伊カーオーディオブランド・クワトロリゴの新製品発表会。本国スタッフも来日、徹底したクオリティコントロールを熱弁
ブランド設立の背景とものづくりへのこだわり
イタリアのカーオーディオブランドとして、いま非常に注目の高いQUATRORIGO(クワトロリゴ)。本国からロベルト・マルコリーニさんが来日、有力ショップと愛用ユーザーも交えたセミナー&新製品発表会が開催された。

今回のセミナーには、クワトロリゴを高く評価する西日本のカーオーディオ専門ショップ(AV Kansai、ジパング、カーオーディオクラブ、イースト)と、カーオーディオユーザーが参加。本国スタッフの生の声が聞ける貴重な機会ということで、セミナーへの期待も非常に高い。
クワトロリゴは、1997年にイタリアのマチェラータ県で創業された。南北に長いイタリアのちょうど中央付近、マルケ州の北東に位置する。創業したのはロベルトさんのお父さんで、志を同じくするエンジニアと2人でブランドを立ち上げたそうだ。
創業当初から“メイド・イン・イタリア”にこだわったものづくりをおこなっており、アルミ削り出しシャーシや各種パーツ類のほとんど全てを、マチェラータの本社から60km以内にある協力工場で生産している。そのため、クオリティコントロールには大きな自信をもっているという。

ちなみにクワトロリゴというブランド名は、クワトロ(イタリア語で4番目)とリゴ(ライン=線)を組み合わせた言葉とのこと。五線譜の4番目の線をイメージしており、「イタリア的な響きの言葉であり、かつ音楽に関わる言葉」として考案されたものだという。ちなみにロゴは「指揮者が指揮棒を振っているイメージ」からインスパイアされて作られたものだそう。

ブランドが最も大切にしていることは、車の中でじっくり音楽を楽しんでもらうことだ、ロベルトさんは断言する。「私たちは特性グラフやスペックを聴いているのではありません。あくまで音楽をしっかり楽しんでほしい、と思って製品開発を行っています。その思いを日本のお客さんにもぜひ感じてほしいのです」と訴える。
現在のクワルトリゴのスタッフは4名、少数精鋭で製品開発を行っている。お父さんはもともとホーム向けハイエンド・オーディオのディーラーで、リンやソナス・ファベールなどを中心に扱っていたという。しかし、縁あって「カーオーディオの製品開発をやらないか」と声をかけられたことをきっかけに、ブランドを立ち上げることになったという経緯があるそうだ。
クオリティコントロールについては、製品の「全数検査」を行っていることも重要だという。数年前に、全数検査のための新たな検査ツールを自社で作成。20Hzから20kHzまでのサイン波を12分、さらに音楽を12分再生して、特性はもちろん聴感上でも問題がないと確認できたものだけを出荷しているという。
「カーオーディオでは、狭い車室内になんとか場所を確保してインストールすることもあります。ですから、検査も製品間の距離が5mm程度しか離れていない、ぎゅうぎゅう詰めの状態で検査しています。それでも動作に一切の不具合が起こらないことが大切なのです」。OPUSやDesiderioなど上位グレードの製品は、さらに長い時間をかけて検査を行っているそうだ。
アンプやスピーカーなど期待の新製品を初お披露目
ブランドの背景や音作りのこだわりの解説に続いて、今年発売される新製品について日本で初お披露目された。今回披露されたのは、「Elisium」(エリジウム)というパワーアンプと「Fantasia」のスピーカーシリーズ。OPUSの10インチ・サブウーファー。それに、この夏以降登場が予定されているパワーアンプ「Estremo」というシリーズとなる。

Elisiumは、トップグレードとなる「OPUSシリーズ」のひとつ下のシリーズとなり、同じPCB基板を活用しながらも、アンプの出力を下げ、シャーシデザインを簡略化しパーツも厳選することで、よりお求めやすい価格を狙った製品となる。A級アンプの「Elisium I」(60W出力)とAB級アンプの「Elisium II」(120W)を用意する。
トップにはゴールドのパネルが配置されているが、これはネジで簡単に取り外し可能。入力段についてはよりシンプル化されており、結線を短くしてより鮮度の高い信号伝送ができることに加え、ゲインは抵抗の切り替えで3段階に調整することができる。「昨今はDSPでさまざまなチューニングができるようになりましたから、ボリュームコントロールはシンプルにすることで、左右のばらつきも少なく、より高い音質を狙うことができると考えました」。

