公開日 2025/05/26 13:58

カッシーナ・イクスシーの日本独自ブランド「IXC」がリブランディング。その意図と新製品の狙いを新アートディレクターGamFratesiが語る

「ixc. EDITION」から「IXC」へ
編集部:松原ひな子
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ホームシアターの構築にも密接に関係する要素がインテリア。そのインテリア分野における老舗であるカッシーナ・イクスシーは、日本発の同社オリジナルブランドIXC(イクスシー)の50周年を機に、ブランディングを再構築していくことを発表。これに合わせ新作コレクションを発表した。

過日に開催された発表会には、新たにアートディレクターとして就任したデザインスタジオ「GamFratesi(ガムフラテージ)」のStine Gam(スティーネ・ガム)氏とEnrico Fratesi(エンリコ・フラテージ)氏が来日。彼らの口から語られた、リブランディングの意図、新作コレクションのでの狙いとは?

「ixc. EDITION」から「IXC」へ

イクスシーはこれまで独自にセレクトした海外ブランドのアイテム「ixc. SELECTION」と、国内外の著名デザイナーやインハウスデザイン(R&D)によるオリジナルブランド「ixc. EDITION」の総称として家具やインテリアなどアイテムを取り揃え、トータルコーディネート提案を行ってきた。

今回のリブランディングではixc. EDITIONをIXC(イクスシー)と改め、アートディレクター・ガムフラテージによるブランディング、新しい製品の開発と、これまでのアーカイブを活かしたものづくりも行い、ブランドの魅力を一層強化していくという。

ガムフラテージは、デンマーク人建築家のスティーネ・ガム氏と、イタリア人建築家のエンリコ・フラテージ氏によるデザインスタジオ。日本と北欧の建築スタジオで建築家として経験を積んだ後2006年に独立、現在はコペンハーゲンを拠点として国際的に活躍している。イクスシーがアートディレクターを外部デザイナーに依頼するのは、ブランド創設以来初の試みとなる。

ガムフラテージがデザインした第一弾製品は、リビング、ダイニング、ベッドルームのコレクション。ラインナップは下記の通り(表記いずれも税込)。

【PLATO(プラトー)シリーズ】
・「PLATOソファ」:594,000円(1人掛アームレス)〜
・「PLATOベッド」:1,012,000円(クイーン)〜
・「PLATOキャビネット」:1,826,000円〜
・「PLATOサイドキャビネット」:539,000円〜

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「PLATOソファ」
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「PLATOキャビネット」
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「PLATOベッド」
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「PLATOサイドキャビネット」

【TOGE(トーゲ)シリーズ】
・「TOGEテーブル」:1,034,000円(1800W×740H×900Dmm)〜
・「TOGEローテーブル」:704,000円(1400W×220H×600Dmm)〜

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「TOGEテーブル」
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「TOGEローテーブル」

【LENDON(レンドン)シリーズ】
・「LENDONチェア」:217,800円(アームレスチェア)〜

「LENDONチェア」

発表に先立ち、カッシーナ・イクスシー青山本店の3Fフロアはガムフラテージ監修のもと「Re-imagined」をテーマにリニューアル。製品はリニューアル後の同店3Fフロアにてお披露目され、同日ガムフラテージによるトークショーも開催された。なお、彼らが登壇した発表会では、デザインジャーナリストの木田隆子氏がモデレーターを務めた。

GamFratesi(ガムフラテージ)はコペンハーゲンを拠点として国際的に活躍しているデザインスタジオ

新たなデザイン哲学を掲げ「IXC」を再編集

スティーネ・ガム氏(以下、スティーネ):ブランドコンセプトであり、デザインフィロソフィーでもある「Emotional Minimalism」は、一見すると相反する言葉の組み合わせのようですが、「多くのエレメントを盛り込みながら、完成系はシンプルであるように見せる」という私たちのものづくりの根幹に通ずるところがあります。これはたやすいことではないのだけれども、非常に重要なことです。

デンマーク人建築家のStine Gam(スティーネ・ガム)氏

エンリコ・フラテージ氏(以下、エンリコ):さまざまなエレメントを組み合わせて初めて一つの作品になるということは、その一つでも外れたら、すべてが台無しになってしまうということでもあります。「Emotional Minimalism」とくに「Minimalism」を体現するならば、外観からは完璧かつシンプルである、という印象を持っていただかなくてはいけません。同時に、そうなるためには、裏はとても複雑につくらなくてはならないのです。

