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テクニクスが次の50年輝き続けるブランドになるために − 小川氏が語る今後の展望

ファイル・ウェブ編集部

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2015年03月25日

名プレーヤー(=技術者)たちの持ち味を引き出す“コンダクター”

― 小川さんはテクニクスのディレクターとしての顔に加え、ジャズピアニストとしても活躍していらっしゃいます。

小川氏:3歳からクラシックピアノを始めたんですが、楽譜どおりに弾くだけではつまらなくて。テレビアニメの主題歌や、父が聴くジャズのレコードを耳でコピーして弾いたりしていましたね。もともと私はジャズ向きの人間なんだと思うんですよ。周りにあるものからインスピレーションを受けて即興で弾いたり、何かの枠のなかで最大限表現するというのがすごく好きなんです。それってジャズの醍醐味なんですね。

普段の仕事でもメンバーとの掛け合いや、色々な要素を反応させてひとつのものを作り上げるというプロセスが「あ、これジャズ的な感じだな」とふと思ったりします。そしてものづくりは、それがないとイノベーションが起こってこないものだと思います。


― 確かにそうですね。現在はテクニクスのディレクターとして、数々の名プレーヤー(=技術者)たちを束ねるコンダクター的な役割も担当されています。

小川氏:コンダクターというとおこがましい感じもしますが…。テクニクスは、パナソニックのなかでも多様な個性が集まっているチームだと思っていますし、「いろんな個性があっていいんだよ」と常々言っています。でもエンジニアというのは非常に謙虚で、極めれば極めるほど内に籠もる(笑)。良いものを持っているのに気づいていなかったり、発信していないことがあるんです。それを価値としてどうやってまとめて提供していくのか、企画・技術・マーケティング・流通まで話し合ってつくりあげるのが、テクニクスの原点だと思います。

ですから昨年の12月から今年1月にかけては、毎朝8時から技術陣とディスカッションしていましたね。新生後の第一号製品なわけですから、絶対に質の良いものを出したい。どうやったら上質感をそのままお客様にお届けできるのか? ということで、これでもか!というほどこだわり続けました。

― 音についても、小川さんが実際に聴いてフィードバックされていたのですか?

小川氏:ええ、もちろん。音づくりの方向性を決めるサウンドコミッティのなかで関わりましたし、UIの部分などにも携わりました。


“テクニクスのサウンド”が目指すもの

― “テクニクスのサウンド”というのは、どういったものを志向されていたのでしょうか?


小川氏:一言で「こう」と言うのは難しいですが…昔から掲げてきた「原音再生」という目標は引き継ぎつつ、「これが私の意見」と皆に伝えていることが2つあります。

ひとつは「音が出てくる瞬間の生命力やエネルギー感」。これは絶対になくしてはいけない、と。私自身楽器を演奏しますので、この大切さは非常に感じるんです。パッと聴いた瞬間に良いかどうかというのは分かります。それは音だけでなく、感覚・感性の世界全てに通じていると思います。先日、とあるウィスキーのチーフブレンダーの方にお話しをうかがったときに「お酒の良し悪しは口に近づけた瞬時に分かる」とおっしゃっていて、それを確信しました。

そしてもうひとつ。音楽は時間の芸術なので「長く聞き続けられるかどうか」。一瞬良い音がしても、1〜2時間も聞き続けるともういいや…となってしまうのはダメだ、と。これを私が学んだのはフロリダのジャズフェスティバルに出演したときです。これは一流のミュージシャンが、1週間のあいだ朝から晩までかわるがわる演奏するというイベントなんですが、ずっと聴いていても全く嫌にならないんですね。それどころかもっと聞き続けたい、と思う。裸で上質なカシミアの毛布にくるまれているような感覚がして…。これこそがプロの、一流のミュージシャンの音なんだと思いました。

― テクニクスのR1シリーズを聴くと、まさに上質なカシミアの毛布にくるまれるような感覚のする音だと感じます。一方で、サウンドに“キャラ”を求める方も多くいらっしゃいます。その辺りはどうお考えですか?

小川氏:強いブランドというのは、オリジナリティがあるものだと思います。「テクニクスと言えばこういうブランド」というものは、これからよりいっそう磨きをかけていきたいと考えています。


音楽を愛する人たちに、様々な選択肢を提供したい

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