<香港ショウ>Wilson Audio「autobiography」初音出しデモ。「過去最高レベルの仕上がり」
2026/08/09
ハイエンドオーディオの輸入商社・ステラとゼファンの新製品発表会が、有楽町の国際フォーラムにて9月12日(土)に開催された。テクダスの最新アナログプレーヤー「AIR FORCE 20」が国内初お披露目されたほか、WILSON AUDIO、MARTEN、VIVID AUDIOの最新ハイエンド・スピーカーを改めてじっくり試聴できる機会となった。
全国のオーディオショップやVIP、メディア関係者などを招いての発表会で、2020年以来6年ぶりの開催となる。第一部はゼファン取扱製品、第二部はテクダスを含むステラの取扱製品を中心に、最新プロダクトとその製品に込められた技術解説が行われた。
ゼファンの時間では、スウェーデン・MARTENの「Coltrane Quintet Statement Edition」をメインに据え、CH Precisionのエレクトロニクスを活用して再生を行っていた。ゼファン社長の安藤氏はMARTENについて、「昨年の東京インターナショナルオーディオショウでは、本国からフラグシップであるColtrane Supreme Extremeをぜひ持っていきたい!という強い要望がありました」と振り返り、より現実的な価格である本機を紹介する機会を伺っていたと語る。
本機の特徴は4つの振動板素材がすべて異なる点で、1インチのトゥイーターはダイヤモンド、3インチのミッドレンジはベリリウム、7インチのミッドバスはカーボンファイバー、10インチのウーファーはアルミニウムを採用している。もうひとつのこだわりが6dB/octの一次クロスオーバーの採用で、位相のズレや時間軸のズレを避けるよう設計。「フルレンジのようなつながりの良さを感じてほしいです」と安藤氏は訴える。
再生システムには、CH PrecisionのSACD/CDトランスポートの「D10」(2筐体)と、DAコンバーター「C10 Conductor Full Mono」(5筐体)というフラグシップラインが集結。安藤さんによると「CH Precisionは“CDバカ”」と言いたくなるほどに、光学メディア再生に心血を注いでおり、究極の再生システムを完成させた。
ちなみにトランスポートとDACの間は独自の伝送方式「CH Link」を採用しているが、近年はInnuos等のハイエンド・ネットワークトランスポートブランドにもこの伝送方式を提供している。CH Precisionとしては「ストリーマー製品はやらない」という考えがあるようで、ネットワーク技術に強みを持つハイエンドブランドと組んだソリューションを提供していくようだ。
デモンストレーションもすべてCDで行われた。ムローヴァのバロック・ヴァイオリンや、日本のジャズシンガー、チコ本田のライヴ録音、ハリー・コニック・ジュニアのビッグバンドなどを再生。いずれもトランジェントの良さやダイナミックレンジをたっぷり味わわせてくれる録音で、まだまだ「CDから引き出せる音がある!」と確信していることが伝わってきた。
特に印象的だったのが、バロック音楽の作曲家、ベネデット・マルチェッロの「ハープシコードのためのソナタ」。チェンバロのクリスタルな質感や伸びやかさはなかなか他では体験できない音で、MARTENの高精度ドライバーの音色の豊かさ、時間軸の揺らぎを許さないピントのあった表現が胸にダイレクトに迫ってきた。
10分間の休憩を挟んで第二部はステラの時間。世界的にもますます存在感を高めているテクダス、その最新アナログプレーヤーである「AIR FORCE IV」と「AIR FORCE 20」の2モデルを中心に、レコード再生に特化してデモンストレーションが行われた。
まずはWILSON AUDIOの「Sabrina V」、明るいイエローのキャビネットが目を引くスピーカーが登場。以前の「Sabrina X」からミッドレンジのサイズが大きくなって中低域の充実度が上がった他、特殊素材「V-Material」の採用により、立ち上がり/下がりもより早くなったと解説。小型でセッティングの自由度も高いスピーカーだとアピールする。