イタリア人建築家のEnrico Fratesi(エンリコ・フラテージ)氏。

スティーネ:「Emotion」は人の心をどうやって揺さぶるのかということ、あるいは何かふと考えるきっかけになるもの、と解釈しました。プロダクトそのものを直接的なコミュニケーション、ブランドロゴやカタログイメージ、ブランドサイトなどを間接的なコミュニーションと考え、この2つが充分に伝わるけれどもうるさくない、というバランスをいかにとっていくかが重要です。嘘のない正直さ、わかりやすさ。こういった要素を私は「Honesty」とも称しています。

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「PLATOソファ」実際の製品展示(左)と、カタログの画像(右)

エンリコ:コンセプトに合わせて、ブランドロゴも新しくデザインしました。店内にあるカッシーナへのリスペクトとして、字体は連続性を持たせつつも、プロポーションは縦横の線幅を揃え均等にバランスを取り、ブランドの新しい方向性のイメージも取り込みました。直線のI、クロスのX、完璧な円の一部を切り取ったC、という構成で「IXC」。もともとあった.(ドット)はなくしたのは、3文字の美しいバランスを活かしたのに加えて、これからも続いていくブランドだから、終わってしまうように感じる要素は必要ないと考えたからでもあります。Cを大きく開いたのも50年という歴史と、ここから先も広く開けていくということを表現しています。

ブランドロゴもガムフラテージによるディレクションで刷新

飾らない上質さで使い手に寄り添う新作コレクション

スティーネ:先ほど説明した直接と間接のバランスは、新作の “PLATOシリーズ” によって説明することができます。PLATO(プラトー)は、フランス語の「PLATEAU(台地)」にちなんで名をつけました。

PLATOソファのベースおよび脚部に美しく磨き上げた木材を使用しました。やわらかくてスムース、ずっとさわっていたくなるような触感。そういった意味で、人とのつながりを生むパーツになっています。またベースの一部には革を採用しました。目立たないところですが、こういった部分でディテールへのこだわりも盛り込んでいます。つくりはシンプルで、ベースにクッションがついているのみ。どういった構造になっているのかがとてもわかりやすい、ということはとても重要だと考えています。

ベースにクッションが載ったシンプルな構造。革の端切れはクッションのパイピングにも使用している

スティーネ:PLATOキャビネットも同じようにベースがあり、さらに天板にも同じ木材を採用しました。間にチェストがあり、そのボディにはレザーが張られています。PLATOベッドはベースの上にマットレスを載せた構造。このようにソファのデザインから派生した同じコンセプトで展開することで、全体に調和を生むことができます。

キャビネット/サイドキャビネットは天板に木材を採用

スティーネ:また、ソファはカスタマイズが多岐にわたる点も特長です。テーブルを囲むようにつくる大掛かりなコンフィグレーションから1〜2人掛けの小さめのセット、さらにテーブルトップを乗せてサイドテーブルおよびシェルフをつけたり、キャビネットを側付けしたりすることも可能です。

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PLATOソファはオプションも含めて58アイテムを展開しており、多様なカスタマイズに対応

エンリコ:ダイニングセットはTOGEテーブル、LENDONチェアを組み合わせました。チェアは家具のなかで一番複雑といえるもので、さまざまなパラメーターを満たしつつ、それなりに強度を保たなければいけません。私たちとしては、構造の部分はあまり見せずミニマルな形に抑えたかったので、背もたれと脚の部分は余計なものが外に見えないように仕上げていますけれども、実は中は特殊なツーリングでとても複雑な構造にして、人を支えられるようになっています。これは北欧的なシンプルさや、クラフトマンシップが体現されています。

一方、座り心地などシート部分に関するクオリティに対するこだわりはイタリア的な要素を詰め込みました。木でできた脚にクッションが、シームレスにふわっと載っているように見えるデザインで、デンマークとイタリア両方の強みが感じられる組み合わせに仕上げました。

TOGEテーブルは、それぞれが関連性を持って一つの組み合わせとしても成立しうるものになっています。けれどもチェアとまったく相似形のデザイン、つまり脚をそのまま大きくしてテーブルにした、というような設計では決してなく、使っている素材なども違います。テーブルは外側に丸みがあり、内側は直線のデザイン。セラミックと木という異素材を組み合わせることで質感を高めています。またローテーブルはダイニングテーブルの脚のデザインを変えたものですが、天板はまったく違う素材を使って、プロポーションは保ちつつ変化をつける、というふうに展開しています。

