公開日 2022/07/05 21:34

F1英国GPで大クラッシュ!ドライバーを生還させた最新保護機能が凄い【Gadget Gate】

怪我人が出なかったのは奇跡
Munenori Taniguchi
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
7月3日に英シルバーストンサーキットで開催されたF1イギリスGPでは、スタート直後に多重クラッシュが発生し、1台がコース外のフェンスに激突する大事故に至った。

Image:F1

中国人ドライバー、周冠宇選手が乗ったアルファロメオのF1マシンは、スタートから第1コーナーに差し掛かるまでの、最もレースが混乱する時に他車に接触。後輪が他車に乗り上げ、上下逆さまになったまま路面を滑走し、コース外のタイヤバリアを飛び越え、観客席目前のフェンスに激突した。そしてレースのスタートの様子を撮影していたカメラマンらの傍らで落ちた。

幸いにも、マシンが静止するまでの間にドライバーが何らかの構造物に激しく接触することはなく、周冠宇選手は無傷で生還した。これにはHALO(ヘイロー/ハロ)と呼ばれる2018年に導入されたドライバー保護構造が大きな役割を果たした。

HALOはドライバーの頭上を取り囲むチタン合金製の保護構造で、中央からコクピット前方に支柱が降り、コクピット両サイド後方と合わせて3点で固定され、ドライバーの頭部を保護するようになっている。

HALOは導入当初こそ「不格好」「サンダルの緒みたい」などと揶揄されたものの、導入からこれまでの間に何度か発生した重大な事故からドライバーを生還させ、いまでは誰もがその安全性を評価している。

今回の事故でも、しばらく中継カメラが救出の様子を捉えないことから、事態は深刻かもしれないと懸念されたものの、HALOのおかげで事なきを得た。

ただ、HALOは完璧に機能したと言えるものの、周冠宇が乗っていたアルファロメオのF1マシンには安全上の問題があるのではと、事故後に指摘されている。

というのも、マシンが横転した際にドライバーの頭上のクリアランスを保つための保護構造であるロールフープ(またはロールバー)が、一瞬にして粉砕されてしまっていたからだ。

今回はHALOがかろうじてドライバーの頭部を守ったものの、もしこれがHALO導入前の時代だったら、マシンのすべての重量がドライバーの頭と首にのしかかっていたかもしれない。

一般的に、ロールフープはドライバーの頭上からエンジンに空気を取り込むエアインテークを兼ね、楕円や三角形に近い形状になっている。ところが、アルファロメオのF1マシンはこのロールフープがブレード形状になっており、その両側にエアインテークが取り付けられている。

F1マシンは毎年新設計のものが投入されており、シーズン前にはFIAによって各所の強度や安全性の検査が行われる。そのため、アルファロメオのマシンも規定上は問題なかったはずだ。

規定によると、ロールフープはマシン左右方向から約6トン、前後方向には約7トン、垂直方向では約11トンの荷重に耐えることになっているという。今後、この事故でブレード形状のロールフープにどれほどの衝撃が加わって破壊に至ったのか、きちんと検証されなければならないはずだ。それによっては将来の変更も必要になるかもしれない。

ブレード形状のロールフープは、いまから10年以上前にも他のチームで採用されたことがあるが、横転してコース外に飛び出した際に、地面に刺さるように潜り込んでしまうとの懸念があり、関連する規定は何度も見直されてきている。

レーシングカーではマシンが壊れることで衝撃を吸収し、ドライバーの身体を守るとよく説明される。だがロールフープやHALO、モノコックなどは直接ドライバーを保護するものであるため、衝撃を受けてもその形状を保つ必要がある。

Source: F1
via: CNN



テック/ガジェット系メディア「Gadget Gate」のオリジナル記事を読む

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

トピック

クローズアップCLOSEUP
アクセスランキング RANKING
1 レコードの音楽を読み取って光るターンテーブル。オーディオテクニカ「Hotaru」一般販売スタート
2 ダイソンとPORTERがコラボした特別デザインのヘッドホンとショルダーバッグ。全世界380セット限定販売
3 LUMINの進化は終わらない。初のディスクリートDAC搭載「X2」の思想を開発担当者に訊く!
4 Spotif、2025年に最も聴かれた邦楽は「ライラック」。国内外で最も聴かれた楽曲・アーティストの年間ランキング発表
5 DUNU、7ドライバー/トライブリッド構成を採用したイヤホン「DN 142」
6 カセットテープとともに過ごすカフェ「CASSE」。12/17渋谷でグランドオープン
7 Vento、3次元特殊メッシュを採用したハイブリッド拡散パネル「DAP180 / DAP120」
8 AVIOT、最大120時間再生と小型軽量を両立したオンイヤー型Bluetoothヘッドホン「WA-G1」
9 サンワサプライ、省スペース設置できる木製キャビネットのサウンドバー「400-SP120」
10 アイレックス、ALBEDO/AUDIAブランド製品の価格改定を発表。2026年1月1日より
12/5 10:47 更新
音元出版の雑誌
オーディオアクセサリー199号
季刊・オーディオアクセサリー
最新号
Vol.199
世界のオーディオアクセサリーブランド大全2025
特別増刊
世界のオーディオアクセサリーブランド大全2025
最新号
プレミアムヘッドホンガイドマガジン vol.23 2025冬
別冊・プレミアムヘッドホンガイドマガジン
最新号
Vol.23
プレミアムヘッドホンガイド Vol.33 2025 SUMMER
プレミアムヘッドホンガイド
(フリーマガジン)
最新号
Vol.33(電子版)
VGP受賞製品お買い物ガイド 2025年冬版
VGP受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年夏版(電子版)
DGPイメージングアワード2024受賞製品お買い物ガイド(2024年冬版)
DGPイメージングアワード受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年冬版(電子版)
WEB
  • PHILE WEB
  • PHILE WEB AUDIO
  • PHILE WEB BUSINESS
  • プレミアムヘッドホンガイド
  • ホームシアターCHANNEL
  • デジカメCHANNEL
AWARD
  • VGP
  • DGPイメージングアワード
  • DGPモバイルアワード
  • AEX
  • AA AWARD
  • ANALOG GPX