エソテリック、至高の6筐体を味わう。最高峰「Grandiosoシリーズ」が実現した究極のデジタル再生
高品位な製品ラインアップで世界のオーディオファンに広く知られるESOTERIC(エソテリック)。中でもフラグシップである “Grandiosoシリーズ” は、高音質のために一切妥協をせず生み出された製品群である。
今回は、そのGrandiosoの最上位モデルでデジタル再生システムを構成してみた。最新ネットワークトランスポート、電源部を別筐体としたSACD/CDトランスポート、左右チャンネルを完全にセパレートしたD/Aコンバーター、クロックジェネレーターのトップモデルからなる6筐体構成の弩級システムを角田郁雄氏がじっくりと堪能した。
究極のワンブランド・ハイエンド・システムが完成
照明が落ち、暫時、静けさが走る。やがて、舞台は始まる。ヴァイオリンパートの高い旋律はシルクのように柔らかな響きを放ち、低音弦パートには、木質感を伴った重厚な響きが聴ける。色濃い木管、輝きに満ちた金管など色彩鮮やかな響きが空間に交差する。プライスとステファノの歌唱に深遠と官能が漂い、その場で聴いているかのような力感と巧みな声使いに、思わず、息を飲む。まさに絶品の歌唱。
演奏の臨場感だけではない、一期一会の録音の空気感、奏者たちの情念までも見えてくる。これは、カラヤン指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団による『プッチーニ:歌劇「トスカ」』をセパレートSACDプレーヤーGrandioso P1X SEとD1X SEで堪能した印象である。
エソテリックは、このオリジナル・マスターを独自の機材でマスタリングし、SACD化を果たしてしまった(ESSD-90298/99)。そのマスタリング技術の根幹を成すのは、頂点を極めるGrandiosoシリーズに搭載した最新技術だ。
内田光子『モーツァルト・ライヴ・イン・コンサート』(ESSD-90300/01)も聴いた。まだ完璧なハイレゾ録音に到達していない1991年の録音だというのに、あたかも失われた情報が補完されたかのような、デリケートなピアノタッチや響きの余韻を感じとってしまった。そこには、解像度の向上という言葉だけでは解決できない音楽の深淵がある。音楽が躍動する。
最近、イマーシブ・オーディオという方式がある。私にはまだ従来方式と区別できないところがある。本機のように、録音に内包する音楽そのものが高品位に高解像度に再生され、音楽に浸ることができれば、イマーシブではないかと思ってしまう。
ネットワークトランスポートを使いQobuzも再生
近年愛聴するECMレーベルのアルバムをQobuzで聴いた。「静寂の次に美しい音楽」を制作ポリシーとしているだけに、トルド・グスタフセン・トリオのストイックさを感じさせる美音に惚れた。
その音を再生したのは、最新のネットワークトランスポート、Grandioso N1Tだ。モノラルDACのD1X SEと組み合わせ、とてもストリーミングとは思えない、演奏の臨場感、空気感を醸し出してくる。音場も3次元的に広い。
本機は、第4世代のエソテリック・ネットワーク・エンジンG4を搭載し、ネットワーク/オーディオ回路/コントロール用、3系統のリニア電源を搭載している。DACへは左右独立のHDMIケーブルで接続し、NASやハブから伝わるノイズを遮断するため、SFPポート(光ネットワーク入力)も装備。もちろん10MHzマスタークロックジェネレーター、Grandioso G1Xも接続できる。
そして、このN1Tの登場により、比類なきGrandioso Ultimate Digital Playback System(グランディオーソ究極のデジタル・プレイバック・システム)が完成したのである。それは、Grandioso N1T/P1X SE/D1X SE/G1Xによる壮大な6筐体である。
これらに加えて、プリアンプとしてGrandioso C1X soloを、パワーアンプにGrandioso S1Xを使用すれば、愛用のスピーカーとともに究極のワンブランド・ハイエンド・システムが完結する。
美しいデザインに内包された独自技術
私が常々感じることは、それぞれのデザインが美しいことだ。フロント上下の湾曲した美しいウェーブデザインには、単なる高剛性アルミの高精度切削ではなく、ひとつひとつハンドメイドされた質感が漂っている。末長く愛用できる佇まいがあるのだ。そして、卓越したMaster Soundを冠するテクノロジーを搭載している。
その代表とも言えるのが、Master Sound Discrete DACとClock。前者は、FPGAに独自のアルゴリズムを投入し、ΔΣモジュレーター(変調器)を構成。ここで処理された精度の高いビット信号は、32組の回路エレメントを2組、円形上に配置した構成のDACでDA変換される。
1エレメントは、抵抗、ロジックIC、電源などで構成され、32回路それぞれが独立。実に壮大だ。DA変換としては、抵抗が主役となるが、高音質と高精度を両立するため、メルフ抵抗を採用。さらに重要なことは後者で、システム全体のジッター低減と正確なクロック・タイミングが不可欠となる。
その効果をさらに進化させるために、G1Xでは、使用環境の微妙な温度変化にまで対応する独自の大型OCXOモジュール、Master Sound Discrete Clockを搭載した。さらにネットワークプレーヤーやSACDプレーヤー内蔵クロックもディスクリート化され、For Digital Playerモジュールも開発し、D1X SEにも標準搭載。
音質に影響するローパス・フィルター(出力段)、自社開発のディスクリートアンプ素子、IDM-01を採用し、この結果として、スルーレート、2000V/μsの電流強化型バッファーやES-LINK Analogの音質向上にも貢献した。これらの内部技術を見ると、高精度測定器と同様、オーディオマインドが掻き立てられるほどの精密さがある。複雑な基板に見えるが、伝送距離も最短である。
長く愛用できる壮大なシステム
そして近年注目されているのが、前述の独自の電流伝送方式、ES-LINK Analogだ。長い伝送ケーブルの容量やインピーダンスの影響を受けず、ピュアに信号を伝送するため、再生音源の全てを出し切っている印象を受ける。
それは、消え入りそうなピアノの余韻を聴けばよく分かる。ヴォーカル曲を聴けば、歌い手の実在感が鮮明になる。極めて高い空間描写性だ。Qobuzの音も、ディスクの音も、過去に体験しなかったほど、生々しく再生してくる。
確かに高価なモデルだが、普段からホールでクラシックを聴かれる方にとっては、そのコンサートを彷彿とさせる音楽再生力に感激することであろう。往年のジャズを聴かれる方にとっては、まさにその時代に遡り、録音場所に臨席している感覚に陥ることであろう。
長く愛用でき、アップグレード体制もある壮大なシステム。そこには、ドイツのバウハウスの芸術を思わせる佇まいがある。エソテリックの技術開発は、音楽制作とともにある。
(提供:ティアック)































