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折原一也のCES2009レポート

次なる流れは「3D」へ − パナソニック/ドルビーの3D方式のメリットとデメリット

2009/01/14 折原一也
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2009 International CES の会場で行われていた展示を俯瞰すると、オーディオビジュアルの新トレンドとして、3Dの存在感が非常に大きいと感じる。日本では、劇場の3D上映はさほど多くなく、3D化によるメリットは実感が湧きにくいが、米国ではデジタルシネマの普及も後押しして、次なる視点はBD規格に3Dを入れることで、家庭用3Dの普及を進めることに向き始めている。そこで今回は、パナソニックでBDの規格化を進める担当者の話を聞き、ハリウッドによる3Dを巡る状況をまとめた上で、3D収録技術の規格化を目指すパナソニック、ドルビーによる2方式のメリット・デメリットをまとめていきたい。

パナソニックの技術開発陣にお話を伺うことができた

まずハリウッドにおける3D映画の流行の背景から振り返っていこう。

3Dの映画と聞くと、赤青フィルムのメガネを使用する方式を連想する方も多いだろうが、現在の3Dの流行は2005年公開の『チキンリトル』で採用された「Real-D」方式のブレイクに始まっている。当時、映画館の設備投資の流れとしてフィルムからデジタル配信によるプロジェクターへと移行を始めており、3D上映の設備面での条件が揃っていた。そして『チキンリトル』を皮切りに3D制作の映画は、同作品の2D上映の3倍程度の売り上げ(3D上映はチケット代が1.5倍程度、集客は2倍程度)と好成績を上げるようになり、ビジネス的にも成功を収めている。

3Dは劇場のデジタルシネマへの移行期にあって設備投資を後押しする役割も果たしており、時流にあった技術として拡大を続けている。結果として米国におけるReal-D方式対応の映画館は06年末で220劇場、07年末時点で1,100劇場と急拡大している。日本では3Dへの流れは遅いものの、ワーナー・マイカル・シネマズやバルト9をはじめとして、シネコンや新設映画館も3D上映設備を備えるようになった。制作側の立場としても、ディズニーは向こう2、3年のうち、130ラインのうち16本を3D制作すると発表しており、コンテンツ側も3D重視の路線へと舵を切り始めた。また、名作アニメ『トイ・ストーリー』の1、2も3D化のリメイクを始めるなど、3D対応作品の準備も進んでいる。

もっとも、制作コスト2〜3割増ともいわれる3D映画でビシネスを成立させるためには、映画一本の売り上げの5割を占める家庭用パッケージビジネスでの販売も見込まなくてはならない。そこで、パッケージビジネスの視点からDVDからの移行を目指し、BD-JavaやBD-Liveなど新たな付加価値を作ろうとしていたBDへと白羽の矢が立てられたのだ。

民生の3Dへの上映技術はIntenational CESの展示で見られるようにまだ発展の余地のあるものだが、パナソニックはキーノートスピーチでもメッセージを寄せていたジェームズ・キャメロン監督(映画『タイタニック』の監督としても知られる)を始めとする監督へのデモと、ハリウッドの3Dクリエイターの集まるイベントでの出展などを通じてハリウッドの理解を獲得している。

3D映像を収録するBD規格の策定という視点から見ると、3Dは左右の眼の映像をディスク1枚に収録するので、情報量は単純計算で2倍になるが、相関性を使った圧縮を用いれば1.3倍程度で収録できる。このため50GBのディスクへの収録も可能で、データ伝送も60p対応のHDMI端子を使用すれば問題なく行える。

これら諸条件が揃った上で、次なるステップとして民生への進出、BDへの収録へと進もうとしているのである。

現在、BDへの3D映像収録を目指す方式にはパナソニック、ドルビーの2方式が存在している。それぞれの特徴を解説していこう。

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