NHKが第100回放送記念日記念式典を開催。「視聴者・国民が本当に知りたいことに真正面から向き合い応えていく」（稲葉会長）

視聴者・国民に確かな拠りどころとなる情報を提供する役割を果たす

NHK（日本放送協会）は、1925年3月22日に日本で放送が始まって以来、100年の大きな節目を迎えるなか、「第100回放送記念日記念式典」をNHKホールで開催した。

挨拶で登壇した日本放送協会会長・稲葉延雄氏は「本年2025年は、放送開始100年という日本の放送史における記念すべき年となります。1925年（大正14年）3月22日、NHKの前身の一つである社団法人東京放送局が、現在の東京・港区芝浦にあった仮放送所から日本初のラジオ放送を開始しました。

この放送開始のきっかけとなったのは、その1年半前に発生した関東大震災だったと言われています。未曽有の大災害を受けて、根拠のない流言飛語が広がった反省を踏まえて、当時の人々が正確で信頼できる情報を誰もが入手できる手段が必要だと切実に感じた結果、放送というメディアが生まれたものと承知しています」と放送開始の歴史を振り返った。

「それから100年が経った今、 “本当のことを知りたい” という人々の気持ちは、より一層強まっているのではないかと切実に感じています」と指摘。その理由を、「SNSなどで真偽の定かでない情報が氾濫した結果、かえって本当のことや確かな情報をより入手しにくい状況になってしまっているからではないかと思います」と説明した。

「そうした中で私たちNHKは、視聴者・国民が本当に知りたいと思っていることに真正面から向き合い、それにお応えしていく責務があると考えています。100年という長い歴史の中で築き上げてきた豊富な経験や知見を活かして、次の100年も視聴者・国民の期待に全力でお応えして参りたい」と力を込めた。

また、今年10月から、インターネットを通じた番組や番組関連情報の配信が、新たに任意業務から必須業務となり、その位置付けが大きく変わる。

稲葉会長は「NHKにとって歴史的な転換点となるネットの必須業務化にあたっては、正確で信頼できる情報やコンテンツを、放送はもちろん、インターネットではその特性に合わせて、質・量ともこれまで以上にしっかりとお届けしていきたいと考えています。

そうしたことを通じて、視聴者・国民に確かな拠りどころとなる情報を提供する役割、すなわち “情報空間の参照点” としての役割を確実に果たし、健全なる民主主義の発達にこれまで以上に貢献して参ります」と次の100年へ向けて気を引き締めた。

式典では、「第76回日本放送協会放送文化賞」の贈呈式が併せて行われた。この賞は、1949年度（昭和24年度）に放送開始25周年事業として創設されたもので、放送事業の発展、放送文化の向上に功績のあった方々を称えて贈呈される。

今回は放送開始から100年という日本の放送史における記念すべき年となることから、日本の放送文化を土台から支え、貢献していただいた方を、これまで以上に広範な分野から選出したと説明している。受賞者は10組。これまでの受賞者は合わせて500組となる。

• 井上由美子氏（脚本家）
• 片岡仁左衛門氏（歌舞伎俳優）
• 中島みゆき氏（シンガーソングライター）
• 永田和宏氏（歌人、細胞生物学者、京都大学名誉教授）
• 野村万作氏（狂言師）
• 畑村洋太郎氏（東京大学名誉教授）
• 濱田純一氏（公益財団法人放送文化基金理事長、東京大学名誉教授）
• 福島邦彦氏（元大阪大学教授）
• 保阪正康氏（ノンフィクション作家）
• 馬渕明子氏（西洋美術振興財団理事長）　※五十音順

受賞者の選考においては、NHK副会長が委員長を務め、池端俊策氏（脚本家）、伊東晋氏（東京理科大学名誉教授）、大日向雅美氏（恵泉女学園大学学長）、鳥飼玖美子氏（立教大学名誉教授）、増田明美氏（スポーツジャーナリスト）、毛利衛氏（宇宙飛行士・日本科学未来館名誉館長）と、NHKの理事4人の計11人を委員とする選考委員会で行われ、これを受けて会長が決定する。

贈呈式では、受賞者の功績が紹介され、佐藤忠良氏作のブロンズ像「ふたば」と副賞がそれぞれ贈呈された。