか。
A テレビ事業の成長はもうなくなってしまったわけではないと思っている。2000年代の中頃に、テレビ事業を展開する各社はパネルに大量に投資し過ぎて、供給過剰の状態をつくってしまった。その結果、テレビはグローバルでコモディティ化してしまったと考えている。今はこれからのテレビの在り方を各社が真剣に考え、どう発展させていくかを議論すべき段階にあると思う。(大坪氏)


Q 今は白物家電の方が付加価値を付けやすい商品になっているのか。
A 白物家電とは、各地域に暮らす人々の生活習慣や文化に根付いた商品だと考えている。そして、各地域の生活研究を丁寧に行うほど、ニーズにフィットした白物製品が必ず提供できる分野だと思っている。パナソニックの研究力をもってすれば、さらに良い製品を提案できると自負している。例えば新興国ではまだ、電力供給が不安定な地域もあるが、このような国々に暮らす人々にとって「省エネ性能」は、先進国とはまた違った価値感覚で受け止めてもらえるだろう。私たちの持つ省エネ技術と生活研究を推し進めながら、白物家電事業をグローバルに成長させていきたい。(大坪氏)


Q 車載電池や、まるごと事業などもいずれは他社競合が激しくなるのでは。その時はどのように差別化を図るのか。
A ご指摘の事業分野は、まだコモディティ化の状況では全くないと考えているし、そもそもコモディティ化する類の事業ではないのでは。パナソニックには、ニッケル水素電池の分野で各自動車メーカー様から得てきた信頼性関係がある。これをベースに、リチウムイオン電池の事業には高い信頼をいただいている。自動車に関わるビジネスには「安全性」の基準が重視されることになるため、その観点からも当社の技術と信頼性が高く評価されると確信している。

まるごと事業については、単品販売から発展して、「そろえる・つなげる」「メンテナンス・サービス」へとトータルソリューションを提供していくというビジネスモデルだ。このビジネスデルを各地域社会に展開しながら、具体的な商品とコンセプトを一緒に提案できる企業は、パナソニックをおいて他にないと自負している。だからコモディティ化はあり得ないと思う。(大坪氏)


Q 今回の決算内容を受けて、大坪氏は自身の経営責任をどう捉えているのか。
A 7,800億円の赤字は確かに巨額の金額だ。責任は痛感している。ただ、パナソニックは現在、2018年に環境革新企業となるためトランスフォームを実行中であり、新しい企業のかたちを実現するために船出をしたところだ。この船出がうまく進むよう、いま課題として認識をしているものを全て出し切って、新しい方向に向かって進むために必要な7,800億円だと考えている。とはいえ、来年度以降にはしっかりと収益を回復させて、目指す方向に力強く進んでいきたいと思う。それを確実に実現することこそが責任であると考えている。(大坪氏)


Q 三洋電機の買収について、買収額は適正だったと思うか。またシナジーの見込みは間違っていなかったのだろうか。買収の評価を振り返ってほしい。
A 三洋電機を買収したことで、2018年の環境革新企業への歩みがビジョンとして確立し、「まるごと事業」がかたちになったものと考えている。三洋電機を買収できなかったら、パナソニックとして大きな成長分野を見出し、大がかりなビジネスモデルを描くこともかなわなかった。この買収はパナソニックの将来のイメージを明確にするためには極めて有効だったと思っている。皆さんにも冷静に考えてみてほしいと思う。買収のシナジー/ディスシナジーを今、性急に求めるべきではない。リーマンショック以降、世界の経済環境は大きく変化した。当社ではその後の成長体制を新しく描き、買収の効果を最大化するための取組を現在進行しているところだ。これからの歩みにぜひフォーカスしてほしいと思う。(大坪氏)

Q オリンパスへの出資意図は。
A 当社からコメントすることは何もない。(大坪氏)


Q テレビ事業が現在ほど厳しい状況になる前に、何か取り組めることがあったのではないか。
A テレビ事業が現在の状況に置かれている要因については、内的・外的ともに色々あると思っている。外部要因としては韓国メーカー成長もあり、確かに技術・デザインの先進性から学ぶべきところもたくさんあるが、為替の影響を大きく影響を受けている部分もある。当社では、テレビの生産について全て自前主義を貫いてきた。当初06年・07年に意思決定を行った頃には収益を出していたが、リーマンショックによって環境が大きく変わってしまったことから大きなダメージを受けた。今後はキーデバイスであっても、自前主義をどれくらいの範囲で展開するべきか、慎重に判断を下すことが大事だと考えている。(大坪氏)

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