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HQCDで登場!キリンジの最新ベスト・アルバムを聴く

キリンジ・堀込泰行さんが体験したビクター“ウッドコーンシステム”のサウンド

公開日 2008/12/02 11:40 インタビュー/Phile-web編集部
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■ベストアルバム『KIRINJI 19982008 10th Anniversary Celebration』でキリンジが追求したサウンド

−−12月10日にはいよいよキリンジ初のベストアルバム『KIRINJI 19982008 10th Anniversary Celebration』がリリースされますが、どんなアルバムに仕上がりましたか。


堀込:キリンジがメジャーデビューしてから10年間のあいだにつくってきたタイトルから全30曲を2枚組のボリュームで収録した、ベスト盤をリリースします。今回全トラックのマスタリングを、世界的に有名なエンジニアのTED JENSENさんに担当してもらいました。あとは通常のCDよりも音質の良い“HQCD(Hi Quality CD)”を記録媒体に使っています。

−−2枚組のそれぞれはキリンジのお二人で制作してきた作品から、泰行さんの作詞作曲盤「YH-SIDE」と、兄・高樹さんの作詞作曲盤「TH-SIDE」に分けて収録されていますが、選曲のポイントについてはいかがでしょうか。

堀込:そうですね、自分たちの10年間の活動から、色んな時代の作品が収録されているので、例えば最近キリンジを好きになってくれた方で「どこから聴けばいいのかわからない」という方にも“入門盤”としてぴったりな作品だと思います。

−−今回、どんなきっかけでHQCD(Hi Quality CD)でのリリースが決まったのでしょうか。

堀込:最近は録音やフォーマットの技術も進化して、僕自身もデジタル音楽の質がますます高くなっているなと感じていました。高音質ディスクもHQCDだけでなく、様々なフォーマットが登場してきて、実際に聴き比べてみると明らかに音質の違いがわかります。はじめは周りの方々に「キリンジの作品をHQCDでやってみたらどうだろう?」と、提案をいただいたことがきっかけだったんですが、HQCDのクオリティを目の当たりにして、僕たちもこれならやってみたいなと思いました。

−−マスタリング・エンジニアにTED JENSENさんを起用されたことで、キリンジの作品にどんな影響がありましたか。

堀込:今回はすでにキリンジとしてリリースした作品をまとめたベスト盤だったので、少しいつもの作品づくりとはスタンスを変えて、海外の一流エンジニアの方にマスタリングをまかせてみてはどうだろうかと考えました。自分たちの音楽の音像がどんな風に変わるのか?聴こえ方もどう変わるのか興味があって、TEDさんにお願いすることになりました。いつもは自分たちの信頼を置いているマスタリングエンジニアの方にお願いして、現場に自分たちも立ち会いながら、1から10までこだわって作品を仕上げていますが、今回は「人にまかせてみるのも面白いかな」と思って決めました。自分たちの音楽にも少しそんな余裕が出てきたんでしょうね。マスタリングが完成したトラックを聴いて、無理のないマスタリングに仕上がって満足しています。良くなったところや、「やっぱりTEDさんに任せて良かったな」と思えたところがありました。

−−アルバム全体として、どんなサウンドに仕上がりましたか。

堀込:HQCDの音に“奥行き感”があるように思います。ボリュームをどんどん上げていっても飽和しない感じというか、アナログレコードを聴いている時に感じた「音の良さ」みたいに、“前に出てくる”というより、“奥行きが深くなっていく”ような音の良さです。決して派手に聴こえるわけでもなく、ちゃんと音量を上げて音楽を聴きたくなるサウンドだと感じます。

出来上がった作品を自宅のウッドコーンシステムでも聴いてみましたが、マスタリングの違いも楽しめました。ギターの音がより立っていたりであるとか、中には「ああ、なるほど。こういうマスタリングだったら、当時この曲ももっと好きだったかもな」と思える発見もありました。きっと昔からキリンジの音楽を好きでいてくれる人にも、新しい魅力が発見できるベストアルバムだと思います。