「Fantasia」のスピーカーシリーズは25mm径トゥイーター、3.5インチのミッドレンジ、6.5インチのミッド・ウーファー、10インチのサブウーファーが登場する。

特に注目したいのがミッド・ウーファーで、振動板に新たに「Rohacell」と呼ぶ発泡素材を採用する。両側からペーパーでRohacellを挟んだサンドイッチ構造で、非常に軽いが剛性感が高い。指で弾くとパリッとした付帯感の少ない音がする。

「私たちはウーファーの振動板について、紙がもっとも優れた素材だと考えています。他の素材も色々と試しましたが、私たちの求める音の方向性を実現できるのは紙である、という結論に達しています。ですが、今回の振動板では、新たにRohacellという素材を活用しています。剛性が高く、より理想的なユニットの動きを実現することができると考えています」。
さらにもうひとつ、夏以降に登場する「Estremo」についても、内部基板のみが公開された。これはFantasiaやOPUSとは少し方向性が異なり、より“コンテスト”向けの、生々しい音作りを目指したアンプになるという。いわば高解像度、高SNといったオーディオ的な尺度をより重視した音作りと言えるだろうか。

「世界中のディーラーやユーザーから、もっとこうしてほしい、こんな製品が欲しいといったさまざまな声をいただきます。そこでEstremoは、あえて私たちの技術の高さを聴いていただきたい、こういう音作りもできるのだ、ということを知ってほしい、そんな思いで開発したプロダクトになります」

既存のFantasiaとは狙う音の方向性が違うことから、併売となる模様だ。まだシャーシが未完成ということで、内部基板のみ特別に紹介してくれたが、5月にオーストリアで開催される世界的カーオーディオコンテストEMMAのヨーロッパファイナルには完成モデルがお披露目される予定とのこと。
ロベルトさんに愛車の音を聴いてもらえる貴重な機会!
セミナーの後半では、クワトロリゴのアンプやスピーカーを使っているセミナー参加者の車をロベルトさんが試聴。日本のカーオーディオファンに、どのようにクワトロリゴの製品が活用されているかをぜひ聴きたい、というロベルトさんたっての要望で、10台以上の車が集結。ロベルトさんは1台1台運転席に座って真剣に試聴、翻訳ツールを駆使して全ユーザーと丁寧にコミュニケーションを図っていた。

聴き終えたロベルトさんに感想を伺うと、「日本のカーオーディオユーザーのレベルが非常に高いことが分かりました」と嬉しい言葉。ロベルトさんは主に輸出業務を担当しており、さまざまな国のカーオーディオを体験しているそうだが、「国によってカーオーディオのチューニングのスタイルは全く違います。ですが、日本の車はクワトロリゴの目指すものをよく理解して、それをどう使いこなすかしっかり考えチューニングを行ってくれているように感じます」と大きな手応えを感じてくれたようだ。

クワトロリゴは、あくまでアンプとスピーカーという、アナログ製品にこだわった製品開発を行っている。近年はDSPの進化が著しいが、あえてそういったデジタルプロダクトには手を出さない。少数精鋭で製品開発を行っているということもあるが、自分たちの強みとするものをしっかり守り、それを理解してくれるディストリビューターと仕事をしたい、という熱い思いも伝わってきた。
最後はお楽しみの懇親会。イタリアと日本のカーオーディオ市場の違いや、今後のEV化に対する課題など、さまざまな議論が盛り上がった。ロベルトさんは懇親会の最後に、「日本のカーオーディオに熱心に取り組むお客さんたちと直にお話しする機会を得られて、とても嬉しく思っています。ぜひクワトロリゴのアンプ、そしてスピーカーを通じて、車の中でもっともっと音楽を楽しんでください」と締めくくった。

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