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公開日 2025/05/15 17:00
音質にも使用感にも手を加えた4モデル

オーディオテクニカ「AT-VM700xシリーズ」最速レビュー! 9年ぶりに生まれ変わったVM型カートリッジの実力は?

小原由夫

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カートリッジの発電構造にMC型とMM型があるのは、よく知られるところ。おそらく市場にある90%以上がどちらかに分類される。


では、オーディオテクニカのVM型はどうなのかというと、MM型に似てはいるが、磁気回路を構成するマグネットがデュアルムービング型というのが最も大きな違い。汎用的なMM型が1つの大きなマグネットを使っているのに対し、VM型はL/Rの音溝それぞれに対して独立したマグネットをV字型に配置。広帯域と優れたチャンネルセパレーションを実現した同構造でカッターヘッドと相似形が叶い、世界特許を取得していた。ここにオーディオテクニカVM型の真骨頂がある。


その最上位ライン、「VM700」シリーズが、新たに「AT-VM700x」シリーズとしてほぼ9年ぶりにリニューアルされる(AT-VM500x/600xシリーズも同時発表)。本稿では「AT-VM700x」シリーズにフォーカスを当てて、サウンドインプレッションを紹介する。



 


音質だけでなく使い勝手も向上。旧モデルからの進化の数々


VMシリーズの歴史を遡ると、1979年に登場したAT100系シリーズの「AT120E/G」がその起点となろう。後に国内では「AT150MLX」、海外では「AT440ML」といったロングセラー機が記憶に残るが、国内/海外で個別の開発体制であったものを世界共通仕様として一本化したのが、今回のニューモデルの先代機群となる2016年発売のグローバルモデルラインナップ「VM700/600/500」シリーズである。


今般のリニューアルにおける企画意図は、以下のようになる。


■インテグレーテッド型トーンアームの取り付け性の向上


従来型の取り付け穴は、ビスとナットを前提とした貫通穴だったが、欧米で主流のインテグレーテッド型トーンアームには、この仕様では取り付けが煩雑であった。今回ネジ切りの穴にしたことで、ナットを用いずに固定することができるようになった。



インテグレーテッド型トーンアームでも使いやすいよう、取付け穴にネジ切りを施した


■ボロンカンチレバーの採用(AT-VM760xSL/AT-VM750xSH/AT-VM745xML)


従来のアルミニウムパイプカンチレバーから、無垢のボロンカンチレバーへの変更によって音速が倍以上になり、振動伝播性能が高まった。


■ラインコンタクト系スタイラスの軽量化


従来型の針先に比べ、スタイラスチップの形状や長さを見直すことで、従来品と比べ大幅な軽量化を果たしている。これは振動の伝達効率の向上に直結すると思われる。なお、アルミテーパーパイプ仕様の「AT-VM740xML」については、従来通りのスタイラスを採用している。


■新導体を発電コイルに採用


従来機は6N-OFCを使っていたが、新シリーズではPCUHD(Pure Copper Ultra High Drawability)導体を全面採用。新しい高純度無酸素銅線によって音楽の表現力が向上したという。また、カットアンドトライと試聴の繰り返しにより、コイルのターン数を6%軽減。先代機に比べて出力が下がったが、今回は音質的メリットを取ったことになる。



内部構造イメージ。コイル素材や巻数刷新のほか、ノイズ干渉を抑制するために左右のコイル間にセンターシールドプレートを設けるなどの仕様は従来モデルを踏襲している


サウンドパフォーマンスに関わる変更点は以上だが、プラスチック材料の大幅軽減や、流通に配慮したサブカートンの追加など、パッケージの内容を現代の世界的潮流(SDGs)に合わせたものにした点も、グローバル企業としてのオーディオテクニカの姿勢の表れだ。


今回テストした「AT-VM700x」の4機種は、アルミダイキャストハウジングが共通仕様。したがって交換針ユニットを変えるだけで音の違いが楽しめる互換性を備える。「AT-VM760xSL」と「AT-VM750xSH」「AT-VM745xML」の3機種がボロンカンチレバー、そして、前記したように「AT-VM740xML」がアルミニウムテーパータイプのカンチレバーを採用している。



互換性を備えたアルミダイキャストハウジングを採用。交換針を取り替えるだけで音の違いを楽しめる

 

「AT-VM700x」シリーズのサウンドをチェック!

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