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SCE開発担当者にインタビュー

“torne”発売から「約3ヶ月」の開発期間で実現したファームウェア「Ver.2.00」の中味とは

2010/06/29 インタビュー・レポート/鈴木桂水
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■進化した「トルミル情報」や、その他の主なアップデート機能

━━ AVC長時間録画や追いかけ再生以外に、ほかにはどんなところが「Ver.2.00」の注目すべきポイントですか。
渋谷氏:「トルミル情報」に新しい機能が追加されました。今まで録画側の「トル」は、現在PS3をネットワークにつないで、「トルミル情報」の機能使用をONにしているユーザーによる番組の録画予約数を実数で「●●人」とリアルタイム表示していましたが、一方で視聴側の「ミル」は人型のアイコンで番組の人気度をざっくりと確認できる機能でした。今回のアップデートでは、ミルもトルと同じように、実数で視聴者を数字で表示できるようになりました。

━━ トルミル情報と視聴率の違いはどこにあると考えますか。
渋谷氏:視聴率と勘違いされがちなのですが、まったく違います。「トルミル情報」の場合はPlayStation Networkのアカウントをお持ちで、ネットワーク上でトルミル情報をONにしている人の数になります。また視聴率は全国区ですが、トルミル情報はユーザーがお住まいの都道府県地域に限って、同じ番組を録画・視聴されている方々が表示されます。


ミルもトルと同じように、実数で視聴者を数字で表示できるようになった
石塚氏:本機能は統計情報を取ることが目的なのではなく、ユーザーの方々に、同じ番組を見ている人がこれだけ周りにいるという感覚を楽しんでいただける、ゲームのような楽しさを味わってもらいたいと考えてつくりました。

たとえば平日午後の番組は、数名しかテレビを観ていないこともありますが、ワールドカップの日本戦だと、ものすごい人が「ミル」に表示されます。自分一人でみるより、みんなでわいわい見ているような感覚を楽しんでいただき、仲間意識のような感覚が共有できたら面白いのではないかと考えました。またある特定の番組を「録画して、見ている人」の動向が分かるのも、torneを使っていて楽しめる部分だと思います。

渋谷氏:torneの楽しみ方のコンセプトとして、無理矢理ユーザーどうしをつなげるのではなく、“軽いコミュニティ”のようなものが生まれる感覚を、実際にユーザーの方々から評価していただいています。今回はトルだけでなく、ミルでもぜひ楽しんでもらいたいと思い、アップデートを行いました。

━━ これは面白い機能ですね。こちらを使ってまた新しいビジネスにつなげられると思いますが、いかがでしょうか。
渋谷氏:そうですね。もちろんビジネス的な要素もあるとは思いますが、torneを楽しんでいただくためのサービスとして発展させていければと思います。

━━ torneからオススメ情報をユーザーに向けて発信するなどのサービスはどうでしょうか。
渋谷氏:それも考えられると思います。今回のアップデートに合わせて、6月18日からtorneの公式twitterアカウント“tornev(トルネフ)”を公開しました。こちらでは“トルネフ”という“鳥(オウム)”のキャラクターが、torneに関する耳寄りな情報をリアルタイムに“つぶやく”という実験的なサービスも行っています。


twitterのキャラ「tornev」

「トルミル機能」は、今後マーケティングツールとして成長するはずと、筆者は注目している。多くのゲームユーザーが属する10〜20代は、消費動向が掴みづらく、消費に積極的でないと言われている。たとえば車、旅行、酒、などのジャンルでは、軒並み20代の消費が落ち込んでいると言われている。しかしPS3を上手に使ってマーケティングすれば、この世代のニーズを探ることができ、広告などへの発展も期待できる。

インターネットのサービス「twitter」でのトルネフ(http://twitter.com/tornev)のつぶやきもユニークだ。キモカワのキャラがPS3やtorneの機能についてつぶやいており、正式なリリース以前に情報が漏れるなど、目の離せないキャラクターだ。今後、トルミル機能とツイッターのようなコミュニティ機能がPS3上で連携すれば、面白そうだ。

ただ、ソニーは過去にも様々な独自コミュニティを立ち上げては、成功させられずに終わることが多いように思う。torneでコミュニティを作るのなら、これらの轍を踏まないよう、twitterなど既存サービスの有効活用を実現してほしい。トルミル機能が今後どのように進化するか、引き続き注目していきたい。

余談だがこのトルネフ、北欧生まれというキャラ設定なのだが、それならWRCのラリードライバーのように「トルネン」のほうがふさわしいように思うのだが(ユハ・トルネンとか)。関西風になるから却下されたのかもしれない。



━━ サムネイル登録機能が追加されましたね。
渋谷氏:細かい所ですが、使い勝手を良くしてみました。以前、torneのカスタマーサポートに「自分の録画した映画のサムネイルが、劇中のシーンじゃなくテレビCMから取られてしまったので、これを自由に設定できるようにしてほしい」という声をいただいたことがありましたので、今回はユーザーの方々の要望をこちらでも反映させたかたちです。


録画した番組の任意の映像からサムネイルが登録できる
石塚氏:サムネイルも自分で決めて、録画した番組をコレクションする喜びを感じていただける、ということも大事だと思いますので。

渋谷氏:テレビの視聴・録画もゲーム的な楽しみ方で使っていただきたいと思います。登録したサムネイルは、torneのメニュー画面に表示される円形のアイコンにも表示されますので、カスタマイズしがいがあると思います。


サムネイルの変更はお気に入りの場面で、デジカメのシャッターを押すような感覚で操作できる。ゲームコントローラで操作するので、ゲーム感覚で好きなシーンをセレクトできて楽しい。


━━ 機器連携についてはいかがでしょうか。
石塚氏:PSPへの録画番組の書き出し速度が少し速くなっています。以前は2.3倍〜2.5倍だったものを、2.6〜2.9倍にチューニングし、高速化しています。おそらく実際に体感いただけるレベルの差になっていると思います。torneで録画したコンテンツを気軽に持ち出していただくための機能向上は、私たちも常に模索しています。特に首都圏にお住まいの方々は通勤時間が長いので、時間が空いたときに見られる使い勝手を上げて行きたいと考えています。

━━ ウォークマンへの転送機能もぜひ実現して欲しいと思います。
渋谷氏:実際にソニーグループ全体として検討すべき内容と思っていますので、前向きに検討したいと考えています。


筆者としてはPSP転送の使い勝手をもっと改善して欲しかった。残念ながら以前の記事で指摘した部分(PSPを接続していないと、転送用動画ファイルへの変換が行えないなど)は改善されていなかった。変換速度の向上よりも、転送したいときにはすでに「転送用動画ができている」ほうが使い勝手がいい。ウォークマンへの対応も急務だろう。

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