−−本作はキリンジのメジャーデビュー10周年記念盤ということで、ひとつの節目にあたる作品だと思いますが、キリンジの音楽を振り返ってみて、これまでどのように進化してきたと感じていますか。

堀込:昔は自分たちがつくる曲に、自分たちのスキルが追いついていないというもどかしさがありました。例えば僕だったら、ボーカルがちゃんと歌いきれていないとか。あとは、あれこれ入れたい音を全部詰め込んでしまう傾向があって、言ってみれば“頭でっかち”なところがあったんですが、少しずつキャリアを積んできて、多少腕前も上がったと思いますし、最近はより自然に音楽ができるようになってきたんじゃないでしょうか。

−−音楽をつくる“ゆとり”みたいなものができてきたと。

堀込:そうですね。“間引いてみる”ことを覚えたように思います。デビューしたてのころは、“アナログっぽい音”に必要以上にこだわるばかりに、他の音楽と聴き比べた時に地味になっていたということもありました。今では自分たちの聴く音楽がだんだんと変わってきたということもありますけど、現代的な音や音像に対しても「あ、面白いね」と思えるようになってきました。そんな過程の中でも、良い音とそうでないものがあるということが見えてきたし、「何が何でもアナログじゃないといけない」という偏りもなくなってきました。

−−アルバムには新曲「星座を睫毛に引っかけて」も収録されていますね。

堀込:この曲は兄の作品ですけれど、兄の中でも最近、つくる曲の傾向が少し変わってきたという実感があるみたいです。兄は僕よりも凝った曲をつくるほうで、昔はよく「持っているテクニックを全部出して曲に注ぎ込むというスタンスがサービスだと思っている」と言っていましたが、最近は持っているスキルで全力投球するよりも、「聴いてくれる人が楽しめる曲であることを大事にできるようになった」と言っていました。これは今までの兄にはなかった傾向だと思います。


初回盤ジャケット


通常盤ジャケット
【12/10リリース キリンジ・ベストアルバム】
KIRINJI 19982008 10th Anniversary Celebration
コロムビア ミュージックエンタテインメント(COCP-35308-9) ¥3,300(税込)

キリンジのデビューから10周年の軌跡を集約した“初ベストアルバム”が、高音質な「HQCD(=Hi Quarity CD)」で登場!ファン待望の新曲『星座を睫毛に引っかけて』を含む、全30曲を収録した豪華2枚組。今回はエンジニアにイーグルスの『ホテル・カリフォルニア』やビリー・ジョエルの『ザ・ストレンジャー』を始め数々の名作を手がけ、ノラ・ジョーンズのアルバムではマスタリング部門のグラミー賞を受賞した世界最高峰のエンジニア・TED JENSEN氏を起用した、キリンジのファンのみならず、オーディオファンも必聴の決定盤。初回生産分のみスリーブケース仕様。
>>コロムビア ミュージックエンタテインメントの作品情報

Disc1【YH-SIDE】
Disc2【TH-SIDE】
01 双子座グラフィティ
02 冬のオルカ
03 BBQパーティー
04 銀砂子のピンボール
05 エイリアンズ
06 むすんでひらいて
07 フェイバリット
08 太陽とヴィーナス
09 カメレオンガール
10 スウィートソウル
11 YOU AND ME
12 ブルーバード
13 Lullaby
14 ジョナサン
15 Ladybird
01 ニュータウン
02 汗染みは淡いブルース
03 牡牛座ラプソディ
04 ダンボールの宮殿
05 イカロスの末裔
06 悪玉
07 千年紀末に降る雪は
08 Drifter
09 僕の心のありったけ
10 愛のCoda
11 Golden harvest
12 Love is on line
13 朝焼けは雨のきざし
14 今日も誰かの誕生日
15 星座を睫毛に引っかけて


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