スティーネ:新しいイクスシーでは、木だけではなくて金属や石、セラミックなど、さまざまな自然の素材をつかってコレクションをつくっています。これはデンマークの、家具は何世代も引き継いで使っていくというもの、という伝統による考え方が大きいです。使い込んだ家具の色の変化は、決して人工の素材では味わえない、天然の自然素材ならではの美しさがあります。

エンリコ:建築家としてデザイナーとして、自分たちがつくりだしたものがどうすればより楽しい時間を提供する一助になれるのか。そのために自然からの贈り物を最大限使わせていただいて、家具を使う人たちの喜びに変えるという仕事をしているんだろうというふうに考えています。

デンマーク×イタリア×日本のクラフトマンシップを体現

エンリコ:カッシーナ・イクスシーは国内に自社工場を持っています。私はきちんと自分の目で見てコミュニケーションをするのがとても好きで、今回も国内の工場に赴き、テストをして、フィードバックして、そしてまたプロトタイプをつくってもらって、ということを何度も繰り返しました。そういった要求に応えうるだけのスキルや技量があるということがわかっていますから、それを求める。そうするときちんと応えていただける。繰り返す価値のある工程です。

デザイン・設計はあくまでも図面上のことで、そこでは完璧だと思っていても、物理的な形になる以上はそうではないということも十分ありうることだから、実際に見たり触れたりしないと。こうしいった地道なつくりこみがあって、最終的には美しい完成形としてお届けできています。

工場のツールしかり職人のスキルしかり、たいへんプロフェッショナルなものづくりが行われていて、たとえばフォーム成形などでも、私が想像していた以上の精度で進められていました。いまスカンジナビアもイタリアもそういった高いクオリティでつくってくれるところが少なくなっているなかで、我々に一番近い日本で、こういった質の高い家具づくりが行われていることはたいへんうれしく思います。

スティーネ:ちょっとしたところでも美しさを損ねるものがあればシンプルで美しいシーンを完成させることができないので、製品もイメージも細部のディテールにまでとてもこだわってつくりました。家具は人があってこそであり、人の中心には家具がある。我々のつくった家具はどういう使われ方をされるんだろう、そのためにはどういった形状が必要とされるんだろう、ということを考えながら、少しでもポジティブな感情をもたらしてくれるものになれば、そのお役に立てるようなことができればいいな、という思いを込めて。

カッシーナのディーラーは世界各地に存在するが、ライセンス生産を許されているのは日本のカッシーナ・イクスシーのみ。その経験を活かし、カッシーナ製品のほかオリジナルプロダクトも生産している

イクスシーは過去に倉俣史朗、アンドレ・プットマン、安藤忠雄、ヴィコ・マジストレッティなど、国内外の名だたるデザイナーとコラボレーションしており、図面のマスターも保有しているという。今後はこうしたアーカイブの復刻もリブランディングの一貫として検討しており、まずは秋のイベントに向けてプロジェクトを進めているとのこと。

IXC(イクスシー)のブランドヒストリー概略

カッシーナ・イクスシー直営店情報

■カッシーナ・イクスシー青山本店
場所:東京都港区南青山2-12-14 ユニマット青山ビル1・2・3F
TEL:03-5474-9001
営業時間:11時00分 – 18時00分
定休日:水曜日(祝祭日の場合は営業)

■カッシーナ・イクスシー名古屋店
場所:愛知県名古屋市中区栄5-215 2F
TEL:052-559-1961
営業時間:11時00分 – 18時00分
定休日:水曜日(祝祭日の場合は営業)

■カッシーナ・イクスシー大阪店
場所:大阪市中央区南船場4-2-4 日本生命御堂筋ビル1・2F
TEL:06-6253-3450
営業時間:11時00分 – 18時00分
定休日:水曜日(祝祭日の場合は営業)

■カッシーナ・イクスシー福岡店
場所:福岡市中央区渡辺通4-8-28F.Tビル1F
TEL:092-735-3901
営業時間:11時00分 – 18時00分
定休日:水曜日(祝祭日の場合は営業)

※記事中の青山本店での展示写真は発表会当時のものです。記事掲載時点では展示内容が変更されている可能性があります

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