こちらは「北村英治スイング・セッション」のダイレクトカッティング盤(1978年)を「AIR FORCE IV」にて再生。ライブの熱気をそのまま伝えるパワフルなサウンドが印象的で、ステージの奥行き感やアーティストの息遣いまで見えてくるよう。骨格感ありながらも音楽を前へと推進させるエネルギー感、WILSON AUDIOの新たな一面に出会った気分。
続けてスピーカーをVIVID AUDIOの「GIYA H1 Cu EX」に、アナログプレーヤーは「AIR FORCE 20」に変更。アンプもGOLDMUNDの「MIMESIS REFERENCE」「TELOS2800」と一回り大きなものに変更。「AIR FORCE 20」は「AIR FORCE Zero」にも搭載された技術がふんだんに投入された挑戦的なモデルで、ウィーン・ハイエンドで発表以来、世界的にも注目が高い。
2014年に発表された「AIR FORCE TWO」で得られた「中低域の重厚なサウンド」を出発点にしつつ音質をブラッシュアップ。オイルダンプサスペンション機構を改良して搭載した他、最高強度のA7075アルミフレームの採用、40kgの質量を持つステンレス製ベースフレームなど、さまざまなマテリアルを最適に配置。ZEROと同じ仕上げ工程で作られているブラックボディも、世界各国からの要望を踏まえて作られたものだそうだ。
ステラの堀川社長も「過去14年間の技術のいいとこ取りしたものとなります。試作してみたら、思ったよりもすごいものが出来てしまいました」と自負する。REFERENCE RECORDINGのオーディオショウ定番楽曲、コープラン「市民のためのファンファーレ」では、ダイナミックレンジの広さと高い瞬発力で会場を虜にする。
最後は玉置浩二の「メロディ」のボーカルでしっとりと締める。噛みしめるような声の情感、ギターの艷やかさ、過去に何度となく試聴してきた音源から新しい発見が得られるのは、優れたオーディオ機器のなせる技と改めて感嘆する。
また、今後の新製品として、テクダス「Air Force One Premium Limited Edition」が全世界25台限定で発売されると発表された。香港オーディオショウでは先行披露されており、さらに音質を追い込んで正式発売するという。砲金とチタンのプラッターの組み合わせ、AIR FORCE TWOでも採用されたフライホイール搭載エアベアリングモーターユニットなど、テクダスの“集大成”として期待。
またブルガリアのTHRAX(タラックス)からは、フォノイコライザー「COTYS」に続いて、コンパクトなDACつきプリアンプ「Janus」と、モノラルパワーアンプ「D-mono」も登場。真空管にもデジタルにも強みを持つブランドだそうで、「スモール・ラグジュアリーなオーディオシステムをお探しの方にぜひおすすめしたいです」とアピール。
ゼファンの新製品としては、Wattson Audio初の光カートリッジ対応フォノイコライザー「Madison Phono」が登場。他のMadisonシリーズ同様コンパクトな筐体となっているが、内部で384kHz/24bitにAD変換してからデジタル領域でイコライザーカーブを調整するというもの。また入力は電流入力/電圧入力/光カートリッジ入力の3系統から、注文時に選択するものとなっている。また、出力はデジタル/アナログの双方に対応する。
もう一つ注目が、日本初上陸となるイギリスのトーンアームブランド「SUPATRAC」。2022年に創業された新しいスタートアップ・ブランドで、物理学の学位を持つリチャード・ブレイン氏が、コロナ禍にトーンアームの研究を重ねて立ち上げたブランドだという。ユニピボット方式の弱点を克服するべく、横向きにピボットを設置するという技術で特許を取得。「Black Bird」と「Night Hawk」の2種類を用意しており、「高価な素材などを使っているわけではなく、あくまで技術力で勝負しているブランドとして、ぜひ注目してください!」とのこと。
10月に開催される東京インターナショナルオーディオショウでは、今回登場した新製品に加えて、WILSON AUDIOのフラグシップスピーカー「autobiography」が国内初披露される他、MARTENの「DEXTERシリーズ」、Constellation Audioの「Performance 2シリーズ」なども持ち込まれる予定だという。
今年の秋のハイエンドオーディオ市場、その活性化に期待が高まる。