ガジェット 公開日 2023/03/28 14:45

MS-DOS用ChatGPTクライアントを作った猛者現る。約40年前のIBM PCで動作

コーディングにChatGPTの力は借りず
Gadget Gate
多根清史
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
今月初めから人気のAIチャットボットChatGPTのAPIが公開され、様々なアプリに組み込んだり、デバイスからアクセスできるようになった。たとえばApple Watchを通じて音声で対話できる「Petey」(旧名「watchGPT」)も登場している。

そんなブームに沸き立つなか、1984年製のレトロなIBMC PC上で動作するChatGPTクライアントが登場し、Windows以前のMS-DOSでAIチャットボットと対話できる道が開かれている。

レトロコンピューティング愛好家のYeo Kheng Meng氏は、かつてWindows 3.1用のSlackクライアントを作ったこともあり、今回の新たな試みも自然な流れといえる。同氏のブログでは、何か違うことに挑戦しようと思い「さらに古いプラットフォーム向けに開発した」と語られている。

ちなみに、正式名称「IBM 5155 Portable PC」の仕様は次の通りである。

・Intel 8088 4.77Mhz CPU・RAM 640KB・CGA ISAグラフィックス・NE2000互換ISAイーサネットアダプタ・XT-IDE ISAドライブコントローラ・MS-DOS 6.22

過去のPCで最新の技術にアクセスする上でのネックは、たいてい「通信」である。そもそもWindowsでも標準でインターネット対応したのはWindows 95以降のことで、Windows 3.xでは別途通信ソフトを組み込む必要があった。今回のMS-DOSマシンでの難度は、それ以上ということになる。

ChatGPTは会話型AIモデルであり、インターネットから収集した知識を使って質問に答え、テキストを生成する。Yeo氏が使ったIBM PC 5155にとっても、テキストのみでの会話ならば(スピードを度外視すれば)十分に可能である。

クライアントの作成には、Windows 11上で動作し、16ビットDOS向けにもクロスコンパイルできるOpen Watcom C/C++を使用。そしてVirtualBoxでMS-DOS 6.22の仮想マシンを使ってテストを行い、最終的なバイナリをIBM PCに転送している。もしも全てがレトロPC上で開発が必須であれば、こうもスムーズにはいかなかっただろう。

それでもIBM-PCとChatGPTとの対話を実現するためには、何層もの通信レイヤーを積み重ねる必要があった。まず1983年に作られた「Packet Driver API」という規格に着目し、これに基づくオープンソースのネットワークライブラリ「MTCP」を利用することでネットワーク機能を実現している。

かたやChatGPTのAPIを使うには、暗号化されたHTTPS接続がなくてはならない。しかしMS-DOSにはネイティブのHTTPSライブラリがないため、Yeo氏は最新のPC上で動作してHTTPとHTTPSを仲介する自作の「HTTP-to-HTTPS」プロキシを使ったとのこと。

要はIBM-PCとOpenAIサーバーの間に、翻訳係として別のPCを置いたわけだ。Yeo氏は「純粋な人はこの解決策を好まないかもしれないが、これが私の能力で合理的な時間内にできるベストだ」と述べている。

またDOSアプリはシングルタスクのため、ユーザーの入力待ちの間はネットワークスタックも止まってしまうことが課題だったという。そこでMTCPの関連資料を参考にして、キー入力を検出した場合はローカルバッファに保存してコンソールに出力することで、プログラムを一時停止させずにキー入力を確認・受信できるようにしたとのことだ。

Yeo氏は自らのコード「doschgpt」をGitHubに公開するとともに、クライアントが予想以上にうまく動作している様子をYouTube上で披露している。このコーディングをするにあたり、ChatGPTの助けは借りていないという。

しかし一応「DOS版ChatGPTクライアント(のコード)が書けるか?」とChatGPTに質問すると「DOSは時代遅れのOSであり、最新アプリを開発するために必要なツールやリソースを持っていない可能性があるため、DOS ChatGPTクライアントの作成は困難であることを念頭に置くように」と回答されている。Yeo氏はその困難を乗り越えて、見事に勝利したわけだ。

Source: YEO KHENG MENG
via: Ars Technica

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

トピック

クローズアップCLOSEUP
アクセスランキング RANKING
1 レコードの音楽を読み取って光るターンテーブル。オーディオテクニカ「Hotaru」一般販売スタート
2 ダイソンとPORTERがコラボした特別デザインのヘッドホンとショルダーバッグ。全世界380セット限定販売
3 LUMINの進化は終わらない。初のディスクリートDAC搭載「X2」の思想を開発担当者に訊く!
4 Spotif、2025年に最も聴かれた邦楽は「ライラック」。国内外で最も聴かれた楽曲・アーティストの年間ランキング発表
5 DUNU、7ドライバー/トライブリッド構成を採用したイヤホン「DN 142」
6 カセットテープとともに過ごすカフェ「CASSE」。12/17渋谷でグランドオープン
7 Vento、3次元特殊メッシュを採用したハイブリッド拡散パネル「DAP180 / DAP120」
8 AVIOT、最大120時間再生と小型軽量を両立したオンイヤー型Bluetoothヘッドホン「WA-G1」
9 サンワサプライ、省スペース設置できる木製キャビネットのサウンドバー「400-SP120」
10 アイレックス、ALBEDO/AUDIAブランド製品の価格改定を発表。2026年1月1日より
12/5 10:47 更新
音元出版の雑誌
オーディオアクセサリー199号
季刊・オーディオアクセサリー
最新号
Vol.199
世界のオーディオアクセサリーブランド大全2025
特別増刊
世界のオーディオアクセサリーブランド大全2025
最新号
プレミアムヘッドホンガイドマガジン vol.23 2025冬
別冊・プレミアムヘッドホンガイドマガジン
最新号
Vol.23
プレミアムヘッドホンガイド Vol.33 2025 SUMMER
プレミアムヘッドホンガイド
(フリーマガジン)
最新号
Vol.33(電子版)
VGP受賞製品お買い物ガイド 2025年冬版
VGP受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年夏版(電子版)
DGPイメージングアワード2024受賞製品お買い物ガイド(2024年冬版)
DGPイメージングアワード受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年冬版(電子版)
WEB
  • PHILE WEB
  • PHILE WEB AUDIO
  • PHILE WEB BUSINESS
  • プレミアムヘッドホンガイド
  • ホームシアターCHANNEL
  • デジカメCHANNEL
AWARD
  • VGP
  • DGPイメージングアワード
  • DGPモバイルアワード
  • AEX
  • AA AWARD
  • ANALOG GPX