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公開日 2025/12/28 07:00
多面体構造がスピーカーにも効果的

【今年の素敵なお買い物】マークオーディオのガラス振動板ユニットで、12面体スピーカーを作ってみた!生形三郎さん

生形三郎

PHILE WEBのライター陣の今年の購入した「お気に入りアイテム」を披露! オーディオアクティビストして、時にオーディオ評論家、時に大学教授として後進の育成に当たっている生形三郎さんのお気に入りは、なんと自作の「12面体スピーカー」!マークオーディオのガラス振動板を活用したユニットを活用して作り上げたスピーカー、その音の魅力はいかに?



マークオーディオのスピーカーユニットを活用して作り上げた「12面体スピーカー


オーディオの醍醐味は「自作」にあり!


今年もっとも印象に残った買い物は、スピーカーユニットだ。


筆者は常々、オーディオの醍醐味は「自作」にこそあると思っている。その心は、自分好みの音に仕上げられる、という一点に尽きる。


そんな中、本年、他では決して味わえないほどに透明性の高いサウンドを堪能できる驚きのスピーカーユニットが登場した。それが、NEG(日本電気硝子)製の特殊極薄ガラス(”UTAG”=Ultra Thin Acoustic Glass)を振動板に用いた、マークオーディオ「Alpair 5G」である。



UTAGは、折りたたみスマートフォン用に開発された極薄のガラス素材だ。本来はスマホ用に開発されたものだが、アルミニウムよりも軽量で、チタンよりも音の伝達速度が早く、ペーパーの半分程度の内部損失を持つという、スピーカーユニットの振動板に理想的な特性を備えている。


そこにマークオーディオが着目。クラウド・ファンディングですぐさま話題を呼び、瞬く間に総額3,000万円もの資金を集める結果となった。


マークオーディオは、小型メタルコーン・フルレンジスピーカーの先駆者とも言えるEJ Jordanの流れを組む、アルミ・マグネシウム合金を振動板に採用し、なおかつ、ロングストローク設計による驚異的な低域再現力を持ったフルレンジユニットメーカーとして名を馳せる存在だ。その小さな口径サイズからは信じられないほどの深い低域再現と、躍動的で瞭然とした音楽表現が魅力のユニットメーカーである。


そんなマークオーディオが新たな領域に到達するべく挑戦したのが「Alpair 5G」なのである。その刺激的なまでに透明感溢れる音色表現と俊敏なレスポンスは、他では決して味わうことができない境地に達している。


このユニットで音楽を聴くと、普段筆者がリファレンスの一つにしているチャンデバ&マルチアンプによるスピーカーシステムも、まだまだ詰める領域があると実感させてくれるし、スピーカーという存在が本来秘めている音表現の可能性の広大さを想像させてくれる。


複雑な多面体構造がスピーカーにも効果的


さて、具体的にこの「Alpair 5G」を使ってどのようなスピーカーを作ったのかというと、既製品のスピーカーでは中々得ることができない、12面体形状のスピーカーを作ってみた。



自作ならば思い通りの形のスピーカーを作成できるのも大きな魅力


12面体というのは、五角形の面が、文字通り12面で構成された多面体で、球体に近い形をしている。これは、スピーカーの理想形とも言える点音源に近づくための形であり、スピーカーキャビネットの表面に音が反射することで、スピーカーユニットから出る音が乱れることを抑えるための措置である。


この形状は、12面という面の多さと、それに伴って各面の板材の接合面が、コンマ単位での角度の切断精度を要求されるため、非常に加工の難易度が高くなる。それだけに、木工技術はもちろん、精度の高い工具や治具の準備は必要となってくる。



組み立て時、位置がずれないようにあらかじめマスキングテープで仮止めを実施


しかしながら、Alpair5Gの音を聴いて、これこそ多面体スピーカーの特長を活かせるユニットだと確信したため、製作を決意した。今回は、精度を追求したかったのと、使える時間も限られていたため、木材カットはプロに依頼することにした。


サイズに関しても、手頃なサイズ感を重視して、大きすぎないサイズとした。メーカーが推奨する3.5リットルの容積を目安に、無理に低音を伸ばしたり良感を増やそうとすることなしに、オーソドックスなバスレフ型を採用。


せっかく小型フルレンジスピーカーユニットのコンパクトさを犠牲にしてしまうのは実にもったいないし、筆者自身、自宅の特定の場所に据え置いて音楽を楽しむのはもちろん、部屋を移動させて楽しんだり、さらに、出先での録音モニターや作曲時のモニターとしてハンドリングよく使用したいという狙いがあったからだ。



強度がしっかりと出るように、接着時はクランプバンドを使って締め上げた




接着後は面取りとオイルフィニッシュを実施


実際に作ってみてまず驚いたのは、吸音材が不要だったということ。通常、スピーカーは内部で起きる音の反射の影響を抑えるために、キャビネットの内部に吸音材を充填するのだが、複雑な多面体構造ゆえか、吸音材を入れずともクリアなサウンドを楽しむことができた。これも、Alpair 5Gならではの透徹したサウンドを存分に楽しませてくれる結果となった。


透明度高く、独特のキレの良さが心地よい


サウンドだが、一言で言うと、ソース内の情報をとことん掘り尽くす再現性といえば良いのだろうか、とにかく明瞭度の高い視界が展開する様に驚かされる。目を見開かされるかのような、まるで自分の聴覚が研ぎ澄まされたかのような感覚を受けるのである。Alpair 5Gの描写力に12面体スピーカーの点音源性が相まって、驚くほどに瞭然とした音世界が立ち現れる様が快感なのだ。


ガラスと聞くと硬質なサウンドをイメージされるかもしれないが、耳障りな鋭さは一切なく、固有音もほとんど感じない。とにかく、透明度の高い音なのである。音の切り込みの早さ故か、独特のキレの良さがあり、それが心地よい刺激となって、スピーカーリスニングによる高い充実度を味わわせてくれる音だと感じる。


スピーカーから音が鳴っている感がなく、ただただ音がそこに現れるイメージなのだ。純粋な音楽のリスニングでもちろんそれが堪能できるのだが、映像と合わせて楽しむとより不思議な感覚になってくる。スピーカーのすぐそばにモニターなりノートパソコンなりを置いて音を聴いていると、まるで映像そのものから音が発せられているような感覚に陥るのだ。


昨今はオーディオ機器の価格が大幅に上昇しているが、こんなにもピュアで透明性の高いサウンドが、たった23,000円(ユニットペア)ほどで手に入ってしまうということに、ただただ嬉しい驚きを感じさせるスピーカーユニットである。 そして、それを自分好みの音に料理する自作の楽しみは、やはり何にも変え難い魅力があると体感した2025年だった。


生形三郎さんの今年の注目記事!



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